酷い暑さでした、東南の方角に入道雲が出てました。
師の句を思い出します・・・
峯雲や朱肉くろずむ村役場 土生重次
久しぶりに師の本を棚から取り出しました。
花神現代俳句 土生重次
句集、「定本・歴巡」「定本・扉」「定本・素足」から本集に収めてある。
昭和52年の作品で、歴巡に収めてある句です。
歴巡の序は野沢節子、その中からここに書き写します。
私が最初に土生重次氏の俳句に印象づけられたのは、
峯雲や朱肉くろずむ村役場 土生重次
であった、この句の「朱肉くろずむ」には村落の生活と歴史が見える。「峯雲」との照応の中に、村そのものの具体化を通して、作者の俳句への姿勢がはっきり感じられた。村役場を詠いながら、これは村人の句ではない。正しく都会人の眼であり、詩情である。
なぜ都会人の詩かというと、俳人の多くが、四季自然をその詩心の拠りどころにしているのに対して、自然よりも、社会現象や、社会生活の中から滲み出てくる感覚が主体をなし、自然はそれを助ける複媒材として登場してくるのである。この句にしても、より多く自然の循環の中で生きている村落の住人であったら、このような詠い方はしない。この句の裏には都会生活者というより、都会勤務者の悲哀や、虚無や、ペーソスが、そのエネルギーとともに、「朱肉くろずむ」を村役場の中に発見したのである。これに類する句はかなり多い。
・・・以下略、30句ほどを解説してあります。
掲句の載った頁より抜き出してみます
てんたう虫指輪なき子の指飾り
パンを選る童話模様の日覆に
炎天の尻から動く貨車の列
梵鐘の錆万緑にまぎれずに
今夜はちょっと嬉しい