上田龍公式サイトRyo's Baseball Cafe Americain  「店主日記」

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地獄へ駆ける獅子を見た……

2006年02月09日 | Baseball/MLB
(不可解な西武からの解雇が、「ブリュワーズ小関」の実現につながるか)

昨年、不可解な形で西武ライオンズを自由契約になった小関竜也が、ミルウォーキー・ブリュワーズとマイナー契約を結んでメジャー入りをめざすことになりそうだ。

「不可解」と書いたのは、小関が簡単に自由契約になるようなプレーヤーとは思えなかったからである。確かに最近2年間は故障で不本意な成績に終わっていたものの、もともと98年にはパ・リーグの新人王に輝き、2002年には打率.314でベストナインにも選ばれ、また外野手として最多連続守備機会無失策のパ・リーグ記録も持っており、ゴールデングラブにも選ばれている。俊足の左打者で、今年で30歳という年齢を考えても、自由契約にするような選手ではない
そもそも解雇が発表された時点で、伊東監督がフロントへの不満を口にしていたのだから、どのような意思決定がなされたのかも不明である。
これは選手会が毎年球団側に申し入れている問題だが、戦力外通告の時期が遅かったために他球団のテストを受けるタイミングも逸するケースが毎年必ず見られる。小関の場合も、球団側の通告が遅かった観が否めない。他球団への打診もきちんと行なわれていたのか、はなはだ疑わしい。でなければ、小関ほどの選手にまったく声がかからないということも考えられない。
ブリュワーズへの昇格の可能性だが、ロサンゼルスでの公開テストで守備範囲の広さを見込まれたというから、選手層の問題を考えても可能性は60~70%ぐらいあるのではないだろうか。

ライオンズについては以前にもこのブログで取り上げたが、所沢移転当時は坂井保之球団代表と根本陸夫監督・球団管理部長のコンビを中心に「プロのフロント」で運営され、80年代から90年代にかけての黄金時代を築いた。しかし、坂井氏、根本氏が相次いでチームを去った後は、他球団と同じような親会社からの天下り人事でフロントが運営されており、今回の小関の問題もそうした弊害の一端であるといえるだろう。現在の球団代表は元冬季五輪メダリストではあるが、あくまでも本職はコクドの社員であり、ベースボールのプロフェッショナルではない。彼や球団社長にどれだけ小関の能力を判断する「眼」があったのかも疑問である。
この前から当blogで槍玉に挙げているT大出身の元プロ投手K氏などは、盛んに「日本プロ野球がメジャーのファームと化している」と叫んでいるが、こうした不可解な人事をやらかすフロントが入る球団では「ファーム」の役割も果たせない。というよりも、無能なファームのフロントは即座にクビを飛ばされる。
また西武本社社長が記者会見で語っていた球団名に「埼玉」か「所沢」を入れる問題も、いつの間にか沙汰やみになってしまったようだ。「東京ヤクルト」への変更をとっとと決めたスワローズとは対照的である。

同じことをしつこくしつこく書くが、去年、西口が西武ドームで9回をパーフェクトに抑えながら、10回表に沖原にヒットを打たれて大記録を逃したとき、スタンディングオベーションもできなかったファンしか集まらないチームであり、球場である。そんな寒々しい観戦環境を作ってしまったのは、チーム作りの確固たるポリシーも持たない「天下りフロント」であることは明白である。
そんな連中の無能さを白日の下にさらす意味でも、小関の新天地における成功を心から祈りたい。彼のブリュワーズ入り実現は、彼と同じような「犠牲者」を出さないためにも重要なことなのだ。


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