上田龍公式サイトRyo's Baseball Cafe Americain  「店主日記」

ベースボール・コントリビューター(ライター・野球史研究者)上田龍の公式サイト「別館」

World Series return to Chicago since 1959……

2005年10月17日 | Baseball/MLB
シカゴ・ホワイトソックスが1959年以来のワールドシリーズ出場を決めた。
「ブラックソックス事件」や「ヤギの呪い」についてはもう省略しよう。
要は、ナ・リーグの創設メンバーであるカブスと、ア・リーグの創設メンバーで初代リーグ王者であるホワイトソックスの名門2球団を擁しながら、シカゴでは45年もの間、ワールドシリーズが開かれていなかったのだ。この間にニューヨークでは18回、ロサンゼルス&アナハイムでは9回、セントルイス、オークランド&サンフランシスコでは7回、フィラデルフィアでも3回、あのボストンでさえ4回のシリーズが開催されている。それなのに、シカゴだけがフォールクラシックの季節に半世紀近く蚊帳の外に置かれてきたのだ。2年前は、カブスが切符をつかみかけながら、あの観客の「逆アシスト」のためにマーリンズにペナントをさらわれてしまっている。
それにしても、ホワイトソックスの勝因は何だったのだろう?
やはり「UNO」ピザに対する神尾義弘さんの執念?(ウソです!=笑)
監督のギーエンは、93年にホワイトソックスが地区優勝した時のショートストップだった。新人王やゴールドグラブも獲得し、素晴らしい選手ではあったが、反面精神面の未熟さゆえに(それは現在でも見受けられるが=笑)大選手にはなれなかった。ただ、プレーヤー側に立つ監督で、選手の上に君臨するよりも、とにかく選手と同じテンションで(それは功罪相半ばする部分もあるのだが)試合に臨む姿勢が今季は成功した。投手交代のタイミングにも問題があるが、自分の欠点を素直に認めるのも周囲から好感を持たれたようだ。
MVPに輝いたコナーコは、ドジャースで新人王候補と呼ばれながら、オマリー家から経営権を引き継いだFOXグループ主導のフロントがその将来性を見抜けず、トレードされたレッズでも芽が出ず、3球団目のホワイトソックスでようやく開花した。高打率は望めないし、ソロ本塁打が多くて、必ずしもチャンスに強いとは言えないが、それでも毎年コンスタントに30本塁打、100打点以上を計算できる選手になった。しかし、彼を捕手から一塁にコンバートしたマイナー時代の監督が、現エンゼルスのソーシアだったというのは歴史の皮肉である。しかし、ソーシアの指導者としての才能を見抜けず、みすみす隣町の商売敵であるエンゼルスに持っていかれ、過去3年間で2回の地区制覇と世界一を横目で見ざるを得なかったLADフロントの無能さこそ、コナーコの放出も含めてドジャースファンは大いに責め立てるべきだろう。
ジャーメイン・ダイはデレク・ジーターやアンドルー・ジョーンズと同期にメジャーデビューを果たし、大いに将来を嘱望された選手だが、アスレチックスでプレーしていた近年は、攻守に冴えを欠くプレーが目立ち、プレーヤーとしては終わりかなと思わせた時期もある。ただ、今季は(毒グモに刺されて欠場するアクシデントはあったが=笑)、とにかく打席でも守りでも、自分の持っている能力を120%発揮しようとする姿勢が見受けられ、それがチームにいいムードをもたらした。
生え抜きエースのマーク・バーリーは、トラッシュトークの達人(笑)で、今季もレンジャーズ打線がスパイ行為をしていると発言して物議をかもすなど、その言動はシカゴのメディアをいつもにぎわせているが、とにかく先発すればほとんどクォリティースタートが期待できるので、投手陣で最も頼りになる人物である。人間的にも決して悪いヤツではない。
こういう「はぐれ者」集団は、まとまると強くなる。2001年のダイヤモンドバックス、そして去年のレッドソックスがそうだった。

リグレーフィールドに比べて観客の入りは悪いが、ファンを楽しませるという点では、USセルラーフィールドことコミスキーパークはメジャーでも屈指の球場である。そもそも現在メジャーのどの球団も行なっている球場でのアトラクションやプロモーションなどのファンサービスを始めた人物こそ、59年のリーグ優勝時にこのチームのオーナーだったビル・ベックだった。時にミゼットの選手と契約して代打に出したり、ディスコナイトでレコード盤がフィールドに投げ込まれて没収試合になったりなどの脱線もあったが、ア・リーグで最初のアフリカ系プレーヤー、ラリー・ドビー(元中日)を入団させたり、数々の先駆的業績のあった名物オーナーだった。実はメジャーではオーナーの殿堂入りが少なく、ヤンキースのジェイコブ・ルパート、ドジャースのウォルター・オマリーなどでさえ選出されていないのだが、ベックは死後の表彰ではあったが、レッドソックスのトム・ヨーキーとともに殿堂入りしている数少ないオーナーの一人でもある。つまりメジャーではオーナーはただチームに金を出しただけでは本当に評価されない、真にファンや球界のために献身的に尽くしたり、先駆的な働きをした人物、たとえばジャッキー・ロビンソンをメジャーに導いたブランチ・リッキーのような人物でなければ殿堂入りできないということだ。

そのベックもすでになく、また長年ホワイトソックスひと筋にプレーしてきたフランク・トーマスも、故障のためようやくめぐってきた晴れ舞台を踏むことができない。逆にメジャー1年目で立派にレギュラーとしての働きを見せ、攻守でリーグチャンピオンシップの流れを変えるプレーを見せた井口は、本当にラッキーな男である。
ヤンキースが敗退して、今シーズンのメジャーは終わったと勘違いしている日本のメディアやファンの皆さんには、いよいよ幕をあけるワールドシリーズは、ホワイトソックスがアストロズ、カージナルスのいずれと対決しようとも、役者揃いの素晴らしいシリーズになることを強調しておきたい。


最新の画像もっと見る