
冷房で冷えすぎる現代人
―“冷え×暑さ”のダブルパンチにご注意を―
年々、夏の気温は上昇し続け、7月ともなれば外の気温が40度を超える日も増えてきました。この「灼熱の屋外」と「極寒の屋内」を行き来する現代人は、想像以上に体のバランスを崩しやすくなっています。
冷房は命を守る大切な手段ですが、その一方で、長時間冷風にさらされたり、極端に室温が下げられた室内で過ごすことにより、頭痛・だるさ・食欲不振・むくみ・生理不順など、さまざまな不調が現れます。
これがいわゆる「冷房病」と呼ばれるもので、漢方では「寒熱錯雑(かんねつさくざつ)」という概念でとらえます。今回は、この「冷え×暑さ」のダブルパンチが引き起こす体の不調と、漢方的なケアについて詳しくお話ししましょう。
■ 冷房病とは? ― 気温差で自律神経が混乱する
「外は猛暑、室内は冷蔵庫のような寒さ」。現代の夏はまさにこの繰り返しです。このような気温差に日々さらされていると、自律神経がフル稼働し、バランスを崩しやすくなります。
自律神経は、交感神経(緊張・活動)と副交感神経(リラックス・休息)の切り替えを担っており、体温調節・血流・消化・ホルモン分泌などあらゆる体の機能に関係しています。
極端な温度差はこのスイッチを混乱させ、次のような症状を招きます。
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頭痛・肩こり・倦怠感
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消化不良・下痢・便秘
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足先やお腹の冷え
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月経不順・PMS悪化
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イライラ・不眠・気分の落ち込み
このように、冷房病は“冷え”だけの問題ではなく、体の内側のバランス(気・血・津液)を乱し、自律神経に大きな負担をかけているのです。
■ 漢方の視点:冷房病=「寒熱錯雑」
漢方では、冷房による不調は単なる「寒邪(かんじゃ=冷え)」ではありません。
夏は「暑邪(しょじゃ)」と呼ばれる強い熱のエネルギーが自然界にあふれていますが、現代人はこの暑邪から逃れるために、冷房という“人工の寒邪”の中で長時間過ごしています。つまり、体の外は熱いのに、内側は冷えているというねじれた状態。これを「寒熱錯雑(かんねつさくざつ)」と表現します。
また、夏は汗をかきやすく、「気」と「津液(体の潤い)」を消耗します。すると、体力や免疫力が落ちやすくなり、冷気に対する防御力も低下してしまうのです。
冷房で体が冷えると、血の巡りが悪くなり、内臓機能も低下。とくに女性は元々“冷えやすい体質”の方が多いため、注意が必要です。
■ 冷房で冷えた体におすすめの漢方薬
● 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
冷房による“だるさ”や“疲れやすさ”、“食欲不振”を感じたとき、もっとも頼りになる処方です。
体の中心(中=脾胃)を補い、気(エネルギー)を補うことで、自律神経や消化機能の乱れを立て直す役割を果たします。
症状の例:
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冷房の中で体がだるい、気力が出ない
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冷たいものを摂りすぎてお腹が張る・痛む
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食欲不振や下痢気味
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少し動くだけで息切れする
夏の疲れがたまり、クーラーで内臓が冷えたときに非常に相性のよい処方です。
● 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
冷房による“体の深部の冷え”に有効な処方。とくに冷えからくる関節痛・腰痛・こわばりなどに用いられます。
女性の「足元が冷えて眠れない」「クーラーで関節が痛む」といったケースに適応します。
● 真武湯(しんぶとう)
冷えによって水分代謝が滞り、むくみやめまい、下痢を繰り返す場合に使われる漢方薬。内臓を温めて水の巡りを整える力があり、夏の“冷え+水滞(すいたい)”に対応します。
■ 冷え対策の薬膳的セルフケア
冷房が避けられない現代では、「冷えない体をつくる」ことが重要です。以下は、漢方・薬膳的な視点からのセルフケア法です。
● ① 温める食材を意識的に摂る
夏でも「温性」の食材を取り入れることで、冷えを予防できます。
おすすめ食材:
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生姜(しょうが)…発汗・胃腸を温める
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ネギ、ニラ、しそ…冷えを散らし、気血を巡らせる
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黒胡椒、シナモン…少量で内臓を温める
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山芋、もち米、かぼちゃ…気を補い、脾胃を守る
冷たい麺だけで食事を終えるのではなく、温かいスープや薬味を組み合わせて、**“冷やしすぎない工夫”**をしましょう。
● ② 冷えを防ぐ衣類と生活習慣
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室内では腹巻きやレッグウォーマーを活用し、特に「首・腹・足首」は冷やさないようにしましょう。
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エアコンの設定温度は27~28度が理想。直接風が当たらない工夫も大切です。
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入浴はシャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯に10〜15分程度浸かって体を芯から温めましょう。
● ③ 「陽気」を補う時間を持つ
漢方では、日光を浴びたり、深呼吸をしたりすることで“陽気(体を温めるエネルギー)”を高めると考えます。
早朝や夕方の涼しい時間に、軽い散歩やストレッチを取り入れて、「気の巡り」を整えましょう。
■ 夏こそ“冷え対策”が必要な理由
「夏なのに冷えるなんておかしい」と思われるかもしれませんが、実は夏は冷えのリスクが非常に高い季節です。体の表面は汗で熱を持っていても、内側は冷えている「外熱内寒」の状態が多く見られます。
とくに胃腸の冷えは、食欲不振や消化不良、下痢・便秘を招き、体力低下の原因になります。冷えに気づかず過ごしてしまうと、秋以降の体調にも悪影響を及ぼします。
夏バテ予防・美肌・免疫力維持のためにも、「クーラーで冷えた体をケアする」意識を持つことが、現代の夏を健やかに乗り切るカギです。
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