「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの算数指導法『特殊算』…『のべ算…その1・中学入試問題《江戸川学園取手中学校》』

2010年11月16日 | 学習指導法



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割合の特殊算として、「相当算」、「売買算」、「混合算」、そして4番手として仕事に関する文章題について、家庭での指導法を伝授しています。

以前にも述べたとおり、仕事に関する文章題は、解き方により以下の3つの種類に分けることができます。

(1)仕事算…全体の仕事量を1とおき、個々の単位時間当たりの仕事量を求めて解いていく問題。

(2)のべ算…全体の仕事量を「のべの量」として表し、のべの量を使って解いていく問題。

(3)ニュートン算…「入ってくる量」「入っている量」「出ていく量」の3つの量を考えながら、その相互関係を考えながら解いていく問題。

その内で、前回まで4回にわたり(1)の『仕事算』の家庭での指導法を解説しました。

今度は、仕事に関する文章題の二つ目として、(2)の『のべ算』について、今春の入試問題を使って、その指導法を伝授しましょう。


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【のべ算の導入指導】

『のべ算』を指導する場合、まず子どもに『のべの量』(のべ量)とは何かをまず理解させることが大切です。

『のべの量』とは、簡単に言えば仕事量を表す一つの方法です。

例えば、「この建物は、のべ2000人の作業員を動員して完成した」と言ったような使い方をします。

「のべ」とは、同一のものが何回も含まれていてもそれぞれを1回として数え、総計することです。

したがって、この建物を造るのに、異なる作業員が2000人仕事をしたということではなく、同じ人でもカウントして2000人が働いた仕事量ということです。

細かく見れば、それぞれの人の働き具合は異なるのですが、1日当たりの1人の仕事量は等しいとします。

一番大切なことは、「のべ2000人が働いた仕事量」という表し方は、1日に2000人を動員して完成することのできる仕事量を表すということです。

すると「のべ2000人が働いた仕事量」を言い換えれば、1人でこの仕事をすると「のべ2000日の仕事量」ということになります。


子どもに指導する場合、簡単な例を使ってのべの量をまず練習し、のべの量の概念を理解させる必要があります。

例えば、「ある仕事をするのに、3人で10日働いて仕上げました。」という例文を作ります。

次に、「この仕事は、のべ何人の仕事量ですか。」という問題を出します。

答えは、3×10=30……「のべ30人の仕事量」です。

これは、先ほども説明したとおり、1日で30人働いてすることのできる仕事量です。

1人ですると、「のべ30日の仕事量」となります。

『のべの量』を使った仕事量の表し方が、理解できたでしょうか。


それから「のべ算」を、「帰一算」と呼ぶ場合があります。

それは、のべの量を使った問題の、求める値がなんであるかで分けた名称です。

したがって、こうした問題をまとめて「のべ・帰一算」と呼ぶこともあります。

しかし、今回はのべの量を取り扱う問題全てを、「のべ算」と呼ぶことにします。


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【仕事算とのべ算との違い(復習)】

ところで受験生でも、仕事に関する文章題である「仕事算」と「のべ算」の違いを理解できない場合があります。

「のべ算」の指導法を伝授する前に、ちょっと復習するために、下の2つの今年の入試問題を例にして、「仕事算」と「のべ算」の文章題の構造を比較してみましょう。


1. 「A君が1人で行うと12日かかり、B君が1人で行うと18日かかる仕事があります。この仕事をA、Bの2人で同時に始めると、仕事を始めてから終わるまでに何日間かかりますか。」(東海大学附属浦安中)

2. 「毎日7時間ずつ働いて、9人の人が8日で仕上げる仕事があります。毎日7時間ずつ4人が6日間働きました。残りの仕事を6時間ずつ7人で働くと、あと何日で仕上がりますか。」(江戸川学園取手中)


1の問題では、同じ仕事をするのに「A君は12日」「B君は18日」という条件から、A君とB君の1日当たりの仕事量が異なることが前提になっています。

したがって、この問題を解くにはA君とB君の単位時間(1日)当たりの仕事量を求めることからスタートしなければなりません。

こうした条件の問題は、前回まで4回にわたってその指導法を伝授してきた「仕事算」の考え方で解くことになります。


では、2の問題は、どうでしょう?

働き手は、人数で表され、特定の固有名詞では呼んでいません。

すなわち、全ての働き手の単位時間当たりの仕事量は同じと見て解く問題であることが分かります。

そして、全体の仕事量を、「毎日7時間ずつ9人の人が8日で仕上げる仕事」と表現しています。

2の問題は、全体の仕事量1と置く「仕事算」の考え方ではなく、全体の仕事量を何らかの方法…この場合は「のべの量」で表記する必要があります。

このように、のべの量を使って全体の仕事量を表すと、問題を上手く解くことができる問題を、「仕事算」ではなく「のべ算」と呼びます。


時期外れのツツジ…今年は、紅葉の当たり年ですが、やけに目立つ狂い咲きの花


【江戸川学園取手中の問題の解法】

さて、「仕事算」と「のべ算」の違いが理解できたでしょうか。

では、のべ算の基本的な問題である、今年の春に出題されたこの江戸川学園取手中の問題を参考に、その解き方を伝授しましょう。

この問題が「のべ算」の考え方を使うことが分かった後に、次に考えなければならないことは、この全体の仕事量を、「のべ何人」「のべ何日」「のべ何時間」……、どのように表すのかということです。


「毎日7時間ずつ働いて、9人の人が8日で仕上げる仕事」という条件で、1日7時間という労働時間が問題の中で変わらなければ、「のべ何日」または「のべ何人」で仕事量を表します。

しかし、1日の労働時間が後で「6時間ずつ7人」に変わりますので、「のべ時間」で仕事量を表さなければなりません。

この仕事量は、7×9×8=504…のべ504時間となります。

この仕事を、初めは毎日7時間ずつ4人が6日間働いたので、7×4×6=168…のべ168時間の仕事量を仕上げたことが分かります。

残りの仕事量は、504-168=336…のべ336時間。

この残りの仕事を、1日で「6時間ずつ7人」で行うので、1日当たり6×7=42…のべ42時間の仕事をこなす条件です。

したがって求める日数は、336÷(6×7)=8(日)…答え


このように、のべの量とはどのようなものなのか、そして同じ仕事の問題でも、与えられた条件によりその解き方が違うことを理解させます。

すなわち、「仕事算」と「のべ算」の違いを理解させます。

今日は、「のべ算」の導入時の基本的な教え方を伝授しました。

次回は、「のべ算」の考え方を深めて、より複雑な入試問題の解き方を教えましょう。


1の問題は仕事算で、今日のテーマではありませんが、念のためその解答を載せておきましょう)

1÷(1/12+1/18)=7と1/5

よって、答えは8日間

(何日間か問われているので、7と1/5日間では答えになりません。)



延べ算の指導法に興味ある方は、以下のブログも参考にご覧ください。


マッキーの算数指導法『特殊算』…『のべ算…その2・中学入試問題《星野学園中学校》』

マッキーの算数指導法『特殊算』…『のべ算…その3・中学入試問題《海城中学校》』



満開を迎えたサザンカの花

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