天の岩戸に隠れたのは、実は月だったのかもしれない。
黒いフィルムを通して見た月は、太陽と交わるように重なり合い、
纏う大気もないままに肌を灼熱にあぶられながら静かに静かに空にたゆっている。
雲間に流れながら寄り添う二つ、なんとも艶めいて、なんともエロティックでさえある。
さながら地球は、求めあう二つの星に恋焦がれる懸想人のようで。
夜、急にビールが呑みたくなったんで、ちゃっちゃと着替えて、コンビニまで車を飛ばした。
見上げても、厚い雨雲に空は覆われて、月があるのかないのかわからなかった。
月は昼に出ることができる。しかし、太陽は夜に出ることができない。
やはり、夜にお似合いなんだな。月は。
月は夜にこそ相応しい。


