一法学生の記録

2014年4月に慶應大学通信部に進んだ法学生の記録である
(更新)2017年4月に神戸大学法科大学院へ進学しました。

動産の物権変動

2016-09-05 18:12:01 | 物権法
動産の物権変動

 動産は、不動産と違い、人々の取引行為の大部分を占め、かつ、日常生活関係の営みで頻繁に利用されるため、簡易迅速が求められる。また、不動産と違い、物権の得喪および変更の形態としては、質権および先取特権等の一部を除き、担保形式での利活用が少ないことも、挙げられよう。このため、民法では、原則として、「引渡し」を以て、その物権変動の第三者に対する対抗要件としている。ただし、いくつかの例外がある。イ)登録動産として、船舶、航空機、自動車、農機等、一定の法律によって登記が定められている動産がある。ロ)法人動産譲渡の特例が特別法で定められており、法人の動産の譲渡には、登記を用いることもできる。動産の範囲には限定がなく、登記の対抗力については引渡しと同等の水準であるため、優先関係は両者の先後により決する。また、178条の「引渡し」には、「現実の引渡」に対して「観念的引渡」が認められている。イ)占有改定の方法による引渡しとは、占有代理人が占有物につき本人のために占有する旨の意思表示をしたとき、これを以て「引渡し」があったと見做される。(ここでいう占有代理人とは譲渡人である、物権の所有権は占有代理人から本人に移る)ロ)指図による占有移転とは、動産の寄託者が受寄者に対して譲受人のために占有すべき旨を指図し、その譲受人が承諾した時もまた、譲受人への「引渡し」があったと見る。AがBに自転車を貸していたのだが、Aが内々自転車をCに譲ったため、Bに対してCの自転車を良く管理するようにいった場合などにこれが当たろう。かりに、現実の引き渡しを経ようとすれば、自転車をB→A→C→Bと動かさなければいけず、面倒である。動産の対抗要件には、引渡し以外に明認方法が認められる。イ)果樹の果実は、原則として、樹木の上に生っているときは、樹木と一体の者として不動産として扱われるが、いったん樹木を離れると、動産となる。そして、果実の収取者は、外部から認識可能な明認方法を採ることにより、第三者に対する対抗要件を具備することができる。ロ)立木も明認方法により、その地盤の取得者(第三者)に対して対抗することができる。

 以上