「プアン/友だちと呼ばせて」
8月も今日で終わり…毎年の事ではありますが、8月になるとめっきり映画館に行く回数が減ります。暑いし国盗りの遠征とかあるし(←コレもまだUPしてねーな💦)
まあそんなこんなですがそろそろ映画館通いも再開させたいな、という気持ちで8月LAST DAYになんとか滑り込みで映画館行っておいたわよ!
あらすじ
アメリカ・ニューヨークでバーを営むボスの元に、タイ・バンコクで暮らす友人ウードから久々に電話が入る。がんに侵され余命宣告を受けたという親友の頼みを聞くためタイに帰国したボスは、元恋人たちを訪ねるウードの旅のドライバーを任される。
彼の体調を気遣いながらも楽しい時間を共にし、旅も終わりにさしかかったころ、ウードがある秘密を打ち明ける。(Yahoo!Movieから丸パク)
本作は単館系映画好きさんなら多分ほぼ確実にチェックしているであろう、「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」で世界的に大ヒットしたタイの監督・ナタウット・プーンピリヤ氏の最新作で、更に本作にはプロデューサーとしてなんと「恋する惑星」等、数々の名作を世に送り出している香港の巨星ウォン・カーウァイ氏がクレジットされているという…え?ココは今年のアカデミー賞会場ですか?レベル。
いやね、この制作陣クレジット見てスルー出来る単館映画好きさんって世の中にいるの!?レベルですよね。だから自分が今日ようやく観た段階でほぼクソ扱いっすよね(苦笑)
ま、そんなこんなで本作。
とりあえずウォン・カーウァイ氏が頭突っ込んで来た事で確実に今までより映像がオシャレになった!色味もアングルもカット割りも一々シャレオツだった!
それで肝心の内容なんだけど…あらすじから(映画館で流れてた予告編も)察するに、まあよくあるあるな「余命宣告受けたヤツの最期の旅」ネタな訳で。
そしてそれは決して間違ってはいない、と言うか、ちゃんと皆が予想していた通りの「最期の旅ロードムービー(バディムービー系とも言う)」なんですが…
ノスタルジック感を引き寄せるアイテムが満載で、例えば余命宣告を受けたウードは亡き父親が乗っていて受け継いだ(らしい?)アンティークなBMWで最期の旅をする。
もっとも、そのBMWを運転出来る程の体力も既に残っていない状態なので(という体で)わざわざNYでBARをやっている親友の「ボス」を呼び寄せる訳ですが、アンティークBMWなので車内のカーステが昔ながらのカセットテープ仕様で、そのカセットテープが劇中の内容と常にリンクしていて、ウードが死ぬ前に直接会って渡したかった(返したかった)モノを元カノに(元カノ【達に】←ココ重要)渡す度にカセットテープが次々と変わっていく。元カノの名前が書かれたカセットテープから流れるBGMに載せて当時の彼女とのエピソードが切れ切れに映し出されて、どうやって出会ってどうやって別れていったのかがフンワリと観客に提示されていく。
カセットテープは本作の重要なアイテムで、他にもある深夜ラジオ番組が全回分録音されている。コレはタイで放送されていた(タイ語で放送されていた)番組で、その番組のDJをウードの父親が長年担当していた。(ウードは途中NYに行っていたのでどうやってこの番組を録音していたのかは謎。辻褄が合わないけどそこはスルーでw)
ウードが何故NYに当時渡っていたのかは敢えて劇中でいきさつは語られていなかったが、このDJをやっていた父親がガンで亡くなっているんだけど亡くなった当時ウードはNYに居て、父親の葬儀諸々の為に帰国する事はなくキチンと弔いをしなかった事がかなりウードにとって後悔になっている。
そして…カセットテープにはA面とB面がある
知らない若者向けに…カセットテープは表(A面)と裏(B面)の両方で録音が出来る。カセットを裏返してデッキに入れると裏面に録音した音源を聞く事が出来る。
本作は冒頭からずっとウードと元カノ達との思い出エピソードの「A面」を流していたが、ある段階でそのカセットテープを裏返して「B面」の【ボスのエピソード】が始まる。
本作のキモはこのB面エピソードで、死を目前にしたウードが何故NYで生き別れたかつての友「ボス」をわざわざタイへ呼び戻したのか…がここでようやく明らかになる。
映画冒頭からずっとウードとボスは長年の友人のように描かれていたが(てっきり幼馴染み?で、タイから一緒にNYに連れ立って出て来た手合いかと思っていた)、実は彼らはNYで出会っていて…しかもある女性を介して…いやその女性が2人を引き合わせた訳でもなく…余り詳しくココでは書けないけど、とにかくそのキーになる女性がB面になってようやく登場して来る。ぶっちゃけそれまでのA面で描かれていた元カノ達のエピソードは全てこのキーになる女性との出会い以降の出来事で、時系列を敢えて逆に見せているのもキモだったと思う。
この手の「余命幾ばく系」の話って、大抵美談仕立てになっていて観客を泣かせようとこれでもかと畳み掛けてくるパターンが殆どだと思うんだけど、本作はこのB面エピソードからちょっと色が変わって、過去の【ある女性】にまつわる事実がボス視点からのアプローチとウード視点からのアプローチで全然違う景色になっている。どちらも事実なんだけど自分の目の前で展開されている「事実」と「真実」には隔世の差があるのだ…という事、そしてそこに更に第三者の思惑が加わる事で運命すら変えられてしまうという事が描かれています。正直なかなかエグい内容なので人によっては「えぇ…」ってなりそうな話なんだけど、個人的には「ありがちなお涙頂戴の聖人君子の最期の旅」よりは百倍人間味のある話で好感が持てました。
死を目前にして、自分のした悪行の後始末である「贖罪の旅」をしたかったウードの気持ちはただのエゴでしかないけど、でもその気持ちは痛い程理解出来る。
ウードを演じた役者さんは本作に当たって相当過酷なダイエットをして臨まれただろうと思います。過去のエピソード時の様子と今の姿がギョッとする程顔や身体の厚みが違っていて、どういう撮影順だったのか分からないけど(最初に過去エピシーンを撮ってから体重落として現在エピを撮ったのかな?どちらにしても相当過酷だっただろう)とにかく役者魂を見せつけられましたね。鬼気迫るものがありました。
それから…ボスを演じた役者さんが本当にチャーミングだったな。端から見たらただのボンボンの甘ちゃんリア充にしか見えないんだろうけど、彼には彼なりの辛い境遇があって、それもきちんと描かれていて…とにかく愛すべきキャラでした。この監督さんは本当に登場キャラを魅力的に描く事に長けているなーと思わされる。
一山100円的に扱われがちな単館系作品ですが、時にキラリと光る名作に出会えるのもまた単館系。
ま、とは言うものの既に「ナタウット・プーンピリヤ監督フィルム」は既に世界中で評価が高いので日本でももう少し大箱で上映しても需要はありそうな気がしますが…
何より、今回映画館行って衝撃的だったのは…本作の上映前の予告編で「ウォン・カーウァイの名作5作品を監督自らが4Kにレストアし上映!【WKW4K】」が流れた事か。
ナンデスカ?要するに本作のプロデュースを買ったのも最終的に観客を「WKW4K」へ誘導する撒き餌だった、という事なのか!?
まあ、いい。結果本作も素晴らしかったし、それに「WKW4K」が魅力的である事もまた事実。真実が撒き餌だったのかどーだったのかなんてこの事実の前ではどーでもいいw
8月も今日で終わり…毎年の事ではありますが、8月になるとめっきり映画館に行く回数が減ります。暑いし国盗りの遠征とかあるし(←コレもまだUPしてねーな💦)
まあそんなこんなですがそろそろ映画館通いも再開させたいな、という気持ちで8月LAST DAYになんとか滑り込みで映画館行っておいたわよ!
あらすじ
アメリカ・ニューヨークでバーを営むボスの元に、タイ・バンコクで暮らす友人ウードから久々に電話が入る。がんに侵され余命宣告を受けたという親友の頼みを聞くためタイに帰国したボスは、元恋人たちを訪ねるウードの旅のドライバーを任される。
彼の体調を気遣いながらも楽しい時間を共にし、旅も終わりにさしかかったころ、ウードがある秘密を打ち明ける。(Yahoo!Movieから丸パク)
本作は単館系映画好きさんなら多分ほぼ確実にチェックしているであろう、「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」で世界的に大ヒットしたタイの監督・ナタウット・プーンピリヤ氏の最新作で、更に本作にはプロデューサーとしてなんと「恋する惑星」等、数々の名作を世に送り出している香港の巨星ウォン・カーウァイ氏がクレジットされているという…え?ココは今年のアカデミー賞会場ですか?レベル。
いやね、この制作陣クレジット見てスルー出来る単館映画好きさんって世の中にいるの!?レベルですよね。だから自分が今日ようやく観た段階でほぼクソ扱いっすよね(苦笑)
ま、そんなこんなで本作。
とりあえずウォン・カーウァイ氏が頭突っ込んで来た事で確実に今までより映像がオシャレになった!色味もアングルもカット割りも一々シャレオツだった!
それで肝心の内容なんだけど…あらすじから(映画館で流れてた予告編も)察するに、まあよくあるあるな「余命宣告受けたヤツの最期の旅」ネタな訳で。
そしてそれは決して間違ってはいない、と言うか、ちゃんと皆が予想していた通りの「最期の旅ロードムービー(バディムービー系とも言う)」なんですが…
ノスタルジック感を引き寄せるアイテムが満載で、例えば余命宣告を受けたウードは亡き父親が乗っていて受け継いだ(らしい?)アンティークなBMWで最期の旅をする。
もっとも、そのBMWを運転出来る程の体力も既に残っていない状態なので(という体で)わざわざNYでBARをやっている親友の「ボス」を呼び寄せる訳ですが、アンティークBMWなので車内のカーステが昔ながらのカセットテープ仕様で、そのカセットテープが劇中の内容と常にリンクしていて、ウードが死ぬ前に直接会って渡したかった(返したかった)モノを元カノに(元カノ【達に】←ココ重要)渡す度にカセットテープが次々と変わっていく。元カノの名前が書かれたカセットテープから流れるBGMに載せて当時の彼女とのエピソードが切れ切れに映し出されて、どうやって出会ってどうやって別れていったのかがフンワリと観客に提示されていく。
カセットテープは本作の重要なアイテムで、他にもある深夜ラジオ番組が全回分録音されている。コレはタイで放送されていた(タイ語で放送されていた)番組で、その番組のDJをウードの父親が長年担当していた。(ウードは途中NYに行っていたのでどうやってこの番組を録音していたのかは謎。辻褄が合わないけどそこはスルーでw)
ウードが何故NYに当時渡っていたのかは敢えて劇中でいきさつは語られていなかったが、このDJをやっていた父親がガンで亡くなっているんだけど亡くなった当時ウードはNYに居て、父親の葬儀諸々の為に帰国する事はなくキチンと弔いをしなかった事がかなりウードにとって後悔になっている。
そして…カセットテープにはA面とB面がある
知らない若者向けに…カセットテープは表(A面)と裏(B面)の両方で録音が出来る。カセットを裏返してデッキに入れると裏面に録音した音源を聞く事が出来る。
本作は冒頭からずっとウードと元カノ達との思い出エピソードの「A面」を流していたが、ある段階でそのカセットテープを裏返して「B面」の【ボスのエピソード】が始まる。
本作のキモはこのB面エピソードで、死を目前にしたウードが何故NYで生き別れたかつての友「ボス」をわざわざタイへ呼び戻したのか…がここでようやく明らかになる。
映画冒頭からずっとウードとボスは長年の友人のように描かれていたが(てっきり幼馴染み?で、タイから一緒にNYに連れ立って出て来た手合いかと思っていた)、実は彼らはNYで出会っていて…しかもある女性を介して…いやその女性が2人を引き合わせた訳でもなく…余り詳しくココでは書けないけど、とにかくそのキーになる女性がB面になってようやく登場して来る。ぶっちゃけそれまでのA面で描かれていた元カノ達のエピソードは全てこのキーになる女性との出会い以降の出来事で、時系列を敢えて逆に見せているのもキモだったと思う。
この手の「余命幾ばく系」の話って、大抵美談仕立てになっていて観客を泣かせようとこれでもかと畳み掛けてくるパターンが殆どだと思うんだけど、本作はこのB面エピソードからちょっと色が変わって、過去の【ある女性】にまつわる事実がボス視点からのアプローチとウード視点からのアプローチで全然違う景色になっている。どちらも事実なんだけど自分の目の前で展開されている「事実」と「真実」には隔世の差があるのだ…という事、そしてそこに更に第三者の思惑が加わる事で運命すら変えられてしまうという事が描かれています。正直なかなかエグい内容なので人によっては「えぇ…」ってなりそうな話なんだけど、個人的には「ありがちなお涙頂戴の聖人君子の最期の旅」よりは百倍人間味のある話で好感が持てました。
死を目前にして、自分のした悪行の後始末である「贖罪の旅」をしたかったウードの気持ちはただのエゴでしかないけど、でもその気持ちは痛い程理解出来る。
ウードを演じた役者さんは本作に当たって相当過酷なダイエットをして臨まれただろうと思います。過去のエピソード時の様子と今の姿がギョッとする程顔や身体の厚みが違っていて、どういう撮影順だったのか分からないけど(最初に過去エピシーンを撮ってから体重落として現在エピを撮ったのかな?どちらにしても相当過酷だっただろう)とにかく役者魂を見せつけられましたね。鬼気迫るものがありました。
それから…ボスを演じた役者さんが本当にチャーミングだったな。端から見たらただのボンボンの甘ちゃんリア充にしか見えないんだろうけど、彼には彼なりの辛い境遇があって、それもきちんと描かれていて…とにかく愛すべきキャラでした。この監督さんは本当に登場キャラを魅力的に描く事に長けているなーと思わされる。
一山100円的に扱われがちな単館系作品ですが、時にキラリと光る名作に出会えるのもまた単館系。
ま、とは言うものの既に「ナタウット・プーンピリヤ監督フィルム」は既に世界中で評価が高いので日本でももう少し大箱で上映しても需要はありそうな気がしますが…
何より、今回映画館行って衝撃的だったのは…本作の上映前の予告編で「ウォン・カーウァイの名作5作品を監督自らが4Kにレストアし上映!【WKW4K】」が流れた事か。
ナンデスカ?要するに本作のプロデュースを買ったのも最終的に観客を「WKW4K」へ誘導する撒き餌だった、という事なのか!?
まあ、いい。結果本作も素晴らしかったし、それに「WKW4K」が魅力的である事もまた事実。真実が撒き餌だったのかどーだったのかなんてこの事実の前ではどーでもいいw