60年前の日本、すなわち1960年代の夏の過ごし方は、現代と比較すると大きく異なっていました。当時の日本は、戦後復興の真っ只中にあり、経済が急成長している時代でしたが、生活の面ではまだまだ古風な習慣や風習が色濃く残っていました。エアコンや家電が普及する前の時代の夏の過ごし方は、自然を活用したり、知恵を絞ったりして涼をとる方法が中心でした。
1. 扇風機と団扇・扇子
1960年代には、まだエアコンが一般家庭に普及しておらず、夏を乗り切るための代表的な道具は扇風機と団扇、扇子でした。扇風機は、比較的裕福な家庭に普及し始めたものの、団扇や扇子は誰もが手軽に使える涼をとるための道具として愛用されていました。夕涼みや縁側で団扇を使って風を起こし、涼を感じるのは、当時の典型的な夏の光景でした。
2. 縁側での夕涼み
縁側で夕涼みをするのも、昭和時代の夏の風物詩の一つでした。夕方になると、日が落ちて涼しい風が吹き始める時間帯に、縁側に座りながら、家族や近所の人たちと団欒を楽しんだり、蚊取り線香を焚いて蚊を避けたりしました。これもまた、暑さを凌ぐための知恵でした。
3. 蚊帳を使った寝る方法
夏の夜、蚊に悩まされることが多かった当時、蚊帳は重要な役割を果たしていました。特に田舎の家では、蚊帳を吊るして中で寝ることが一般的でした。涼しさと快適さを求める手段として、蚊帳の中で眠ることは今では懐かしい風景の一つとなっています。
4. 冷たい食べ物と飲み物
夏の暑さをしのぐためには、冷たい食べ物や飲み物が欠かせませんでした。スイカ、ところてん、かき氷などが夏の定番の冷たい食べ物でした。特にかき氷は、手動のかき氷機で氷を削り、シロップをかけて食べるというシンプルなものでしたが、子どもたちにとっては夏の楽しみの一つでした。また、冷やした麦茶や冷水を飲むことも一般的で、これらの飲み物は家庭の冷蔵庫に常備されていました。
5. 海や川での遊び
現代のようにクーラーで室内にこもることができない時代、夏の暑さを避けるためには、自然の水辺が頼りでした。海や川で泳ぐことは、子供から大人まで楽しめる夏のレジャーでした。特に、都会に住む人々にとって、週末に海や川に出かけて水遊びをすることは、一種の贅沢な時間でした。
6. 風鈴とすだれ
音で涼しさを感じる工夫として、風鈴がよく使われていました。風鈴の音色は、聞く者に涼しさを感じさせ、暑さを和らげる役割を果たしていました。また、すだれも日差しを遮り、家の中に涼しい風を取り込むために利用されていました。これらの工夫によって、少しでも快適に過ごせるようにしていました。
7. 夏祭りと花火
夏といえば、各地で行われる夏祭りと花火大会も欠かせませんでした。浴衣を着て、縁日の屋台で楽しんだり、花火を見上げたりすることは、1960年代の夏の大きな楽しみの一つでした。都会でも田舎でも、こうしたイベントは夏の風物詩として多くの人々に親しまれていました。
60年前の日本の夏の過ごし方は、現代とは大きく異なり、自然と調和した生活が営まれていました。エアコンや電子機器が普及していない時代、扇風機や団扇、自然の風を利用して涼をとる工夫が凝らされていました。また、縁側での夕涼みや蚊帳を使った寝方、冷たい食べ物や飲み物、風鈴やすだれといった昔ながらの工夫も、多くの人々が暑い夏を乗り切るための重要な要素でした。こうした生活の中で、家族や地域のつながりが大切にされ、夏の風物詩が今もなお懐かしさを感じさせる存在となっています。