はなこのアンテナ@無知の知

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イスラム国に拘束された後藤氏の母親の会見

2015年01月23日 | 気になったニュース
 イスラム国によって湯川氏と共に拘束されたとされるジャーナリストの後藤氏。3日前にその映像がネットで公開され、その中でイスラム国は常識外れに高額な身代金を要求した。人質処刑のタイムリミットが迫る中、後藤氏のお母さんが、今、外国人特派員協会で記者会見を開いている。

 しかし、聞いていて、少し違和感が拭えない。論点がずれているような気がする。なぜ、ここで原子爆弾や原子力云々の話が出るのだろうか?まず、訴えるべきは、彼の1日も早い解放ではないのか?「神が造られたこの地球を原子力で破壊云々」は不要だと思う。逐次通訳者も、そこはプロだから無難にこなしてはいたけれど、論旨を整理して通訳するのは大変だったと思う。

 苗字が違うので、夫婦の離婚等で息子である後藤氏とは大分前に離別し、現在は疎遠なのだろうか?後藤氏の妻とも今回の件で初めて会話を交わしたと言うし、彼女の話を聞く限り、後藤氏の近況も正確に把握していないように思われる。

 息子の死の危険に頭が混乱し、しかも一般人で、大勢の人前で論理立てて話すことに慣れていないせいなのかもしれないが、せめて会見の前に準備した原稿を信頼できる誰かに読んで貰い、アドバイスして貰えなかったのだろうか?

 おそらく、海外で一斉に報道される段階では、編集された映像で、後藤氏救出を訴えた発言のみが切り取られた形で伝えられるとは思うが、会見を生放送で見た限りでは、彼女の切実な思いが、私には今ひとつ伝わって来なかった。

 NHKの情報番組「あさイチ」を見ている途中に、突然割り込みで入った生中継だったせいか、こちらも見る体勢が整っておらず、しかも突然中継映像はブチッと切られ、アナウンサーと解説委員と思しき2人が画面に登場して勝手に会見のまとめをして終了だったので、視聴者である私は、めまぐるしい展開とあっけない幕引きに否応なく振り回されたような、胸にモヤモヤとした違和感だけが残っている。

 何なんだ?このドタバタ…それだけ緊迫した状況と言うことなのかもしれないが…


 …なるほど、やはり支離滅裂な会見内容に、慌ててNHKは途中で中継を打ち切ったようだ。このお母さん、息子の命より、自分の信じるイデオロギーが大切らしい。何のための会見だったのか?子を想う母親としての情が感じられなかったのが、同じ母親として残念だし、悲しい。こんな会見で、世論が人質救出の方向でまとまるとは到底思えない。こんな会見なら、やるべきではなかったと思う。

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 先日、安倍首相の中東歴訪に関して危惧したことが、多少違う形ではあるが、現実のものとなって、私も複雑な心境である。拘束の事実は、首相歴訪から1~2カ月遡るとは言え、歴訪時の首相の発言が、イスラム国の日本敵視の口実に使われてしまったのだから。

 ジャーナリストの池上彰氏も指摘していたが、人質事件発覚後の、訪問地イスラエルで行われた記者会見で、杉浦千畝氏のユダヤ人救出の話の直後に人質事件に言及したのも、拙かったと思う。池上氏は「ユダヤ人の救出と人質事件の救出を同じ文脈で語ったのが拙かった」と言っていたが、一般視聴者である私でさえ違和感を覚えたのだから、もう自分達以外の存在に対して憎悪しかないイスラム国の人間は、首相ひいては日本国民をユダヤの手先として、さらに憎しみの感情を増幅させたことだろう(→"日本は親ユダヤで反イスラム国家であるからして、攻撃すべき対象である"と言うイスラム国家側の攻撃理由にお墨付きを与えた形?) 。或いは、とにかく"攻撃ありき"で、つけいる隙を与えた首相に対して、「飛んで火に入る夏の虫」とほくそ笑んだのか?

 おそらく、杉浦氏のエピソードは予めイスラエル向けに用意されていたもので、それにイスラム国による人質ビデオの公開を受けて、事件に対するコメントを後付けしたのだろう。それだけ首相サイドも慌てていたのだろうが(後藤氏拘束については昨年の時点で政府は把握していたようだが、このタイミングでのイスラム国によるビデオ公開は予想外の出来事だったのか?しかし、注目を浴びたいイスラム国からすれば、今回の首相の中東歴訪は願ってもないタイミングだったはず)、もう少し慎重に発言して欲しかった。

 日本政府はあらゆるチャンネルを使って、「日本の中東支援があくまでも人道支援であること」を訴えると言っているが、そんな言い分がイスラム国に通じるわけがない。人道支援すること自体が反イスラム国に対する後方支援だと彼らは受け取るだろうし、それ以前に彼らには論理もへったくれもなく非イスラム国は須く彼らの敵であり、さらにフランスのテロがイエメンのアルカイダの関与が疑われる中で、彼らに対する対抗意識もあっての今回の人質事件アピールなんだと思う。

 西欧社会もフランスのテロが自国に波及することに頭を痛めていて、その対策で頭がいっぱいだろうし、人質解放の仲介を頼まれた穏健派のイスラム諸国にしても、風刺画に対する自国民の怒りをコントロールすることだけでも大変なのに、果たしてどれだけの国々が日本の為に真剣に動いてくれるのだろう?さらに最悪のタイミングで、先程、イスラム教の聖地メッカを抱え、イスラム諸国の盟主とも言うべきサウジアラビアのアブドゥラ国王の死去が伝えられた。今後、中東地域は益々混迷の度を深めて行くのかもしれない。西欧諸国との繋がりも深かった彼の死が、世界に及ぼす影響も計り知れない。これから世界はどうなって行くのか?

 
 最初にノコノコと紛争地域に赴いた湯川氏、その救出に向かった後藤氏(←彼の人道主義は崇高で、尊敬に値する。しかし、彼がジャーナリストとして体験的に身につけた危険回避能力をもってしても防げない悪辣さが、イスラム国にはあるのだろう。それを見抜けなかった甘さ~多くの日本人の根底にあるであろう人間の性善を信じる思いが、悲しいけれど彼を窮地に追いやったと言えるのではないか?)、さらにフランスの風刺画に端を発した西欧諸国とイスラム世界の緊張状態の最中に大挙して中東訪問を行った日本政府、この三者に代表される(語弊があるかもしれないけれど) "平和ボケ"ぶりが、今回の事態を招いたと言われても仕方ないのかもしれない。

 国内にしてもけっして安全とは言えず、特に国のあらゆる機能が集中する東京と、米軍基地の集中する沖縄は、今後テロに注意が必要なのではないか?
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