『グランプリシリーズ2014 中国大会 男子ショートプログラム』(7日)

ショパン バラード1番
振り付け:ジェフリー・バトル
ボーカル曲が解禁された今シーズンにあって逆をついたクラシックピアノ曲、袖の膨らんだ白シャツに黒パンツという王道のフィギュアスケート衣装。
4回転を後半に組み込んだため、最初のジャンプにトリプルアクセルを持ってきた。
アウトイーグルのフォワードの足でそのまま踏み切り、降りた足をそのままバックの足にしてイーグルに戻るという、助走なしでもトリプルアクセルを跳べる
ゆづならではの高難易度ジャンプ。
二つ目のジャンプは4回転にするはずだったのがトリプルになってしまったトゥループ。
そして最後のジャンプはコンビネーションにしなければならないところをトリプルルッツでバランスを崩し、セカンドがつけられず2位発進。
『グランプリシリーズ2014 中国大会 男子フリー』(8日)
直前の6分間練習中ハンくんと激突し、氷に顎を打ちつけ、衝突の際みぞおちを強打したため呼吸困難になり、長い時間氷上で仰向けに倒れたまま大きく胸を上下させていた。
抱えられて起き上がった額には一文字に血が流れ、顎から喉を血が伝う。
応急処置を終え、頭に包帯を巻いた痛々しい姿でガクガクと体を折るようにして歩を進め、痛みで咳き込みながらもリンクに戻ろうとする。
なぜそこまで・・・正気の沙汰とは思えなかった。
諭すように語り掛けるオーサーコーチに背を向け、聞いたことも無い激しい声で「跳ぶ!!」と叫び、直前練習に合流。
生放送の実況で「死ぬまでやる」と言ったと伝えられたが、現地で取材していた記者が耳にした言葉は「死んでもやる」だったと聞く。これはかなり意味が違ってくると思うので記録しておく。
硬い氷に顎をしたたかに打ちつけ跳ね返るほどの衝撃で脳が揺さぶられて、演技中にセカンドインパクトが起こって本当に「死ぬまでやる」ということになってしまうのではないかと恐れながら見守った。
♪「オペラ座の怪人」より
振り付け:シェイ=リーン・ボーン
覚悟を決めたかのような鋭い目つき。
何かにとりつかれているかのような狂気をはらんだファントム。
サルコウ、トゥループと4回転は回りきったものの、どちらも着地の足にまるで力が入らないような崩れ方。
トリプルフリップはエッジエラーもなく成功。
フライングキャメルからのコンビネーションスピン、ジェラルド・バトラーの歌声に合わせて口ずさみながらのステップは優雅で美しい振り付け。
仮面を外す手つきが色っぽい。
後半の4回転はさすがに回避し、3回転ルッツ+両手を挙げてのダブルトゥループ。
得意のトリプルアクセルで着氷に失敗。
再開された直前練習から引き上げるとき足を上げられなくて自分でエッジケースをはめる事ができなかったが、やはり足に怪我をしているのではないかと思った。
次のトリプルアクセル+ハーフループ+トリプルサルコウは成功。
トリプルループはアンダーローテーションで転倒、疲れきった様子で立ち上がり、すぐ次のトリプルルッツも立て続けに転倒、両手で体を支えてなんとか立ち上がり、前のめりに駆け出す姿に感動的な歌の盛り上がり(「♪the power of the music of the night」の部分)、ここでぶわっ😭ときた。
常々『ミュージック・オブ・ザ・ナイト』は同じアンドリュー・ロイド・ウェバー作曲の『ピエ・イエズ』に似ていると思っていたが、「♪music of the night」の部分に「♪Dona eis requiem」が重なり、転んでも転んでも起き上がり、ヘロヘロになりながらも最後まで滑りきろうとする姿に殉教者的なスケーターだと畏怖を感じた。
オリンピックシーズンでもない、グランプリファイナルでも全日本でもない試合になぜここまで・・・と思ったが、あの震災を経験して、必ずしもスケートが滑れる明日がくるとは限らないということを知ってしまったからなのかもしれない。