昨日は木枯らしが吹き気温が一気に下がりました。浅間山や遠くに見える北アルプスの山々はすっかり雪化粧をしています。午後からまたバラの植え替えと思っていましたが、あまりに寒いので(笑)こたつの中で本をパラパラとしていました。
「校門を掘る少女」 漫画家の矢口高雄さんが自分の中学生時代の事を書いた「蛍雪時代 ボクの中学生日記 第1巻」(講談社文庫)に出てくる話。時代は戦後まもない頃、田んぼの中に新築なった校舎ではあるが、あるのは建物だけで、周りにフェンスなどなく、生徒はどこからでも校舎に入ってくることができた。あるとき、生徒会で生徒の一人が、そういったことはやめて、きちんと校門から入るべきだというと、全員が賛成する。ところが、学校には校門なるものが予算の関係で作られておらず、校長先生が自費で大工さんに発注し、木で空洞の校門を作ってもらう。また、色も本物らしく見せるためにコンクリート色で塗装してもらった。それ以来生徒は必ず校門を通り通学するようになる。ところが、場所は全国有数の豪雪地帯のため、冬になるとその校門が雪で埋もれ、どこにあるかも分からなくなってしまう。ある雪の朝、校長先生が窓の外を見ると、一人の女子生徒がスコップで校門を掘り返していた。担任の先生に聞くと、別に頼んだわけでもなかった。その日から、その中学では雪が降ると、生徒がだれとも言わずスコップを持ち出して校門を掘り出すのが、伝統となった‥という話です。
少女が雪から掘り起こしたものは、同級生達への思いやりであり、先生方への感謝の気持ちであり、また自分自身の誇りだったに違いありません。他の生徒もあたりまえのように自分達の学校を大切に思う気持ちをもっていた。そんな子供達を育てたのは物の無い時代にあっても、豊かな気持ちを持った先生や家族の方々ですし、なにより生徒一人ひとりが責任感と自主性を持っていたのだと思います。
校門は生徒を暖かく迎え入れてくれるところです。
(写真は 新潟県立歴史博物館にて撮影 )
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