飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

(続) 連載小説「幸福の木」 285話 究極の恋人とは?

2021-11-14 16:09:03 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや、寒くなりました。ウチの先生の古民家の中は今朝は9度でした。
もちろん、もうファンヒーターやエアコンは使用中です。
そうそう、このブログの前回の更新、日付を見てください!
「わーっ、何ってことだ、1が11個も並んでいる!」
とウチの先生が大喜びでした。
2021念11月11日11時11分11秒で1が11個並んでいました。
これは偶然、意図的には不可能でしょう、ウチの先生はもう得意満面です、「だーから、どうした?」って言ってやりました、はい、心の中でです。
はい、藤井棋士も勝って四冠、あとはメジャーの大谷、嬉しいニュースが続きます。
はい、てな訳で、原稿が届きましたので、早速、小説に参りまーす、はい、では、開幕開幕!

285 究極の恋人とは?

のどかな春のような日が続いていた。
やはりここは天国だ、!と皆は感じていた。
木花咲姫の先導でハナや太郎達の旅の一行はハイキングのような気分で歩いていた。
あの子猫はもういなかった。
時々、走り出して皆を煩わせた事も、今は懐かしく思い出した。
皆の心配のひとつだった子猫の事は解決した。
残る心配事は、相変わらず周囲をキョロキョロ見回して遠くの女性達に熱い視線を送っている太郎だった。
一番後ろで皆を見守っていた侍女は、そんな太郎の様子を見て気の毒に思った。
(ああ、かわいそう!太郎さんが恋する気持ちも、あの子猫が親を恋する気持ちも同じだわせつない想いには変わりないわ)
そんな侍女の哀れな眼差しなどに気づく太郎ではなかった。
一行はそんな調子で、太郎と末尾の侍女だけが遅れて歩いていた。
やがて、緑の木々の中に白亜の大きな丸い建物が見えてきた。
近づくと、それは周囲が円柱の代わりに内側に傾いた平状の柱で囲まれている立派な建物だった。
その柱は弓のように内側に反った曲線で、建物全体も優美な姿だった。
(ああ、何と優雅な姿の建物、いったいこれは何?)
皆は遠くから見上げながら心で思った。
すると、その心の声を聞いたのか、木花咲姫の説明の声が聞こえた。
「この美しい建物は、残念ながらわたくし達の目的の建物ではありません。なのでわたくし達は建物の中へ入ったりはせずに、近くを通るだけです。
せっかくですから説明させていただきますが、この美しい建物は、その優雅な姿が語っているように芸術の殿堂となっている建物です。
ここでは天国の中に有るあらゆる芸術の発表が行われています。
もちろん内部には大きな舞台もあって、そこでは皆さんもご存知の演劇や音楽や舞踊等の披露や発表が行われています」
ハナとハナナは驚きの眼で白亜の殿堂を見上げながら説明を聞いていたが、
「えっ、いったいどなたが演じるのですか?どう言う人達が観るのですか?」
と思わず疑問を口にした。
木花咲姫は、優しい笑顔で周囲を見渡しながら、
「はい、ここにいらっしゃる女神様方や神官や巫女さんや侍女さん方はもちろんですが、他にも天国に住んでいらっしゃる神様方や他の方々もわざわざ観劇にいらっしゃいます。その時は、この辺りも大勢の方々で賑やかになります」
と楽しそうに答えた。
その時、一番後ろで聞いていた太郎が、思わず、
「あっ、あの、あの、他の方々って、どんな人達が来るのですか?」
といつもに似合わぬ丁寧な言葉で尋ねた。
「どんな人達?・・そうですね・・天国と言っても広くて、ここのレムリアの女神の神殿だけではありません。もっと広くて、しかも奥深いところですから、それに神様や住んでおられる方々も様々で大勢いらっしゃいますから・・・さて、あなた方に分かりやすいように、どう説明しましょうかね、どこから説明いたしましょうかね?・・ちょっと難しいですね」
と木花咲姫が、少し困った顔になった。
そして、姫と皆の間に、少し気まずい雰囲気の沈黙が流れた。
「ワンワンワンワン!」
急にケンが吠え出した。
その声に後押しされたようにハナが言った。
「太郎兄ちゃん、あのさ、聞きたい事ははっきり言った方がいいわよ、何を知りたいのかをはっきり言うのよ、でないと・・本当は天国全体の事などどうでもいいんでしょ?、本当に知りたいのは・・」
とハナが遠慮がちな声で言い出そうとした。
すると、長老までが口を開いた。
「そうじゃ、太郎、聞きたい事は男らしくはっきり言うんじゃ、例えば、俺の理想の恋人に会いたいんですけどどうしたら会えるんでしょうか?とか・・」
すると修験者までが続けた。
「そうそう、そうじゃ、例えばじゃ、俺の理想の伴侶に会えると聞いたんだけど、本当でしょうか?とか、どうしたら会えるんでしょうか?とかな」
すると、それを聞いていたタタロまでが、
「そうそう、それに、赤い糸で結ばれている人にも会えるのでしょうか?とか、銀の糸で結ばれている人にも会えるのでしょうか?とかさ・・」
と言い出した。
すると満面怒りで我慢していた太郎が、とうとう爆発した。
「ちょっ、ちょっと待て、黙れ黙れ!これは俺の事だ、なんでお前達が言い出すんだ、うるさい、これは俺1人の問題だお前達には関係ないんだ、俺が一番聞きたい事は、どうしたら理想の恋人と言うかまだ見ぬ理想の伴侶に会えるかと言う事なんだ、お前達には関係ないから、黙って静かにしていろ!」
太郎の剣幕があまりにもひどかったので、皆は沈黙してしまった。
「ホホホホホ、ようやく本音が出てきましたね、はい、そう言う事でしたか?本当に聞きたい事や知りたい事はそう言う事でしたか、よかったです。
実は、あなた方はレムリアの人ではないので、私達が勝手に知恵を伝える事はできません。しかし、地上の人達から質問された事に答える事はできますが、質問されていない事を勝手に教えたりは許されていません。
これは、この世の主神が地上の人達の自由を尊重されているからなのです。
と言う訳で、あなた方の方から質問されましたので、わたくしのもお答えする事ができます。
それに質問の内容も難しくありません。
先ほど赤い糸で結ばれている人とか、銀の糸で結ばれている人とか言う話がありましたが、少し誤解していらっしゃるようですので、ここで訂正しておきましょう。
銀の糸とは、自分自身の肉体と心や霊体をつないでいる糸の事です。
よく霊体離脱とか言って魂や霊体が肉体を抜け出して他の場所へ行く事がありますが、その時には霊体と肉体がこの銀の糸でつながっているのです・・」
ここまで話を聞くと、突然ハナナが言い出した。
「あーっ想い出した!ほらっ、洞窟で薬草を飲んで皆で幽体離脱して、お婆さんが待つ宇宙へ行った時の事よ、あの時、あたい達、帰りに銀の糸を頼りに洞窟の肉体へ帰って来たわ、その銀の糸が切れると、もう再び肉体へもどれなくなるって脅されたわ」
すると、ハナも、
「ああ、そうだった、そうだったわ、あの時は銀の糸だったわ」
と思い出して合槌を打った。
「はい、よかったですね、銀の糸の事を思い出す事ができて、それで、今度は赤い糸の事ですけど、わたくし達は存じ上げてはおりません。
あなた方の話から想像しますには、おそらく地上の世界で夫婦になる方々の事を申しているのでしょう。
地上の世界で、若い男女がめぐり合って一目ぼれ等で恋に落ちて夫婦になりますが、その時にあなた方には、相手は目に見えない糸でつながっているように思われるので、きっと「赤い糸」と呼んだのでしょう、わたくしには、そんなふうに想われます」
太郎はいつもとは違ってずっと真剣に話を聞いていた。
「なーんだ、そう言う事か、赤い糸なんて実際には無いんだ」
と太郎がばかにしたように言った。
「いや、僕は、見えないだけで何かでつながっているんじゃないか?と思うよ」
とタタロが反論した。
「そうよ、初めて会ってビビッ!と一目ボレするって聞いた事があるけど、きっとそれよ、あたいは未だだけど」
とハナナも兄のタタロの意見に賛成した。
そして、同意を求めてハナに顔を向けた。
「でもさ、私の知ってる男の人は、美しい女性なら誰でも一目ボレをしているわ、ここでは誰とは言えないけど・・」
と首を振ってチラッと太郎を見た。
やがて長老も待っていたかのように言い出した。
「いや、ワシも美人なら誰でも一目ボレするし、美人ならすぐにでも夫婦になりたいのう、今もじゃ」
すると、負けずに隣の修験者も言い出した。
「いや、一目ボレしても、後で彼女の欠点なんかが見つかると恋も醒める事もある。よく祭りの夜はすごい美人に見えても、翌朝には別人のように見える事もある、いやいや誤解するなよ昔の話じゃ」
修験者の告白めいた話に、長老も、
「おお、それはそうじゃ、一目ボレは熱病みたいなものじゃからのう、恋が醒めると、どうして自分がホレたのかが理解できぬ事もある、やっぱり恋は熱病じゃ、いやいや、これは昔の事じゃ」
とテレ笑いしながら意見を変えた。
こうなると、まだ経験の少ないハナやハナナや太郎達は、一目ボレについて、恋や夫婦について、どう考えればいいのか迷っってしまった。
優しい眼差しで皆を見守っていた木花咲姫が、笑いながら
「ホホホホホ、恋や一目ボレや嫉妬など、男女の関係は難解ですね、なので地上の世界はとても魅力的なのでしょう。
さて、いきなりで少しあなた方には難しいかも知れませんが、一応、質問の内容なので、男女の関係や恋や夫婦について少しお話をしておきましょう。これからのあなた方の人生にもきっと役立つと想います。
あなた方は母親の体内から地上に産まれる時に、男子とか女子とか、必ず男女のどちらかに産まれてきますが、産まれる前の天国ではどちらでもないのです・・」
その言葉に、皆が驚いた。
「えっ、どちらでもないって?どう言う事?」
「はい、男でも女でもどちらでもないと言う事は、中性と言う意味ではありません。男性と女性の両方を兼ね備えている存在だったと言う事です」
「えっ、男と女の両方って????」
皆は唖然として言葉が無かった。
「はい、びっくりなさるのも無理ありません、これは地上の人達にはまだ明かされていない事で、産まれる前の天国の事ですので、あなた方が驚かれるのも当然です。
実は、あなた方は元々、産まれる前の天国では男と女の両方を持っていたのです。それが、地上に産まれるためにお母さんの体内で赤ん坊として生を受けた時には、あなた方の半身と言うか、半分しか赤ちゃんの体内に宿らなかったのです。残りの半身と言うか、半分は、そのまま天国に残って、地上に産まれたあなた方の自分の半身を見守っているのです」
「えーっ、半分なんて?そんな事は初耳じゃ、聞いた事もないわ」
長老達が怪訝な顔をした。
木花咲姫は、少し難しい顔になったが、
「もう少し詳しく話しましょう、その方が理解しやすいかも知れません。
地上に生まれる前の、天国に住んでいたあなた方には「四魂」と言って「勇」と「知」と「和」と「愛」と言う四つの魂が備わっていたのです。
「勇」と「知」は荒々しい男の性格を、「和」と「愛」は優しい女性の性格となります。
なので、あなた方が地上に産まれる時には、この「四魂」の半分の二魂を持って産まれ、残り二魂は天国にそのまま残してきたのです。
例えば、勇と知を持って地上に産まれれば男性的な性格になり、和と愛を持って産まれれば女性的な性格となります」
木花咲姫は、ここまでで話を止め、皆の理解の様子をながめた。
案の定、皆がしゃべり出した。
「えーっ、いろいろ出て来て、何だかややこしい話になってきたわ」
とハナナが言うと、長老もうなづいた。
「全くじゃ、ワシも話に付いて行くのに頭が割れそうじゃ」
するとタタロも、
「ああ、この世界って、そんなにややこしいのかな?もっと単純かと思っていた」
とつぶやきながら太郎を見た。
「ああ、俺の聞きたかった事って、何だったか忘れてしまった」
と太郎はぼやいていた。
その時、ゴクウとハナだけが、何か互いにうなづき合っていた。
修験者も話を理解できたのか、納得したような得意な顔でハナ達を見た。
「わたし、分かったわ!」
突然、ハナが大声で言った。
「つまりよ、太郎兄ちゃんの場合は、地上に生まれたのは「勇」と「知」の持った男性の半身なのよ、なのでいつも荒っぽくて理窟っぽいのよ。
そうなると天国に残っている太郎兄ちゃんの半身は「和」と「愛」を持った優しい愛情深い女性なのよ。もしかしたら、それが・・」
と言葉につまった。
すると、修験者が、
「そっ、そうじゃ、おそらく、そう言う事じゃ、それが太郎の理想の恋人や伴侶なのではないじゃろうか?」
と重大な発見をしたかのように身を乗り出して言った。
「・・・」
皆は沈黙した。
「あのさ、そんなんだったら、あたいの半身も天国に残っている事になるわ、しかもあたいの場合は男性の半身よ、えーっ!どんな男性かしら?何だかドキドキするわ」
とハナナは自分の言い出した言葉に動揺した。
「なんじゃ、そう言う事かい?そう言う事なら、ワシにも女性の半身が天国にいるはずじゃ、さて、どんな美人じゃろうか楽しみじゃ」
と長老までがからかうように喜んだ。
「・・・」
また皆が沈黙した。
「さあ、皆さん、少しは頭の整理ができたでしょうか?それでは」
と、木花咲姫が静かに話を始めた。

(つづく)

ハイハイハイハーイ、いやいや、話がかなりややこしくなりました、あまり聞かない分野の話です、さてさて、この先、どうなるやら?たぶん大丈夫でしょう、はい、メジャーの大谷選手の事です、はい、では、またのお運びを願いまして、バイバイでーす!