ショート「序奏とロンド・カプリチオーソ」(清塚信也によるピアノアレンジ)
振付:ジェフリー・バトル シェイ=リーン・ボーン
フリー「天と地と」
振付:シェイリーン・ボーン
エキシビション
「Let Me Entertain You」(全日本選手権)
「春よ、来い」(北京オリンピック)
11月4日、今季初戦予定だったGPシリーズ第4戦NHK杯(11月12~14日)を右足関節靱帯損傷により欠場することが発表された。
11月17日、回復の遅れから第6戦(最終戦)ロシア杯(26、27日)も欠場することが発表された。
大阪で開催予定だったグランプリファイナルは11月29日に政府より発表された新型コロナウィルスのオミクロン株に関する水際対策強化のため、外国人の新規入国停止に伴い中止となった。
12月24~26日、全日本選手権出場。27日、エキシビション参加。
2月8日~10日、北京オリンピック出場。20日、エキシビション参加。
3月1日、右足関節捻挫が完治していないため世界選手権(3月21~27日)を欠場することが発表された。
3月7日配信ORICON NEWS
リモートで4回転アクセルを指導し続けたジャンプ・コーチ、ジスラン・ブリアン氏がインタビューで昨年の全日本選手権の1ヶ月半前には羽生選手から4A着氷動画が送られてきたことを明かした。「『Check this out』というメッセージが添えられていて。動画を見たら(4A着氷後)立っていたんです。それまで降りたとしても転倒、また転倒、転倒の連続でした。それがこの日は5つほどの動画が送られてきて、彼が立っているんです。もう僕はそこでパニクりましたよ。冗談抜きで、あの動画を見た時、僕は家の中でぴょんぴょん飛び跳ねました。『Oh my god! 立ってるじゃないか!』って。北京で跳んだジャンプはそれよりもさらに良かった。転倒はしましたが、ジャンプに高さがあったし、飛距離も伸びていたし、着氷もいっそう明らかに片足で降りていました」
全日本選手権優勝322.36(SP1位111.31 FS1位211.05)
ショート
4S
4T+3T
FCSp
3A
CSSp
StSq
CCoSp
全て加点のつくジャンプでスピンステップ共に全てレベル4
フリー
4A
4S
3A+2T
3Lo
FCCoSp
StSq
4T+3T
4T+1Eu+3S
3A
ChSq
FCSSp
CCoSp
4Aは両足着氷でダウングレード判定だったものの、高さも幅もあり(高さ75cm飛距離3.10m)空中姿勢の美しいジャンプだった。
他は全て加点のつく完璧なジャンプでスピンステップ共に全てレベル4
プログラム構成点の【曲の解釈】で10点満点
北京オリンピック4位283.21(SP8位95.15 FS3位188.06)
ショート冒頭の4回転サルコウ踏み切りで氷の穴にブレードがはまり、1回転に。(全日本では14.13の技術点を稼いだジャンプが0点に...)
4T+3Tの4回転トゥループは高さ52cm飛距離2.64m、セカンドにつけた3回転トゥループは両手を上げた(全日本では上げていなかった)美しいジャンプ
トリプルアクセルは片足でステップ&ターンからそのままの足で即座に踏み切る難しい入り方で高さ47cm飛距離2.58m
足替えシットの後フェンスの近くで一瞬静止してステップシークエンスに入る時、全日本ではニースのロミオを彷彿とさせる気合の入り方だったが、今回は力が抜けた表情。
私が所有するレコードの渡邊學而氏による「序奏とロンド・カプリチオーソ」の曲解説に
「若々しく野心的な作品で構成的にも美しい。曲は、まずメランコリックにと指示された憂愁美をたたえた旋律を持つ序奏に始まる。続く主部のロンド・カプリチオーソはその名の示すように主題がやや不規則に取り扱われており、まず律動的で威容のあるロンド主題が現れ、次いで抒情的で歌うような副主題、リズミックで舞曲的な副主題、哀愁を帯びた副主題が奏されてゆく。」 とある。
全日本では「若々しく野心的、律動的、威容」という印象が強く感じられたが、北京五輪では「憂愁、哀愁、抒情的」という部分がより深く感じられた。
円熟味のあるステップシークエンスは柔らかく丁寧。
天を仰いでから片手で頭を抱えて撫でるように手を下ろしていき上体を沈め自分の体を抱きかかえるような振り付けが官能的かつ悲愴で、この部分を何度もリピート再生した。
演技構成点の【曲の解釈】は9.43点だったが、ドラマティックにアレンジされた清塚信也さんのピアノ演奏による「序奏とロンド・カプリチオーソ」においては北京での演技の方が10点満点だった全日本よりよいと感じた。
竹宮恵子の漫画『ロンド・カプリチオーソ』に「スケートにぴったりだと思わないか! もっともフランチェスカッティの演奏でなければな」というセリフがある。
同作品内の「曲にあった演技」というものはスケートでいくらも見られますがこうまで「曲」であることは舞踏家にも可能たりえましょうか」 という言葉を体現するスケーターが現実に現れようとは!
ショート終了後に全日本でのフリー構成3A+2Tだったところを3A+3Lo、続く3Loを3Fに変更した予定構成を提出したが、フリー前日練習で4A転倒時右足首を捻挫し、フリー当日朝の練習では4Aも右足で踏み切るループも跳ばず、3A+2Tに続いて3Fの流れで跳び(本番でも3A+2Tから3Fで跳んだ)自分の曲かけ練習を待たずに20分でリンクを後にした。
フリー本番、痛み止めを打った右足の感覚がない状態で跳んだ4回転アクセルは高さ64cm、片足で降りるも転倒。
回りきっているように見えたがジャッジはアンダーローテッド判定。
ダウングレードではないので、世界で初めて4回転半として認定された。
2月10日放送『報道ステーション』で鍵山選手が羽生選手の4A挑戦についてコメントする場面で映った別アングルの映像で更に4分の一回転以上足りないようには見えないという気持ちを強くした。
『EUROSPORT』の解説者も「q判定が妥当だ」と異議を唱えている。
2月14日の記者会見での発言
「(フリー)前日の練習で足を痛めて、4回転半で思いっきり自分の中でも一番に締めて片足で降りに行って、その時に捻挫しました。その捻挫の程度も思ったよりひどくて、本来だったら、普通の試合だったら完全に棄権していただろうなと思いますし、今も安静にしていないと本当はいけない期間で、ドクターのほうからはもう十日は絶対安静にしてねっていわれてるんですけど、それぐらい悪くて、当日の朝の公式練習、あまりにも痛かったんでどうしようかなって思ったんですけど、6分間練習の直前に、10分前くらいですかね、注射を打ってもらって出場することができました。でもその注射の痛みを消してもらえる感覚であったり、あとは自分自身が怪我をしていて追い込まれていて、ショートも悔しくて、いろんな思いが渦巻いた結果としてアドレナリンがすごく出て自分の中でも最高のアクセルができたと思っています。きっとジャンプにはいろんな技術があって、僕は4回転半というものを習得するにあたっていろんな技術を研究して学んで自分のアクセルに繋げようと思ったんですけど、やっぱり自分自身のジャンプは曲げたくないっていうか、あのジャンプだからこそキレイだって言ってもらえるし、僕はあのジャンプしかできないし、だから絶対に思いっきり跳んで思いっきり高いアクセルで思いっきり早く締めてっていうことを追求しました。その結果としての、そのジャンプとしての最高点には僕の中ではたどり着けたと思っていますし、回転の判定もいろいろありますけど、でも僕の中ではある意味納得してます。満足した4回転半だったと思ってます」
「今まで4Aを跳びたいってずっと言ってきてめざしてた理由は自分の心の中にいる9歳の自分がいて、あいつが『跳べ』ってずっと言ってたんですよ。で、ずーっと『おまえヘタクソだな』って言われながら練習してて。でも今回のアクセルはなんか褒めてもらえたんですよね。一緒に跳んだっていうか。実はおんなじフォームなんですよね、9歳の時と。4Aをずっと探していくときに最終的に技術的にたどりついたのがあの時のアクセルだったんですね。最後に壁の上で手を伸ばしていたのは9歳の俺自身だったなって。最後にそいつと、そいつの手を取って一緒に登ったなっていう感触があって。そういう意味では羽生結弦のアクセルとしてはやっぱりこれだったんだ!って納得できてるんです。それがモチベーションとしてこれからどうなるかっていうのはまだ四日しかたってないのでわかんないですけど、でも正直今の気持ちとしてはあれがアンダーだったとしても転倒だったとしても・・・いつか見返した時に『やっぱ羽生結弦のアクセルって軸細くてジャンプ高くてやっぱキレイだね』って思える、誇れるアクセルだったと思っています」
2月14日の会見後
『報道ステーション』単独インタビュー
「羽生結弦の体で羽生結弦の理想とするアクセルを続けた結果としてはあれがすべてだったと僕は思ってます。最終的にあそこまで回してくれたのはやっぱりたくさんサポートを受けて、こんなに幸せな舞台でオリンピックという最高の舞台で、足首が壊れて、ショートも何の因果なのかわかんないんですけどショートもうまくいかなくて、注射打ってもらって、感覚なくなって、それでやっと、あそこまでアドレナリンが出て、火事場の馬鹿力であそこまで行けたんです。僕にとってこんなに整った舞台なんてないですよ」
「ただ僕は初めて4回転半の基礎点から減点された、そのジャンプをオリンピックという舞台でできたっていうことと、僕のプライドを消さないあのアクセルジャンプでそれができたってことは、すっごく、ものすっごく誇りに思ってます」
「痛み止めもかなり強いものを許容量以上に飲んでいます」
『news zero』単独インタビュー
「アクセルって回転の方法論が全然違って、他の選手たちにとっては技術的に似てるとか同じように回せる選手もいるかもしれないんですけど僕のアクセルの場合はやっぱりそうではなくて回転の速さと高さの両立ですかね。やっぱりそれはいまだに難しいですし、足を前に出しているからこそ回転をかけに行く時間が長くなってしまいますし、でも足を前に出し切らないとやっぱり僕ならではのあの高さと幅が出ないので本当に大変だったんです」
「僕のアクセルの理論で自分の、羽生結弦のアクセルっていうことを保持したままでできる最高点は本番でできたと思っているんですよ、僕は。ある意味では納得してますし、あれが僕のすべてだったかなって自分の中で”今は”思っています」 (”今は”の部分を強調した言い方)
オリンピック前に複数の生体力学やスポーツ科学の教授が4回転半を成功させるためには・・・と様々な自論を展開していた。その中に助走を長くとって高さはあまり出さない方がいいと言っている人がいたが、さぁ跳ぶぞという長い助走や低いジャンプは羽生結弦のアクセルじゃない。
体操で五輪二連覇した内村航平さんが跳び上がる前に回転をかけ始めることを提案していたが、それもまた羽生結弦のアクセルではない。
『北京オリンピックハイライト』NHK単独インタビュー
「正直言ってしまうと、あの怪我がなければあのアクセルにはなれなかったなって思ってます。あの怪我があって周りの方々がたくさんサポートしてくださって更によりいっそう力をくださって、で、僕自身もすごく集中できてましたし、注射を打ってもらって完全に痛みを飛ばしていただいてできる状態だったので、ある意味すごく集中できました。今までにない力でアクセルに挑めたと思いますし、本当に皆さんの思いが直に伝わった、そんな瞬間だったなって」
『Live news α』単独インタビュー
「生まれつき体がすごい柔らかくて力がうまく伝えられなかったんですよね。力を使えなかったので一生懸命高く跳んで一生懸命回すっていうことをずーっとしてたんですよね。だからなんかその時のアクセルの形が一番軸に入るのが早いっていう、一番回転に入るのが早かったんです。で、トリプルアクセルがちょっと安定してきたころの世界ジュニアとか、そういう映像を見返してみると既に今の僕のアクセルの形になっちゃってるんですよね。だからそのトリプルアクセルを習得する段階でその元々4回転半というものに必要だった技術を消してしまってたんですよね。不思議ですよね。実はもう知ってたというか。ただそれに気づくのは本当にここに来る十日前くらいですかね。もっと直前かもしれないです」
15日は「オペラ座の怪人」をかけて練習。
練習後のインタビューで「中国で『オペラ座』っていうのはすごく大切な、なんか、思いがあったので」 と。
0:22~0:23 そのまま天に昇っていきそうな 高いトゥウォーレイが感動的
2014-2015シーズンの記事を読み返して思い出したが、「オペラ座の怪人」後半のジャンプトリプルルッツ+両手上げダブルトゥループは11月の中国杯6分間練習での衝突事故による怪我や12月の開腹手術、2月の捻挫がなければ本来4回転トゥループ+ダブルトゥループという構成だったのだ。
2015年3月29日世界選手権後インタビュー
「4回転ジャンプをフリーで3つに戻したいという気持ちがあったんです。だからプログラムの通し練習をものすごく数をやって、『演技後半の疲れたなかでの4回転』という練習を多発して、怪我してしまいました」
https://global.canon/ja/event/skating/interview/2014_2015/hanyu.html(キヤノン・ワールドフィギュアスケートウェブ)
16日の練習には姿を見せず、17日は「レッツ・ゴー・クレイジー」、「パリの散歩道」、「レット・ミー・エンターテイン・ユー」のロックナンバー3曲、18日は「ホープ&レガシー」、「パガニーニの主題による狂詩曲」、「ノートルダム・ド・パリ」、「ロミオとジュリエット」、「バラード第1番」、「秋によせて」、「ホワイトレジェンド」、「ノッテ・ステラータ」、「SEIMEI」の9曲をかけて練習。
「今が一番上手い」羽生結弦で2009-2010シーズンFS「パガニーニの主題による狂詩曲」が見られるとは
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ジョニーの影に自分のスケートを見失った2018-2019-2020シーズンSP「秋によせて(Otoñal)」も完全に自分のものにしている。
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白鳥というより黒鳥の狂気を孕んだ「White Legend(白鳥の湖)」
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原曲は同じ「白鳥の湖」なのに癒しの天使のような「Notte Stellata(星降る夜)」
1:06 ディレイドアクセルの高さとカメラアングルによる迫力
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「今までのスケート人生の中で落とし物してきたものみたいなものを全部やろう、今ならできるって思って」
「実は先シーズンのフリー『天と地と』ができるまで、体力トレーニングとして今までノーミスでできなかったプログラムを全部ノーミスでしていくていうことをやってたんですね。で、その中には2日目にやった『オペラ座の怪人』だったりとか。あとはまあ、最後らへんにやってた『ノートルダム・ド・パリ』だったりとか、あとは、あの後半に4回転トーループを入れて、一番最初にトリプルアクセルの構成の『バラード第1番』とか。そういったいろんなプログラムがあって。なんか、自分の中ではある意味、消化し切れてたんですよね。いわゆる落とし物を、ちゃんと回収して、次に進めるなって思ってやってたんです」
2月20日エキシビション後インタビュー
「練習では、普通は1錠が適切と言われている痛み止めを4錠くらい飲んでいます。それで右足を使わないジャンプを。ループやフリップ、ルッツをやらないでいれば、ランディングは何とか耐えられるかなというふうに思いながら。あとは楽しさとアドレナリンで何とかやっていました」
「昨日(2月19日)までの練習はギリギリの状態でやっていたけど、今朝のフィナーレの練習で、痛み止めを1錠しか飲んでいなかったのでどのくらいできるかと試してみたんです。そうしたらめちゃくちゃ痛くて、ループもフリップもダメだと思ってアクセルしかできなかったんです。そのあとで追加して今日は6錠くらい飲んでしまっています」
(ロキソニンかボルタレンだと思うけど胃に穴が開くぞ )