土生重次ワールドにしばしお付き合いください
若楓木椅子のそろふレストラン
若楓の青く瑞々しさと漆黒というかややの茶の木椅子との照応でしょうか。
退きぎはの捨台詞めきはたた神
雷はもう鳴りやんだかなと思っていると最後にごろごろと来たのです。
石橋の反りをものかは道をしへ
道をしへはハンミョウですね、近づくとぱっと先へ先へと飛びます。ハンミョウと出会ったのが石橋の上、その反りなどお構いなく先へと・・・
すがるものなし急流の水すまし
水すましはゆっくりした流れだけで遊んではいません、かなり素早い動きで急流にもいます。
鉄骨が組まれ動けぬ雲の峰
もくもくと入道雲が出ているのですが、ちょうど建築中のビルのさきに見えたのです。動けぬと雲を捉えているのは・・・雲に自分を重ねているのでしょうか。
来し方の行く方も闇のこがね虫
夜デスクに向かっていると飛んできたりします。おや?この闇の中をどこから来たの?またどこへ行こうとしてるの?
正座ゆるがず夏足袋の指かさね
お茶の席でしょうか或は習い事の様子でしょうか。単に和とかいうのを越えた、心の姿勢を感じますね。
その中にむずかる声も蝉しぐれ
蝉しぐれの中にちょっと鳴き声が途切れ途切れになる声を聞いたのでしょう。それをむずがると言われますと、なんか憐みを掛けたくなる一匹だったのかもしれません。
茅舎忌のこぼれ酒もて書く一字
川端茅舎。七月十七日忌日。お好きなお酒をどこでしょうか?自宅かあるいは居酒屋のカウンターか、こぼれた酒で何を書かれたのでしょう。カッコいい!
昭和57年の夏の句から一部を書かせていただきました。