昨日から、ずっと旅に行く前の期待。そして実際に行った時の感情のことを考えている。これは生き甲斐の心理学で学ぶ、二つの幸福(幸福の条件と幸福感)の応用問題のようだ。実際に行く前の頭の中でつくったアイデアと情動も含めての期待。そして実際に現地に行き沸き起こった感情。
感情は理想と現実のギャップから湧き起るというが、実際は意識の世界と無意識の世界があるので、実際に湧き起る感情は①意識された理想と意識された現実のギャップ②無意識の理想と意識された現実のギャップ③意識された理想と無意識の現実のギャップ④無意識の理想と無意識の現実のギャップということになる。結構複雑なので、期待=理想と現実の感情=感動に着目するだけで、旅の意味を考える上で充分なようだ。
最近行った遠野。
この時の期待の一つは、遠野で(できればデンデラ野で)満月を観るということがあった。そして、殆ど遠野を巡り終わった二日目の晩に午後9時を過ぎてみえた十六夜の月。何とも言えず感動した。都会の月とは違い、闇が深く月は輝きを取り戻していたように思う。さらに旅館の近くの猿ケ石川の支流の川面に映る月。とても神秘的であった。期待が現実になった平安感。共に旅し月を眺める同志?との連帯感。神秘の世界を垣間見るような不安。さまざまな感情の要素からなっていたのだろう。しかし、感情は自分の真実である。これは月以上だった。
そして、もう一つ昨年行ったウィーン。
あの時の期待の一つは、フロイトが住んだウィーンを訪れたいということだった。そしてウィーン大学のフロイト像とかフロイト記念館に行くことを計画した。実際に行ってみて、フロイト像をやっと見つけ、その前でフロイト像をじっと見つめている大学生の姿に変に感動した。また、記念館でフロイトの使った寝椅子の金属的な冷たさを感じたことも印象的だった。しかし、一番印象的だったのは、フロイトの住んでいた住居近くの急な坂で老女の電動車椅子が雪で難儀していたのを助けたことで。そのとき老女が手を振って感謝してくれたのが何とも嬉しかったことだ。フロイトもこんな町に住み、感謝されたりしたと。
旅への期待と実際の感情。意識してみると、自分のことが少しばかり理解が進むようだ。
古今東西 5/10