貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

磨き石讃

2022-06-19 10:06:37 | 漫筆

石の美へのアプローチはいくつもあるようでして。
宝石が代表するように、色と輝きを求める道。まあ非常に正統的なものかも。
もう一方に、石の生成の姿を見せている母岩付き標本を愛でる道もある。玄人っぽい感じ。
さらには両方を求めて、母岩付きの美結晶を、という道もある。おお贅沢。今はツイッターなんかでもこういうのが主流のような感じ。皆様、審美眼も経済力もえらくハイレベル。すごいものです。
あちきはどれも好きです。どれかに絞れないからコレクションがとっ散らかって困る。いや困ってはいない。(まあカオスだね)

それらに比して、「磨き石」、特に不透明なものを愛でるのは、少しマイナーっぽい感じがある。タンブルにせよ、丸玉やエッグにせよ、ビーズやカボッションにせよ。
宝石派からは「キラキラしてないじゃない」と言われ、標本派からは「半人工物じゃないの」と言われ。
まあそう言われればそうかもしれませんけど。
でも、あちきはけっこう好きなのですね。不透明磨き石。比較的安いし。(それかよw)

石集めをしようと思い立って(とんだ踏み外しかな?)、一番最初に買った石が、前にも書きましたけど、アズライトの卵型磨き石。とても心惹かれたし、今も見るたびに不思議な気持ちになる石です。

確かに不透明な磨き石というのは、キラキラして澄んだ色をしていないし、母岩付き標本のように石の本来的な姿もとどめていない。
けれど、それがゆえに、そこに、「石そのものの存在的質感」とでもいうものが、現れている。


ムーカイト


ブラウンオパール


ラルビカイト

宝石系だと色や輝きに主眼が行く。石の組成や生成過程なんかはどうでもいい。その澄んだ色、きらめく光が第一になる。
原石派だと石の鉱物学的知見に気を取られる。これは稀少元素がどうたら、スカルンやらペグマタイトがどうたら、と考えざるを得ない。
けれど、磨き石だと、そういうものはあんまりない。ただそこに、加工されて、ぽんとある。それがゆえに、逆に石そのものの、質感・存在感といったものが浮き彫りになる。ような気がする。
いや、うまく言えないな。滑らかに磨かれた石の持つ、何か特別な存在感。
あちきらのまわりは、金属だのプラスチックだの木だの紙だのといったもので占められている。そうではない、何かどっしりした物質性、凝縮された色と密度が、丸みを帯びた滑らかな肌合いをもってそこにある。その不思議。
あるいは、普段は粗野で鈍重なものである石が、思わぬ変身を遂げて、本来持っている繊細な色と質感を表し出している。その不思議。
小さい頃、海辺や河原で、丸く艶々と磨かれた石を見つけると、妙に嬉しかった。そんな経験は誰もが持っているのではないでしょうかね。珍しいからというだけでなく、その色と艶の不思議さに、魅了されたのではないか。きれいな石を見つけてきて、せっせと磨いて、床の間に飾る、なんてことは、昔は誰もがやっていたなのではないか。子供たちの机の引き出しには、つるつるの石が入っていたのではないか。
何かそんな、とても原初的な嗜好が、磨かれた不透明石にはあるような気がするのですねえ。

     *     *     *

前にネットでカヴァンサイトの磨き石を見た時、「カヴァンサイトを磨いてどうする」と思ったのですけど、この前、原宿さんに行ったら、妙に色鮮やかな磨きタンブルがある。よくよく見るとカヴァンサイト。えらく心惹かれて、ほんの少しお高めだったけど買ったのです。

カヴァンサイトの青がとても美しく出ている。共生の沸石との色の取り合わせも素晴らしい。ちょっと七宝細工を思わせる。
こういう美は磨き石ならではのものですねえ。

そう言えば、原宿さんは磨き石中心。けっこう歴史あるお店であって、もしかすると少し前までは、天然石愛玩は磨き石が中心だったのではないかという推量が湧いた。もちろん原石標本マニアというのはずっといただろうけれど、磨き石を楽しむ人は多くて、「母岩付き美結晶」という贅沢派が増えたのは最近ではないだろうか。とちょっと疑った次第。違うかな。

    *     *     *

磨き石のもう一つの良さは、握って楽しむということ。
しかるべき大きさで、ずっしりした質感で、つるつる、ないし少しざらざらを残した触感。そして冷たさ。なんか落ち着きますよね。
色や模様を楽しみつつ、その色・模様が生まれてくる物質の神妙な造化を味わう。これがいいんですな。ルースや繊細な結晶ではこういう楽しみはない。
パワーももらえるかもしれない。

これ、プレセリー・ブルーストーンの磨き石。前に原石は掲載したのですけど、その後、あまり高くなく出ていたのを見つけて購入。なんかパワーがありそうに感じたので、握れるのが欲しくなって。
で、これ、ちょっと逸話があって、過日、高尾山に遊びに行きまして、登りはリフトだったのですけど、よしゃいいのに、下りは歩いた。(年寄りの冷や水乙w) けっこう大変な道でした。「こりゃ明日はばりばりの筋肉痛だな」と思って、その晩、ちょっと遊び心でこれを枕の下に入れて寝たのです。そしたら、唖然。次の朝、全然筋肉痛がない。ありえん。まあ、この石のおかげと断言はできませんけど。


まあ好き好きですけど。「石は滑らかに磨いた時に妙な魅力を持つ」ということは確かだと思うのですね。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿