「コット、はじまりの夏」
昨年のアカデミー賞国際長編映画賞ノミネート作品(アイルランド)、主人公のコットを演じたキャサリン・クリンチは本作でスクリーンデビューした新星だそうで、しかも彼女はこの作品でIFTA賞(アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞)主演女優賞を史上最年少の12歳で受賞したそうです。
あらすじ
1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中で寡黙に暮らす9歳のコット(キャサリン・クリンチ)は、夏休みを親戚夫婦のショーン(アンドリュー・ベネット)とアイリン(キャリー・クロウリー)が営む農場で過ごす。アイリンに髪をとかしてもらったり、ショーンと一緒に子牛の世話をしたりと、緑豊かな環境で穏やかな日々を送りながら、二人からの惜しみない愛情を受けるコット。ショーンたちとの時間を重ねていくうちに、コットは自分の居場所を見つける。(Yahoo!検索情報から丸パク)
先ずね、コットを演じたキャサリン・クリンチ嬢が12歳にして完璧に仕上がってるんだわね!美貌がね!!
何処を探せばこんな美少女が湧いてるんだか…とりあえず将来が楽しみな新人女優さんです。
で、コットは9歳という設定で(でもキャサリン嬢が余りにも美し過ぎて9歳にはとても見えないけどなw)アイルランドの田舎町に住んでる大家族の3番目か4番目位に生まれた女の子。更にに下に弟がいて、更に更に現在おかんは妊娠中で臨月間近という…絵に描いたような「貧乏子だくさんファミリー」というヤツです。
父親は三度の飯よりギャンブルと酒が好きなタイプで家庭内民度限りなく低め、姉達は揃いも揃ってハスッパなマセガキタイプ、下の弟は起きている時間の9割を泣き叫んでる系で躾けもクソもあったもんじゃない感じ。そんな極悪家庭環境の中で浮きまくっているコットは家庭にも学校にも馴染めず常に浮いていてボッチが基本仕様。精神的支柱もなく親も頼りにならない為情緒不安定で9歳になっても夜尿症が治らない状態。もうこれ児相案件ってヤツですわな。
そんなコットを、臨月で子供が生まれるタイミングが夏休みと被ったので夏休みの間だけ母親のイトコ夫妻に元に預ける事になった…んだけど、他の兄弟はそのまま家に居たって事なのかな?どうしてコットだけが預けられたんだろう?そこの描写はなかったように思うけど…まあ、そこは気にしなくてもいいのかもしんないな。
まーそんなこんなでコットは親戚夫婦の家に夏休みの間預けられた訳です。
夫妻には子供がいないらしいのだがコットがあてがわれた部屋は明らかに子供部屋(しかも少年向け)の仕様だし、着替えを持たされずにやって来たコットに夫妻はジーンズとチェックシャツやセーター等の少年向けの服をタンスから出して着替えさせてあげている。まあこの段階で「どうやら一人息子を亡くした夫婦なんだな」というのは想像が付きます。
初対面から優しく接してくれるアイリンに比べ、夫のショーンの方は無口で無愛想でちょっと怖い雰囲気…コットも最初はビクビクしています。ショーンと2人で牛小屋に行った際、ショーンが牛舎の掃除をしている間にコットが勝手に他の場所に遊びに行ってしまい、コットが居ない事に気付いたショーンが必死に探してコットを見付けるや「勝手に他の場所に行くんじゃない💢」と厳しい声で叱り付けます。コレは自分が目を離した隙に息子を喪ってしまったトラウマから来ているのだと後で判るのですが、ド叱られて相当怖かっただろうけどコットも思うトコロがあったのかそれから頻繁にショーンと連れ立って牛舎に出掛けては一緒に牛舎の掃除を積極的に手伝うようになります。このくだりがたまらなく愛おしいです。
劇中で何か特別な事が起こっている訳ではないのですが、静かに、でも確実にコットとショーンの距離もコットとアイリンの距離も変わっていくのを感じさせます。
それが、夏のアイルランドの牧歌的な風景の中でとても美しく写ります。まるで回廊のように覆い茂る木々の中をアイリンと手を繋いで水を汲みに行く。ショーンに促されて走って郵便物を取りに行く。スグリのジャムを作ったりルバーブのパイを焼いたりする。コットが明らかに生き生きとしていきます。もう夜尿症も治りました。
街にコットの服を(女の子らしい服を)買いに出掛ける際にショーンは「今日は思いっきり甘やかすんだ」と言っています。もうなにもかもがコットにとって完璧にHAPPYな夏休みだったのだろうとスクリーンを観ているコッチもホッと胸をなで下ろすような気持ちになります。
そんな幸せな夏休みが終わり、コットはまたあの家族の元に戻らないといけなくなりした。まあ当たり前なんですが。
映画の最後、コットが走り出した時に気が付いたら涙が流れていました。本当に淡々とした話でただただ美しいアイルランドの風景をバックにひと夏を過ごす美少女の姿を追っているだけの映画なんですが、郷愁なのかこの後の展開に思いを馳せて心配したり落胆したり希望を持ったり、とにかく説明の出来ない気持ちがいっぱい溢れ出して、それが涙になったのかもしれません。本作は最後のスタッフロールもステキでした。アイルランドの田舎のあの美しい場所の音だけが静かに流れます。
日々何かに追われて心が疲弊している方、たまにはこういう作品観て下さい。本当に癒されますよ。