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想像力欠如症候群列島ニッポン!①「日本球界の想像力欠如」

2005年12月29日 | Baseball/MLB
現在、鳥インフルエンザも吹っ飛ぶくらいの勢いで、日本列島全体を覆い尽くしているのが、「想像力欠如症候群」である。正しくは想像力の前に「否定的事態(ネガティブ・シチュエーション)」と付けるべきだろう。「設計図の偽造をやって、それがばれたら職も失い、罪にも問われる」という想像力が欠如していたのが、元設計士Mr.SisterTeethや、S研U河氏、HザーO嶋社長など「偽装ファミリー」の皆さんだろう。

その憂うべきシンドロームは、もちろんベースボールの世界にも蔓延している。日本球界のWBC参加をめぐる諸問題も、そもそも、メジャーリーグの独断専行だとあれだけ反発しながら、結局日本球界が次のような甘い目算を立てていたことに原因があるからではないのか?
①「『世界一決定戦』と銘打つ大会が開催されれば、イチローや松井秀喜らメジャーの選手たちも『お国のために』参加してくれるだろう」
②「そうしたトッププレーヤーが参加する『国際的舞台』が定着すれば、日本人プレーヤーのメジャーへの流出も防げるかもしれない」

おそらく、90%は当たっているはずだ。

①に関しては、私も含めて、期待していた部分は多かれ少なかれあった。実際、イチロー、松井秀喜、井口資仁の3人すべてが揃わなければ、決勝でベスト4以上に進出するのは、難しくなるかもしれない。
問題は②だろう。もし、日本の球界首脳が本気でこんなことを考えていたとすれば(事実、相当本気で考えていただろう)、彼らは揃って相当重症の「想像力欠如症候群」にかかっていると判断して差し支えないだろう。
彼らの期待に大いに水を差したいと思うが、現段階で、WBCがMLBに取って代わる「国際舞台」になることなど、まずありえない。昨日も書いたが、そもそも世界のプロ・アマすべてのベースボールを統括するFIFA的な組織もなく、放映権や版権ビジネスの国際的な展開も不透明で、ホントに将来巨大ビジネスにつながる可能性も不透明ななか、そして日本球界が政治力を駆使して、それにいかに食い込み、また自ら積極的に関与し、提案していく展望も見えないのに、WBCが「真の世界一決定戦」になどなれるわけがない。MLB側ですらアメリカ政府によるキューバチームの入国拒否を予期していなかったのだ。このままでは、国交はあるものの、やはりアメリカと外交関係が最悪の状態にあるベネズエラの参加問題にも波及する恐れがある。そうなればWBCは完全な「飛車角落ち」だ。

日本人メジャーが参加する云々以前に、そもそも日本のプロ野球在籍者によるオールスターが組めない状態というのはどういうことなのか? ハッキリ言って、12球団の足並みはバラバラである。イチローや松井秀喜の参加は、「日本プロ野球最強選抜メンバー」にプラスアルファで論じられる問題だろう。また、イチローや松井の参加を望むのならば、なぜMLB側に、各国にオールスター選手を派遣する準備は大丈夫なのか確約を取らなかったのか。NPBを代表してアメリカに「直談判」に行ったはずの小泉オリックス球団社長は、いったい何を「交渉」してきたのだろう? 
そもそも監督人事からして、長嶋さんが難しいから、では王さんでという発想じたいが、あまりにも安直過ぎる。

松井への出場交渉そのものからして、王さんによる説得任せというありさまだ。まさか「王監督もホークスの指揮を兼ねるんだから、キミも……」なんて、本気で考えていたんじゃ……いや、おそらく「本気で考えていた」のだろう。

考えてみれば、特に90年代以降の日本プロ野球界なんて、「想像力欠如症候群」が骨の髄まで染み付いた人間(それ以前にも当然「症状」はあったのだが)によって支配されてきた。それを考えれば、WBCや松井の参加問題に関する甘い認識も、無理からぬところだろう。あーあ、「球界改革」なんて、ますます遠のいていくばかりだな!


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