先日も、東北で海を眺めたが、海の表情は日々刻々と変わるものだと思った。穏やかな海からは想像もつかない変化も・・・
それと、同じように日々の湧きおこる感情も刻々と変わる。静かな海もあれば、荒れ狂う海も。
そして、海を航行するときに羅針盤が必要なように、感情に関しても羅針盤のようなものが必要だと思う。ところが、我々は幼いころから、感情を抑えろなど、いろいろしつけをされたり教育を受けたりするが、羅針盤になるような知識を意外に持っていない。それは、羅針盤なしに漂流している船のようではないだろうか。
臨床心理学の世界は、欧米でこの約100年の間で多くの研究がすすんだ。同じこころの世界を扱う宗教や哲学が数千年の歴史をもっているので、或る意味ではごく最近の知識で、ちょっと頼りないが、やはり現代に生きる私たちにとっては役に立つと思う。
さて、先日テレビを観ていたら、ある有名人が「感情は理性でコントロールすべき。」と発言していた。確かに間違いではないかもしれないが、その言葉、発言を実際の生活のためにどう応用するのか何も語らなかった。一般の視聴者は、これで何となく納得するのだろうか?わたしは心理学を勉強しているのか違和感を感じた。もう少し親切に感情についての知識を説明したらと思った。
「生き甲斐の心理学」で、感情についていろいろ学ぶことができるが、大切なことを少しお話してみたい。特に心と心をつなぐ上でも大切な知識。
湧きおこる感情はいろいろある。ただ、普通殆どの人はあまり考えないものだ。試しに、自分が経験した感情はどんなものか10分くらいの時間を区切って、書いてみてみよう。私も、かつて自分の感情について書き出してみて、百も二百もあるかなと思った感情が書けないことに気付いた。さて、心理学者はいろいろ感情を研究しているが、「生き甲斐の心理学」の心理学で普通に使っているのは次の10種類である。そして、この種類と関係を知っておくだけで、感情の羅針盤に十分になる。
<幸福曲線> <ストレス曲線>
統御感 錯乱
幸福感 ウツ状態
健康感 身体的症状
友好的感情 怒り
平安感 不安
簡単に解説をしてみよう。一つは、何か解決できない悩みをもつと、ストレスが増大していく。それが縦軸となり、通常、不安ー怒りー身体症状ーウツ状態ー錯乱のように感情の階段を上っていくものである。この知識だけでもこころの健康にとても役立つ。今自分がどの段階にいるかが判ってくるだけでも助かるものだ。因みに、日常生活の中では不安ー怒りまでは健康の範囲だが体調が悪くなったり、ウツ状態になったりすると自分だけでは解決できなくなっているサインと見ることができる。
もうひとつは、左側の明るい感情。これも階段状になっているが、もうひとつは右の暗い感情と対になっている点が大切だ。例えば、友好的感情は怒りとペアである。人間関係で友好的感情が湧いていても、何かの拍子で怒りに変わったする(その反対も当然ある)。或る意味で同質なのだ。そこで、私は、怒りの感情が湧くと、一つの羅針盤の知見として、友好的感情に変わるように理性を働かせろ・・・というサインと取るようにしている。この応用はいろいろ考えられるが。
親しい間柄の人たちと、どう感情を活かしていくか。この感情の知識は大切だと思う。
親しい間柄。例えば、私の父はもう20年前に亡くなったが、父との感情生活はどうだったろう。恐らく、この10の感情の全部を経験したように思う。親しい関係は愛憎の感情の世界なのである。昨日引用したALWAYS三丁目の夕日’64でも、父と子の葛藤の話があったが、倫理道徳を離れて感情はいろいろ湧くものだと思った。
しかし、こんな感情を抱くこと自体、情けないと思うのではなく、その感情から真実の自分の声を聴き、理性を働かせる。それが大切だと思う。
心と心をつなぐ 3/10