貧乏石好き

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カルサイト・アラゴナイト問題[おべんきょノート]

2021-12-18 20:42:10 | おべんきょノート

今さら言うまでもなく、炭酸カルシウム鉱物には主にカルサイトとアラゴナイトの2種がある。この違いが面白い。

まずは元となるカルシウム。これがめんどくさい。

・地殻には3.6%ほどのカルシウムが含まれており、これは構成成分比で第5位である。
・海水中には硫酸カルシウム3.60%、炭酸カルシウムが0.34%が含まれており、これはナトリウム、マグネシウムに次ぎ第3位。
・海水中の炭酸カルシウムは自然沈殿と貝・サンゴなどの遺骸によって地殻中に戻る。
・カルシウムを含む鉱物は多い。ウィキペディアの「カルシウム鉱物」で71種が挙げられている。蛍石(フローライト、CaF)、石膏(ジプサム、CaSO4、セレナイトやアラバスター)、燐灰石(アパタイト、Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)1)はカルシウムを単独塩基とする著名な鉱物。

まあ要するに、すごく多いんですわ。(めんどい割りにそれが結論かい?)

で、さらにめんどいカルサイト・アラゴナイト問題。
・カルサイト(方解石)は六方晶系、アラゴナイトは直方晶系(旧称斜方晶系)。
・一般的にアラゴナイトは高温高圧、カルサイトは低温低圧で形成される。通常環境ではアラゴナイトは徐々にカルサイトに変化していく。
・海水の炭酸カルシウムが自然沈殿や貝など海洋生物の遺骸として地殻に取り込まれる際には、カルサイト・アラゴナイトの両方の形を取る。
・貝は、どちらか一方だけで骨格を形成するものもあれば、両方を部分的に使い分けるものもある。なぜそんなふうになっているのかは不明。何じゃこりゃ。
・海洋沈殿性の炭酸カルシウムは、海水温が高く、マグネシウム濃度が高いほど、アラゴナイトに傾く。この「カルサイト・アラゴナイト」の比は、地球史上で周期的に変動しており、現在は「アラゴナイト海」である。この理由も不明。
*このあたりのことは、東京大学 大気海洋研究所参照。

・日本のある海岸には、波打ち際の岩の隙間にアラゴナイトの結晶が形成されている場所がある。海水揮発性ということになるけれども、なぜアラゴナイトなのか、そこだけなのかは不明。
・生物由来である一般的な堆積性石灰岩にはカルサイト・アラゴナイト両方が含まれる。
・堆積性石灰岩がマグマによって熱変成して結晶を含む岩石になったものが「大理石」。これがどちらも含むのかどうかは不明。
・地殻中のカルシウムが雨水・温泉水などで溶出し、地上条件下で再結晶したものが、鍾乳石、石灰華など。トルコのパムッカレは温泉水の沈殿で有名。これは現在でも人間が観察可能な速度で進行している。これも両方なのか、不明。鍾乳石はアラゴナイトだという人もいれば、カルサイトだという人もいる。
・なお、「山サンゴ」と呼ばれるものには2種類あって、
①宝石市場で売られているものは、トクサヤギというサンゴを着色したもの。こちら参照。
②鉱物標本としての山サンゴは、大きく分けて2つある。1つは海のサンゴ状に結晶が発達したアラゴナイト。晶洞内、あるいは鍾乳洞などで形成されたものか。もう1つはくねくねとした管状のアラゴナイトで、生成過程は不明。「裂罅空洞内の減圧のため、ゲル状の炭酸カルシウムが、小孔から引っ張り出された結果」という仮説がある。。

なんかいろいろはっきりしない。まあ、いちいちカルサイトかアラゴナイトかを弁別したところで何か利益があるわけでもないから、誰もやらないのでしょうね。


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