貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

天川産ペロブスカイト

2024-07-07 10:26:16 | ややレア

ずっと探していた石に出会いました。意外なことに国産もの。
ペロブスカイト。灰チタン石。CaTiO3。
ありそうで、ない。エヌズさんにも Vec さんにもない。一時パフェさんが出していたようですけどもうない。
それが先日、ヤフオクで出て、何とか落札。それほど高くならずに済んだのは幸い。微小結晶ですけど。
奈良県天川村洞川五代松鉱山産。
《八面体結晶をしています。五代松鉱山では磁鉄鉱は12面体結晶ですので、区別出来ます。》とのこと。



なかなか渋ーいですな。

ペロブスカイトは話題の石。
太陽光発電の新しいテクノロジーに必須だとか。
また地球のマントル下部はこれでできているとか。
けれど、それらはこのペロブスカイトでは、全然、ない。
マントル上部下層が「スピネル」だと言われるのと同じように、マントル下部のペロブスカイトは「相」の名前。鉱物の名前ではない。スピネル相がスピネルでできているわけではないし、ペロブスカイト相がペロブスカイトでできているわけではない。
太陽光発電のほうも同じで、問題なのはペロブスカイト構造の結晶であって、ペロブスカイト自体ではない。
何じゃそりゃ? ですわな。
鉱物の名前というのは、もともとはある組成から成る、ある結晶構造のものを指していたはず。ところが最近の鉱物学では組成元素はどうでもよくて結晶構造で名前を決める傾向が強くなっている。
たとえばガーネットは、(鉄/マグネシウム/マンガン/カルシウム)+アルミ+SiO3 の鉱物を言うのではなくて、X3Y2Z3 の結晶構造を持つ鉱物を指す、というふうに。
元素主義から構造主義に変わったと言えるかも。何となく元素=実在主義は古くてださくて構造主義は新しくてかっこいい、と皆が思ってるからかもしれない。(まさか)
で、鉱物のペロブスカイト=灰チタン石と同じ構造を持つものをペロブスカイトと呼び、鉱物のスピネル=尖晶石と同じ構造を持つものをスピネルと呼ぶ。ええええ? まあ厳密には「相」を付けているけど。
「分けろよ」とド素人は思う。いや、こういうことをしているから地球科学者ですら「マントルはスピネルでできている」なんて書いてしまうケースも出てくる。
と一介のオジジが文句を言っても仕方がない。

そもそもさ、マントルなんて、見ることもそのままの姿で採取することもできないものでしょ。スピネル相とかペロブスカイト相とか言っているのも、あくまで地震波などの観測データから理論的に推定しているだけで、そこにほんとに何がどういう姿であるのかはわかっていないわけでしょ。むちゃくちゃ高温高圧だし。
それを「スピネルです」「ペロブスカイトです」と言ってしまうのは少し言語的に無神経過ぎませんかね。
マントルや核は、人間には絶対知ることができないもの。遠い宇宙よりも全然不可能。いくら計算しても、「事実」はわからない。そういう仮想のものにはもっとファンタジックな特別な名前をつけたほうがはるかにいいのではないですかね。漉し餡とか粒餡とか。(どこがファンタジックじゃい)

さて与太はともかく。(与太かよ)
これはペロブスカイトですけど、マントル下部のペロブスカイトが噴き出してきたわけではありません。それはあり得ないし、そんなものが出てきても灰チタン石成分にはならないでしょう。
カルシウムとチタンと珪酸がおそらく熱水の中で結合したものでしょう。ちなみにペリドットの美しい結晶なんかも、ほとんどはマントル橄欖岩が噴き出したのではなく熱水の中で改めて結晶したもの。のはず。
でもね、やっぱりペロブスカイトはペロブスカイトなんですわな。この石の構造は、地球の秘密の一端を明かしてくれるものなのかもしれない。ナノテクノロジーの観点からも特殊なものなのかもしれない。
そう思って眺めると、実にありがたーい石のように思えて来るではありませんか。え? 来ない?
まあいいんです。ともかくレアストーンなのだわ。えへん。


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