厳しいビジネスの世界を生き残っていくために、企業はいろいろなチャレンジをしている。成功する企業もあれば、失敗に終わる企業もある。いや、ほとんどのトライアルは失敗するのだろうけど、どこかに成功を勝ち取る企業もあるといった方がいいだろう。そんなプロセスが生物の世界の進化の過程に重ねて見られることがある。弱肉強食の動物の世界は、まさに厳しいビジネスの世界のパラレルだといってもおかしくないだろう。
それでは、その生存競争の中でどうやったら生き残れるか。時に新たなマーケットを求め、新たなビジネスモデルを求め、さらには新技術に活路を見出して、企業は生き残りを図っていく。企業のリーダーは、進む道を分かりやすくかつしっかりと見極めて事業を展開していかなければならない。そのゴールへの道のりは、決してやさしいものではなく、とにかく我慢に我慢を重ねて、強い決意を持って立ち向かっていかねばならない・・・ということになっている。
他方、生物の世界で進化のプロセスについて初めて指摘したのは、言うまでもなくダーウィンである。ダーウィンはその著書「種の起源」の中で、多くの例を挙げて生物の進化について議論をした。
鳥が空を自由に飛べるのはなぜか?魚が水の中を泳げるのはなぜか?
もちろん、その答えが突然変異と適者生存というメカニズムであることは、今や常識となっている。しかし、この進化メカニズムで注意しなければいけないことがあることに気が付いた。(というか本に書いてあった。)例えば最終的にキリンの首が長くなることによって高い木から餌をとれるようになるために、最初は首の短い馬みたいな動物だったキリンの祖先が、突然変異でちょっとだけ首が長くなったとする。そのわずかな変化が、当のキリンの祖先にとって、以前より生存に有利に働いたはずであることに注意しよう。なぜなら、少しだけ首が長くなったことが、まったく生存で有利に働かないか、逆に生存に不利な要素だったとしたら、そういう動物は生き残ることができないことになるはずである。もしそうだとすると、首をすごく長くするという形質は、一足飛びには起こりようがないので、結局キリンという動物は存在しないことになってしまう。
ちょっとごちゃごちゃしてしまったが、要するに進化のそれぞれのステップで、突然変異によって生じた形質のわずかな変化は、その時点においても生存に有利でなくてはならないということが言いたいのである。首のすごく長いキリンという最終的な形質だけが生存に有利な訳ではない。もし、途中一回でも生存に不利な進化を遂げたならば、自然は容赦なく襲い掛かって、その種は絶滅への道を突き進むことになるのである。
ビジネスにおいても同じことが言えないだろうか。ビジネスを最終的に成功させ、繁栄を享受するために、ビジョンを描いて邁進する。しかし、その途中のプロセスを無視してはいけない。最終的なビジネスモデルに到達するまでの、それぞれのステップにおいても生物同様淘汰圧が社会からかかっていることを忘れてはいけないと思う。進化のためのわずかな変化が、企業の存在価値を少しでも高める方向に働かないと、結局最終形には到達できない。とすると、ビジネス構築の途中であっても安易な判断は命取りになるかもしれない。途中も最終形同様に大切なのである。
チャールズ・ダーウィン著、夏目大訳、「超訳 種の起源」、2012年、技術評論社
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