旅程は7日間ですが、実質的に最終日。今日はアンコールトム見学の後、夜の便でベトナムホーチミン乗り換えで関空へ帰ります。
朝一から遺跡観光ではなく、JASA(日本国政府アンコール遺跡救済チーム)事務所へ。ここは日本のODA事業としてアンコール遺跡登録当初から遺跡群の保存や修復などの事業に協力している組織です。
日本人の若い女性が設置パネルを使ってプレアンコール期からの時代と遺跡群との関連などを説明してくれました。専門家なのかと聞いてみたら関西の大学の教育学部のインターン研修で数か月派遣されているとのこと。家内が聞いたところでは出身は枚方で今後出身の枚方の小学校で教育実習を予定しているそうです。学生時代にこういう経験ができるのは素晴らしい事ですね。
次に今日の目的地アンコールトムの南大門へ、人面塔が印象的。
さらにアンコールトムへ入り、有名なバイヨン寺院の前まで行くと掘っ立て小屋のような事務所前へ。今日はなんとJASAの技術員からバイヨンの説明をしてもらえるとのこと。この方は1980年にカンボジアから日本に渡り、小学校から大学まで日本の学校に通い、早稲田を卒業してから日本政府のこの支援事業に参加したそうです。時期からするとポルポト政権の「知識人刈り」にあって、家族とともに日本に脱出したと思われます(実際にお父さんは医師で犠牲になったそうです)。
その後、日本はカンボジアに対して正常な選挙の実施やインフラ整備、遺跡群の維持改修などで多大な貢献をしていますが、こういう事業の中で祖国の発展に貢献できることは本人にとってとてもやりがいのある仕事でしょう。
日本とともに当初から遺跡群復興の支援活動をしているフランスとの考え方の違いなど、遺跡修復に関する裏話なども話してくれました。
フランスの場合はかなり大雑把なようです。必要以上に復元する必要はなく、現状維持(修復)が基本とのこと。崩れかけた石も近くにほったらかしにされているそうです。修復も見えないところまでは配慮せず、平気でコンクリートによる修復などもやっているとのこと。
一方で日本の考え方は法隆寺の改修や地震崩壊の熊本城の復旧などの考え方と一致しており、まずは現状の記録や分析をち密に行い、石のそれぞれに番号を打ち精密な記録図面を作成。復元についても当時と同じ材料を用いて極力当時の手法に基づいて材料を調達している。現実に石の切り出しも手作業で一個一個切り出し、組む時も当時の独特の手法で組み上げているとのこと。また土台部分の石組みの内側には砂が詰められているそうですが、フランスなどは安易にコンクリートで固めたりしているそうです。これだと経年で水に浸蝕されたりしますが、日本は昔の土間に使った「三和土(たたき)」の技術を応用して経年でも傷みの少ない補修をしています。
加えて支援事業の目的の一つに人材の育成があり、最終的にはカンボジア独自の力で遺跡群の管理ができるようになることが目的です。現在では13か国が遺跡関連の支援に参加しているそうですが、国によってその考え方はばらばらのようですが、やはり日本はち密で生真面目な性格そのものの考え方です。
ODAの縮小に寄り日本人スタッフの派遣は現在一人だけとのことですが、実際にはカンボジアの人々の手に寄り事業が進められており、人材育成の目的もある程度達成されているようです。
実際に案内して説明してもらいます。
さすがに専門家だけ会って写真を撮るベストポイントで案内してくれます。塔上部の崩壊はありますが、アンコール遺跡の中でも有名なバイヨン寺院はまるで岩山のような迫力があります。
「アンコールワットはシャープな線で構成された肉薄の作品で、バイヨンは手書きの線で構成された肉厚の作品」と言われているそうです。
JASAが実際に修復を進めている区域だそうです。独特の蛇神の手すりが印象的です。
東側からのベストポイント、バイヨンの特徴である観音菩薩と言われる人面を4面に刻んだ塔がよくわかります。
バイヨンの壁面や回廊のいたるところに詳細なレリーフが彫られいますが、あちこちで専門家ならではの説明をしていただきました(ほとんど覚えていませんが・・・)。
日本であればこの時代には文書での記録がかなりあるのですが、カンボジニアには文書記録がほとんどないそうです。あとの時代に廃棄や焼却されたこともありますが、もともと文字を読み書きできる人は限られておりそういう文化ではなかったようです。数少ない文字の記録は寺院の壁面などに残っています。
観音菩薩の表情は一つ一つ違います。
たっぷり時間をかけて説明してもらい(時には立ち入り禁止のロープの中まで入れてもらい)、バイヨンの北側に出て技術員の方とお別れしました。専門家ならではの話を沢山聞けて本当に貴重な体験でした。
バイヨンはアンクルトムのほぼ中央に位置しますが、広大なアンクルトムの中にはほかにもたくさんの遺跡があります。
バイヨンの北側にある王宮後の寺院ピミヤナカス。これで極規模の小さな寺院とのこと。
さらに象のテラス、ライ王のテラスなどを見学。天気も良く少々熱くばて気味です。
これで遺跡見学は終わり、昼食をしてからホテルへ帰りました。
15時にチェックアウトして地元の人も通うオールドマーケットへ。野菜、魚、肉はもちろん衣料品や宝石、時計、土産物などあらゆるものがあります。商品に値札はついておらず、旅人が買い物するには少々勇気がいります。ガイドさんも「まずは半値から・・・」と。
中にはこんなものまで、コブラ酒のようです。いずこも同じですね。
最後の食事は鍋料理でした。具だくさんでとても食べきれない量でした。
今回のツアーは意図したわけではありませんが、ベトナム航空とANAの提携便で基本的にビジネスクラス利用でした。日本から5時間ほどととそんなに長いフライトではありませんが、帰りの深夜便など横になれるので楽でした(早朝について車を運転して帰るので大違い)。そのうえ各空港でラウンジを利用できるので食事ができたり、待ち時間をつぶすのにも便利ですね。周りを見るとツアーメンバー以外はビジネスを利用している人は少ないので席を埋めるためにも比較的安価でツアー会社に提供しているのだと思います。わざわざ正規の高い差額を払ってまで乗る気はしませんがこういうツアーもいいです。
普通のツアーと比べると少し高めかなとは思いましたが、ホテルの質も高くフォローやツアー内容もレベルが高く満足いく旅となりました。ベトナムやタイなど最近はリピーターが多く個人で手配していく人も多いようですが、これだけの観光地の移動やホテルの手配など考えるとやはりツアーは便利です。次はハノイやホーチミンなどポイントを絞って周辺を旅してみたいと思います。