「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その4・中学入試問題《聖光学院中学校》』

2010年11月03日 | 学習指導法


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今日は、割合を使った特殊算の仲間である仕事算の問題解法指導の4回目です。

仕事算は、人が働く問題の他に、水槽に水を入れる管やポンプの問題が多く出題されます。

水槽に水を入れる管の他に、水を出す管が付いた水槽の問題など、かなり変化のある複雑な問題設定が可能です。


今回扱う問題は、今年の春に聖光学院中学校で出題された問題です。

問題の構成は、大きな問題5題の出題で、その【2】が今回の仕事算です。

今回の水槽の問題は、水を入れるポンプが3台という設定で、条件が少し複雑ですが、与えられた条件を整理して考えます。



【問題1】

ある水槽と3台のポンプA,B,Cがあります。からの状態から水槽いっぱいに水を入れるために、AとBのポンプを同時に使って水を入れると15分かかり、BとCのポンプを同時に使って水を入れると30分かかり、CとAのポンプを同時に使って水を入れると20分かかります。このとき、次の問いに答えなさい。

(1)A,B,Cのポンプを2台ずつ
AとB、BとC、CとA、AとB、BとC、CとA、……
の順で1分ごとに交換して使う場合、空の状態から水槽いっぱいに水を入れるためには何分かかりますか。

(2)A,B,Cのポンプを3台同時に使って、空の状態から水槽いっぱいに水を入れるためには何分かかりますか。

(3)A,B,Cのポンプを1台ずつ順番に使って水を入れることを考えます。まずポンプAを( ア )分使い、次にポンプBを( イ )分使い、最後にポンプCを73分使うと、空の状態から水槽いっぱいに水を入れることができます。
このとき、( ア )、( イ )にあてはまる整数の組を( ア 、 イ )のようにすべて答えなさい。



【ヒント】

(1)

まず全体の仕事量、すなわちこの水槽の容積を1と置きます。

次に、単位時間当たり(この場合1分当たり)の仕事量…入れる水の量を求めます。

与えられた条件を整理すると、A+B=1/15、B+C=1/30、C+A=1/20となります。

それから、(AとB、BとC、CとA)が1周期で、時間は3分ごとの繰り返しとなる周期算になっていることに注目します。


(2)

こうした条件の問題は、下の表を用いて考えます。



上の表の①~③の条件から、工夫してA+B+Cの1分当たりの仕事量④(水量)を求めてみましょう。



(3)

(2)で整理した表から、AとBとCのそれぞれの1分当たりの仕事量(水量)を求めます。

水槽の容積1から、ポンプCを73分使って入れた水量を引くと、AとBのポンプを使って入れた水量を求めることができます。

しかしその後が問題で、AとBのポンプのそれぞれの1分当たりの仕事量(水量)と、AとBのポンプを使って入れた合計の水量を出すことができましたが、AとBの2台で水を入れた合計時間が出ていませんから、つるかめ算として簡単に計算できないことがわかります。

四谷大塚の予習シリーズでは、こうした問題を「条件が足りないつるかめ算」として取り扱っていますが、このタイプの問題は、本質的には整数の性質を使った問題として考えるべきです。



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【問題1・解答】

(1)

上のヒントより、1周期3分でする仕事量(入れる水量)は、1/15+1/30+1/20=3/20と出すことができます。

全体の仕事量1(水槽の容積)を、上で求めた1周期の仕事量3/20で割ることにより、何周期分の仕事量かを調べます。

1÷3/20=6と2/3…まず6周期は必要であることが分かります。

1-3/20×6=1/10…6周期後の残りの仕事量

この残りの仕事量1/10から、まず(A、B)の1分当たりの仕事量1/15を引きます。

1/10-1/15=1/30

その残り1/30が、ちょうど(B、C)の1分当たりの仕事量1/30となっていますから、残りをAとB、BとC各1分ごと使って、水槽をいっぱいにすることができます。

よって、満水にかかる時間は、1周期3分で6周期分と、最後の2分の合計になります。

3×6+2=20分…答え


(2)

条件を書いた表から、①と②と③の単位時間当たりの仕事量を合計すると、

(A+B)+(B+C)+(C+A)=(A+B+C)×2 となります。

すなわち、条件として出ている3つの数量を合計すると、AとBとCの3台のポンプの単位時間当たりの仕事量(水量)の和の2倍がでます。

このことから、A+B+C={(A+B)+(B+C)+(C+A)}÷2 で求めることができます。

(1/15+1/30+1/20)÷2=3/40…3台同時に使ったときの1分当たりの仕事量(水量)

よって求める時間は、全体の仕事量(水槽の水量)1を、求めた3台の単位時間当たりの仕事量(水量)で割ることにより、満水になるまでの時間を求めることができます。

1÷1/40=40/3=13と1/3(分)…答え


(3)



上の表から、Cの1分当たりの仕事量(水量)は、④から①を引くことにより求めることができることが分かります。

C=3/40-1/15=1/120

Bは②の数値から、上で求めたCの値を引くことにより求めることができます。

B=1/30-1/120=1/40

Aは①から、上のBの値を引いて求めます。

A=1/15-1/40=1/24

この表を使うと、上に示した式以外にも、A,B,Cの単位時間当たりの仕事量を求めることができます。…子ともに表を示して、求め方を考えさせましょう。


全体の水槽の水量1から、最後にポンプCを73分使って入れた水量を引くと、AとBを使って入れた水量を求めることができます。

1-1/120×73=47/120

このことから、Aを( ア )分使い、次にポンプBを( イ )分使い、水槽に47/120の水を入れたという条件の問題であることが整理できました。

こうした問題は、文字式で与えられた条件を整理することからスタートします。

ここまで求めた条件を文字式で表すと、1/24×ア+1/40×イ=47/120という式が成り立ちます。

両辺に、それぞれの分数の分母の最小公倍数である120をかけて、式をできるだけ簡単にします。

すると、5×ア+3×イ=47という簡単な式になります。

中学校で言えば、未知数2つの二元一次連立方程式ですが、与えられた条件式が1本ですから、答えは決まりません。

基本的には、未知数の数だけ条件式がないとその方程式の答えは出てきません。

すなわち、未知数がアとイの2つですから、本来であればアとイについてもう1本の式が必要です。

しかし、求めるアとイが整数という条件から、この条件を満たす整数(ア、イ)の組(無論自然数)を複数個探すことができます。

この段階で、上手に整数の性質を使うことにより、すばやく答えを数え上げることができます。

この問題では、(5×ア)すなわち5の倍数は必ず1の位が0か5ですから、上の式で答えである47の一の位が7となるためには、(3×イ)すなわち3の倍数の一の位が2か7となることが必要です。

すると、イにはいる整数の一の位は、必ず4か9が付くことが理解できるでしょうか。

このように、この問題は「つるかめ算」の仲間と言うより、文字式と表を使い「整数の性質」を利用して解く問題と言えます。

文字式で条件を整理できたら、次は表解で答えを求めます。…、まず可能性が限定されたイの数値を書いて、それに対応するアが存在するか確かめていきます。

ア  7  4   1 
----------- 
イ  4  9  14

よって求める答えは、(7,4)、(4,9)、(1,14)の3組です。

二元一次の方程式で条件式1本、三元一次の方程式で条件式2本のようにすぐに計算で答えを出すことのできない問題は、表解で値を書き並べながら求めますが、整数の性質を上手く使って手際よく解答します。


今回取り上げた聖光学院の仕事算の入試問題は、小問(1)と(2)は基本的な問題といってよいでしょう。

最後の(3)は、文字式で条件を整理し、整数の性質を使って素早く書き並べて答えを求めることを要求した問題で、時間制限のある入試では比較的難しい問題です。


仕事算の教え方は今回で終了し、次回からやはり仕事に関する問題を取り扱う「のべ算」について、その指導法を伝授しましょう。



仕事算の指導法について興味ある方は、以下のブログもご覧下さい。


マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その1・中学入試問題《青山学院中等部》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その2・中学入試問題《ラ・サール中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その3・中学入試問題《鴎友学園女子中学校》』



サザンカの蕾にまじって、咲き始めた花もあります



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