氷河に特別な興味を持ったのは、1997年に出版された「アルプス・花と氷河の散歩道」(小野有五著・東京書籍)を読んでからだ。その2年前ヨーロッパアルプスで初めて間近に見た壮大な氷河に心を奪われ、アルプスに関するガイドブックや研究書を片端から読み漁っていた時にこの本に出会った。環境科学者である筆者の本が、単なる憧れの対象として見ていた私のアルプスに対する見方を変えた。「世界の山々」(古今書院)などを著している筆者は、世界各国の氷河を研究しまた環境問題に詳しい。フランス、スイス、オーストリアなどの氷河を訪ね、本の中にあったことを思い出しながら現実を見ると、単に景色の一部という見方では済まなくなった。今からほんの100数十年前(小氷期)まで氷河は前進していた。それがこの100年のうちに大きく後退をしている。旅の最後にルツェルンにある氷河公園を訪ねたとき、さらに詳しいパネルを見て思いを新たにした。環境問題が世界中で言われている今、氷河博物館と呼ぶに相応しいこの公園には是非足を運んでほしい。
オーバー・グリンデルワルト氷河の約100年前と現在の姿(氷河公園内の写真パネルから以下同じ)
グローサー・アレッチ氷河の100年前と現在の姿
ローヌ氷河の100年前と現在の姿
これらの氷河がいつまで氷河として存在していられるかは私達の努力にかかっている
クレッチャーガルテンの入り口 中にはこんな遊び心十分な鏡もあった