漢方薬の名前に隠された意味
——『補中益気湯』って何?——
「漢方薬って、名前が長くて覚えにくい…」
「“湯”って付くけど、お風呂じゃないの?」
そんな声をよく耳にします。確かに、漢方薬の名前は独特で、一見すると難しく感じるかもしれません。しかし、その一つひとつには、処方の目的や働き、体へのアプローチ方法がしっかりと反映されているのです。
今回は、疲労回復や虚弱体質の改善によく使われる『補中益気湯(ほちゅうえっきとう)』という処方を例に、漢方薬の名前に込められた意味をひもといてみましょう。
『補中益気湯』の名前を分解してみる
漢方薬の名前には、以下のような「構造」が隠されています。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)=補 + 中 + 益 + 気 + 湯
それぞれの文字に、処方の目的や役割が込められています。
【補】=「補う」
まず最初の「補」。これは“足りないものを補う”という意味です。漢方では、体のエネルギー源である「気(き)」や、血液の「血(けつ)」、体を潤す「津液(しんえき)」などが不足すると、さまざまな不調が現れると考えます。
『補中益気湯』は特に“気”の不足=「気虚(ききょ)」に着目した処方。つまり、この「補」は、“消耗した体のエネルギーを補う”という意味を持っています。
【中】=「中焦(ちゅうしょう)」=胃腸
次の「中」は、“中焦”を表しています。漢方では、人体を「上焦(肺や心)・中焦(脾胃=胃腸)・下焦(腎や膀胱)」の3つのエリアに分けて考えます。
中焦とは、消化吸収の中心である「脾(ひ)」と「胃(い)」の機能を指し、「補中」は“胃腸の働きを補う”ことを意味します。
つまり『補中益気湯』は、「胃腸の働きを補って、体の基礎を立て直す」処方であることが、この二文字だけでも伝わってきます。
【益気】=「気を増す・高める」
「益」は“増やす・利益を与える”の意。「益気」とは、“気を増やす・元気をつける”という意味になります。
「気」とは、漢方でいう生命活動のエネルギー。体を温め、動かし、外敵から守る力です。気が不足すると、疲れやすく、免疫力が下がり、風邪をひきやすくなります。
つまり「益気」とは、体の根本的な元気=“生命力”を底上げする働きを表現しています。
【湯】=煎じ薬・温めて飲む
最後の「湯」は、漢方薬でよく見られる語尾で、「煎じて温かく飲む薬」を意味します。
『補中益気湯』も、本来は9種類の生薬を煎じて飲む処方ですが、現在ではエキス顆粒として手軽に服用できる製剤も広く使われています。
『補中益気湯』はどんなときに使うの?
ここまで読み解くと、『補中益気湯』という薬は「胃腸を補い、気を増やして体力を回復させる温かい薬」であることが見えてきます。では、実際にはどのような症状に使われるのでしょうか?
以下のような場面でよく用いられます:
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食後に疲れて眠くなる
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胃腸が弱く、少し食べるとすぐもたれる
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慢性的な倦怠感・疲労感がある
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風邪をひきやすく、回復に時間がかかる
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声に力がなく、話すのも疲れる
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産後や術後など、体力が落ちているとき
また、医療現場では、自律神経の乱れによる倦怠感や、夏バテ、起立性調節障害、慢性疲労症候群などにも応用されることがあります。
含まれる代表的な生薬
『補中益気湯』には、以下のような生薬が配合されています:
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黄耆(おうぎ)・人参(にんじん):気を補い、元気をつける
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白朮(びゃくじゅつ)・甘草(かんぞう):脾胃を補って消化吸収力を高める
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当帰(とうき)・陳皮(ちんぴ):血を補い、気血の巡りを助ける
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升麻(しょうま)・柴胡(さいこ):気を上に持ち上げる(「内臓下垂」や「脱肛」などに応用)
特に「気を持ち上げる」力があるのがこの処方の特徴で、体が重くてだるいときや、精神的な“落ち込み”にも働きかけます。
漢方薬の名前を知ると、もっと身近になる
『補中益気湯』という名前は、一見難しそうですが、その意味をひもといてみると、
「胃腸を元気にして、体力を回復させる薬」
という、とても実用的な処方であることがわかります。
漢方薬の名前には、使う目的や効能がそのまま込められているものが多く、「意味」を理解することで、あなたに合った薬が見つけやすくなるかもしれません。
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