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「霜月のひまわり」だった日本シリーズと岸孝之/アジアシリーズは「初冬の風鈴」?

2008年11月17日 | Baseball/MLB

 

 昨日、近所を歩いていたら、もう11月も半ばだというのに、大輪のひまわりが民家の玄関先で咲いていた。

 晩秋の寒風をしのいでいるその姿はいかにも時季外れだったが、直径30cmほどの黄色い花はいかにも人目を引いた。

 

 異例の11月開催となった先日の日本シリーズも、まあこの季節外れのひまわりにたとえることができるだろう。

 おそらく、「今はドーム球場の時代だから」という、いかにも安易で、プレーする選手や試合を見る観客、さらには“壁”のない西武ドームの存在を無視したNPB首脳の相も変わらぬ無為無策のせいで、危うく「史上最低のシリーズ」になるところだったが、両チーム、とくに現役最年少の渡辺久信監督率いる埼玉西武ライオンズの素晴らしいプレーが、このシリーズの価値を高めた(通算の優勝回数を西鉄時代からの通算にしてくれたのもうれしかったね。好評だった西鉄時代のユニフォームは、レオマークをモノクロにするなどして、来季以降もぜひ使用してほしいものだ)。

 

 ジャイアンツの敗因は、基本的には私が北京五輪のころから指摘している「野球は点取りゲーム」という本質を軽視した日本球界全体の傾向が、とくに6、7戦の原辰徳監督の采配や選手起用に如実に表れてしまったということか。それにしても7戦の片岡易之の盗塁はビューティフルだったし、この試合を見ていて、1976年のシリーズ、同じく第7戦の阪急ブレーブスの野球がオーバーラップしたファンは、私だけではなかったと思う。あのときもジャイアンツは一度は2対1と逆転しながら、拙攻で追加点が奪えず、その後、足をからめた(内野安打で出塁したバーニー・ウィリアムズが二盗に成功したあと、森本潔の2ランで逆転し、その次の回で福本豊がダメ押しソロアーチ)ブレーブスが逆転に成功し、ベテランの足立光宏がシリーズ史に残る快投で、同じくジャイアンツを4勝3敗で下し、2年連続日本一、そして対戦6度目にして初の「打倒巨人」を果たしている。

 

 さて、そのあとに間を置かず開催された「アジアシリーズ」は、公式スポンサー撤退、旗振り役だったはずの読売も無関心で、地上波放送もなし。ライオンズも故障の中島ほか多くの選手が欠場し、しかも会場が本拠地ではない東京ドームとあっては、このイベントが「初冬の風鈴」と同じく、野球ファンにとってまったく季節外れのものとして受け止めれたのは仕方がなかった(わが朋友・節丸裕一アナなどJSPORTSの中継は素晴らしかったですけどね)。そもそも野球のシーズンは(北米4大スポーツの場合だが)半年以上に及ぶ上に、試合も毎日のように行なわれているため、(さびしいことではあるが)選手だけでなく、ファンにとっても「シーズンオフ」は必要なものなのである。

 

 せっかくNPB、というより根來“Mr.Gorone”前コミッショナーの肝入りで始めたアジアシリーズも、確かに韓国、台湾、中国のチームにとっては大きな目標になるが、日本ハム、中日、そして今年の西武と、(時期があまりにも悪いし仕方のない部分はあるのだが)、外国人選手を帰国させたり、主力選手を欠場させることが続いては、開催国である日本での盛り上がりに欠けるのは当然だろう。そもそも場当たり的にNPBが思いつき、球界全体のモチベーションづくりはもちろん、公式スポンサーとの長期契約(昨年までのスポンサーが撤退したのは8か月前。昨年のオールスターゲーム公式スポンサー交代の際と同じく、NPBの営業能力のなさがまたも暴露されることになった)や放送局の確保など、最低限の財政基盤づくりもできないのであれば、アジアの3カ国には気の毒だが、このイベントは今年でいったん中止し、近い将来、「欧州チャンピオンズリーグ方式」での再開を模索すべきだろう。

 

 私が提案したいのは、一昨年限りで取りやめの形になった日米野球の復活だ。確かに多くの日本人メジャーリーガーが誕生し、メジャーの公式開幕戦も開催されるようにはなったが、やはり日本の野球ファンは、「日本人メジャーリーガー」以外の、一流メジャーリーガーを生で見たいのだ。

 

 選手会は「過密日程」を理由に、日米野球の中止を求めたが、もし二者択一で日米野球とアジアシリーズのどちらかを選ぶのであれば、断固日米野球を選ぶべきだった。もっときつい言い方をしてしまえば、来日する韓国・台湾・中国のチームや選手のネームバリューだけでも、アジアシリーズは興行として現時点では成り立たない。

 

 来年からは一昨年までと同様に、MLBのオールスターを招き、NPB、韓国、台湾、中国のオールスターと対戦する新たな「MLBvs.東アジア親善野球」に衣替えして開催してはどうだろうか。そしてここ何回か続いていたドーム球場のみの開催ではなく、1931年と34年に来日したベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグらのオールスターチームのように、札幌から沖縄まで、日本列島をくまなく回って、野球の魅力を伝えるスタイルにすればいいと思う。

 

 昨日見た季節外れのひまわりに話を戻せば、冷たい風にさらされながらも、懸命に太陽を仰ぐその姿は堂々たるものだった。日本シリーズ、そしてアジアシリーズでも好投を見せた西武ライオンズの岸孝之も、この晩秋のひまわりのような輝きを放った。来季からも(できれば背番号を「24」に変えてほしいけどね=笑)野球シーズンに大輪を咲かせるひまわりとして、日本球界を代表するエースへと飛躍してもらいたいと、心から願っている。

 

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