台風一過の昨日の横浜は約一ヶ月ぶりに最高気温が30度を下回り大変過ごしやすい一日でした。頬を撫でる港の風も心地好く、ようやく暦の上だけでなく身体でも秋を感じることができました。明日からまた残暑がぶり返すようですが、その後はゆるゆると穏やかな陽気になってゆくそうです。
そんな爽やかな秋晴れの一日に白井さんが選ばれた服は、今期新たにワードローブに加えられた綺麗な深緑のジャケット。
『新しいから少しいじめてやらないとね。』
なるほど“いじめる”かぁ~(笑)。これまた独特な表現!
今回のコーディネートは白井さんがお好きな組み合わせ“Green & Blue”。ジャケットの緑とイングリッシュタブカラーシャツの青、いずれも上質な生地が用いられているので発色が良く、そのコントラストは目に鮮やかに写ります。縞のタイはジャケットから、チーフはシャツから、それぞれ色を拾い“初秋の清涼感”を感じる装いです。
靴は金茶の柔らかな色合いが殊に美しいスウェードのキャップトウ。細部に至るまで白井さんが細かく指定して作製された一足ですので、色のみならずその形も思わず溜息が出るほどの晴らしい靴です。靴下にはジャケットとほぼ同色の深緑を。
いずれの品も匠の技で仕立てたベーシックなフォルムに上質な素材を纏わせたシンプルなもの。しかし最も大切なのはそれらを着こなすこと。長年の経験から導き出された組み合わせの妙がキラリと個性を主張する、それが“白井流”・・・ですね!
さて、白井さんがお手に取られている傘は、傘は傘でも“Umbrella”ではなくて“Parasol”、つまり“日傘”。それも白井さんの為に作られた暦とした“紳士用の日傘”なのです。
私は昨年の夏、この日傘を白井さんに見せていただいたのですが、“紳士用の日傘”というもの珍しさもさることながら、ほとんど芸術品と云っていいまでの完璧な美しさは私の脳裏に鮮烈に焼きついていて、この項を始めた際も“是非、真夏の盛りに麻のスリーピースと一緒に写真に収めてみたい!”と心中密かに企画していたにもかかわらず、その麻のスリーピースを拝見した際は白井さんの着こなしの素晴らしさに唯々心奪われてしまい、日傘のことはすっかり忘れてしまった(汗)、という経緯があり、些か旬を過ぎてしまいましたが、夏が終わってしまう前にこれだけは何としてもご紹介したい!という私のわがまま企画です、今回は(長い・・・汗)。
張りは支那絹紬(けんちゅう・・・柞蚕糸(さくさんし)で織った薄地の平織物。淡褐色を帯びて節がある。布団・洋傘・衣服などに用いる。)。マラッカ(籐)の柄にシャンクは樫、石突は水牛。骨は英国の古の老舗スティールメーカー、S.FOX社製。裏地の緑にもご注目を!!
この項をご愛読いただいてる方ならどちらの日傘かはもうお判りでしょう(笑)。以前にもご紹介させていただいた、今はなき元町の洋傘職人・小島さん製作のまこと美しき日傘です。
白井さんは、
『昔は本当にお洒落な人が多かったんだろうね~。この日傘を差して13本柾目の桐の下駄履いてちょっとぶらり、なんてのは洒落てるだろうね~(笑)。』
と仰りながら傘を丁寧に丁寧に巻き直し仕舞われていました。