天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「クーリエ:最高機密の運び屋」@40作目

2021年10月07日 | 映画感想
「クーリエ:最高機密の運び屋」

1960年代、米ソ冷戦時代の「キューバ危機」を食い止める為に裏で動いていたスパイ達のお話。実話ベースだそうです。
米英側スパイになっていたのが何とド素人のサラリーマンだった、という物凄いお話…いやだからコレ実話なのよね?^^;

あらすじ
1962年10月。ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設していることが明るみになり、対立状態にあったアメリカとソ連は衝突寸前に陥る。このキューバ危機を回避するために、アメリカ中央情報局CIAとイギリス情報局秘密情報部MI6はスパイの経験など皆無だったイギリス人セールスマンのグレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)にある諜報活動を依頼する。それはモスクワに飛びソ連軍参謀本部情報総局GRUの高官と接触を重ね、彼から得た機密情報を西側に持ち帰るというものだった(Yahoo!Movieから丸パク)

ちょうど今現在「007」の新作が公開中なのでネタが微妙に被ってる感が無きにしも非ずな訳ですが…蓋を開ければまるで様相が違います。
実際のスパイはあんな格好良くないし華々しくないし派手にドンチャカしないし…静かに、ひっそりと、闇に隠れてコソコソしているものなのです。
それにしても第三次世界大戦が今正に幕を開けようかというとてつもない重要な局面での情報戦をやり取りさせるのにまさかド素人のリーマンをリクルートしますかね!?
いや「しますかね!?」じゃなくて本当にしてたんだ、というのが驚き以外のナニモノでもない訳です。それでもって本当に正義感だけでこの命懸けのスパイ活動に足突っ込んで、いや首までドップリ浸かっちゃった「グレヴィル・ウィン」という人にも本当に驚かされました。

スパイとしての遣り取りでハラハラさせる話なのかと思いきや、まあそれはそれでハラハラドキドキではあるものの…むしろ本作のキモは「敵のスパイ同士でありながらお互いの人柄に惚れて【男の友情】にまで昇華させていった」という部分だろうと思います。
ソ連側の内通者「オレグ・ペンコフスキー」は元々軍の幹部でおよそスパイとは無縁、いや真逆の立場の人間だったんだけど時のソ連最高指導者「フルシチョフ」の直情的な性格を危惧していて「コイツマジで核ミサイルのボタンを勢いで押しかねないヤベーヤツ」てな感じで、ソ連からアメリカに戦争をいつ仕掛けてもおかしくない状況を何とかしなければ、核戦争だけは回避させなければ、という正義感の一心で内通者となったらしいのです。
オレグの「世界を平和にしたい」という純粋な気持ちを知ったグレヴィルは心打たれて、またオレグの気持ちに応えようとド素人でありながら懸命にスパイ活動をこなすグレヴィルの姿にオレグもまた心開いてお互いが次第に深く信頼し合うようになっていきます。
お互いの家族とも交流し合う様子等も出て来ますが、グレヴィルがオレグの家族と会った際に「外国人と家族が交流するという事がないので…(上手くコミュニケーション取れなくてごめんね)」と申し訳なさそうに話すオレグに優しく「いいんだよー」と語るグレヴィルの、その2人の姿に「ああ、いい友人関係なんだなー」と思わされました。

話はいよいよキューバにソ連の核ミサイルが…という時局になって遂にスパイである事がバレて2人ともとっ捕まってしまうのですが、捕まってからのベネディクト・カンバーバッチの迫真の演技がもうとにかく凄くて!頭丸坊主にされて全裸にされて粗末な囚人服とロクに暖房もない汚い独房、粗末な食事と拷問にも近い取り調べの日々でどんどんやつれて表情がなくなり目が死んでいく…それをこの人は本当に何ヶ月もこの仕打ちにあっていたのではないか?と錯覚させられる程の鬼気迫る姿で演じていました。
実際役作りの為に体重を10kg落として臨んだそうで、最後の方とかゲッソリ痩せて頬もコケて凄まじい姿になっていました。正に「役者魂」を見せ付けられましたね。
そしてオレグを演じた「メラーブ・ニニッゼ」さんもまた素晴らしい演技でした。クライマックスで取り調べ室で2人が引き合わされるシーンがあるのですが、やはりゲッソリと痩せたオレグが「鏡を見てないから自分の姿が分からないんだよ」と語るオレグの姿に涙がこみ上げて来てしまいましたよ。
あのシーンの2人の姿には本当に心打たれる思いでした。映画なのに、演技なのに、本当に真の男の友情を間近で眺めているような、そんな気持ちになりました。

正直、「スパイ物」って考えると地味~な展開の話なんですが、でもコレが事実なんだからしゃーない^^;
でもそこじゃないんだよーコレは「あの状況下にあってお互いを最後まで信頼し合った男の真の友情の話なんだ」と思って観ると、しみじみと感じ入る物があるのですわー!
あ、それからね、グレヴィルがとっ捕まって家族に「実はお宅のご主人スパイだったんすわー」という話をしに行くシーンがあるんですが、それまでグレヴィルの不審な様子を見て「コイツまた浮気してやがるんぢゃねーのか(グレヴィルは浮気の前科アリ)」と疑っていた奥さんがいの一番に「ああ!私あの人に謝らなくっちゃ!てっきり浮気を疑っていたのに!」って動揺するんだけど、奥さんを演じていた「ジェシー・バックリー」さんがまたいい演技するんですわー。彼女の事全然記憶になくてちょっとフィルモグラフィを調べてみたら「ジュディ 虹の彼方に」とか「ドクター・ドリトル」に出てたんだな…自分両方共観てるのにー!><

ハラハラドキドキのスパイ大作戦を楽しみたい人にはちょーっと物足らなく感じるかもしれないけれど、肉厚な人間ドラマをいい役者の演技で観たい人にはお勧め出来ます!
コメント
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