佐野洋子さんの最晩年のエッセイ「 役に立たない日々」
いつかこの本のこと書きたいと思っていました。
佐野さんは「百万回生きたねこ」などの絵本や沢山ののエッセイを残して
2010年に72才で乳がんのため亡くなられました。
本の内容は、2003年から2008年までの佐野さんの日常です。
自分の老いや呆けにあきれつつ、日々を淡々と、時に熱く、自然体で語っていて
途中の2004年に乳がんが発覚するのだけど
がんになったことも実にあっけらかんと書いています。
佐野さんのエッセイは佐野さんが谷川俊太郎さんと結婚されていた頃から
何冊か読んでいて、その頃から、そこそこそれって真理だよね~っていう
痛快な語り口が好きでした。
最晩年のこの本には あの頃とはずいぶん違うようでいて
やっぱり変わらず豪快で繊細でそして正直な佐野さんがいます。
私はこの本を二回読みました。
一回目は たぶん(笑)病気になる前の2010年頃
二回目は 一年くらい前、本好きのムスメに勧められて彼女に借りて。
前に読んだのをすっかり忘れていた私は
真夜中にひとり、同じ箇所を読んでクックと笑い
半分くらい読んだところで、オヤッ??と思い
前に読んだのをやっと思い出し ヒャッ!!っとなり
本棚に同じ本を見つけてドーッ と落ち込みました。
落ち込んだけど思いました。
何回も新鮮に笑えるなんて、なんて偉い本だ。( ちょっと言い訳 笑 )
岡本かの子は晩年「 いよよ華やぐ命なりけり」とうたった。~ ~ 華やがないこころになってしまうと気楽だなあ、あーもう男なんか真っ平だ。
( コーヒー屋で朝食を食べながら)
史上始めての長寿社会での私達は、生き方のモデルを持たずに暗闇を手探りしながら、どのような朝めしを食うかを開発せねばならない。
( 惚けてしまった母との会話)
「 母さん、私しゃ疲れてしまったよ。母さんも九十年生きたら疲れたよね。天国にいきたいね。一緒に行こうか。どこにあるんだろうね。」
「 あら、わりとそのへんにあるらしいわよ」
落ち込んでいる時読むと励まされます。
それはたぶん 佐野さんの肩の力が抜けているから。
落ち込んでいる時、立派な考えの本など読みたいと思いません。
アハハと笑ったあと、しょうもない自分の生活も頭の中も
これでいいのだ、と思えてきて元気になっています。
人は寝て起きて食べていればなんとかなるんだ、と思えてきます。
いま私は ちょうど佐野さんがこの本を書いた頃と同じ年頃。
人間が出来てない私はとうてい佐野さんの境地にはほど遠いい。
だから、また落ち込んだ時、お世話になるに違いないと思い
この本は手放さないで本棚にあります。
でも 亡くなったあと出版された 「 死ぬ気まんまん」は辛くて読めませんでした。
...
いつだったか前に、調子に乗って、読んだ本や観た映画に☆印いくつ、なんて
私にしては大それたことを書いたような気がしますが
あれはやっぱり止めておきます。
だいたい読書家じゃないし、映画は面白くないと途中で寝てしまう方だし。
なので、書くのはとても良かったと思ったものです。
読書については、最近ネットの世界をうろつくようになってから
ますます遠ざかってしまったと反省しとります。