第6話 耐寒テスト
天体望遠鏡は例えば砂漠での日食観測から、氷点下数十度の寒い環境でも使われる機械なので、使用される温度の範囲が非常に広いのが特長です。現在の赤道儀は殆どがベアリングを軸受にしており、これが熱膨張のバッファになっていますが、Mark-Xを開発した当時は大型赤道儀を除いてベアリングが使用されることはまれでした。軸と軸受はJIS h7・H7と規定される嵌め合い公差で精密に削り出されていたのです。
当時、五藤光学研究所の小型赤道儀は軸受に鋳鉄かアルミ、軸には鉄が使用されていました。赤道儀を極端に冷やすと、軸と軸受の熱膨張率が大きく異なる材料では、収縮して動かなくなってしまうことが判明しました。Mark-Xではほぼ同じ膨張率の材質を使うことで、低温でも動きのスムーズな軸受ができたのです。
更にこの時小型望遠鏡では初めて、高温から低温域まで滑らかさが損なわれない二硫化モリブデン系のグリスを用いたり、モータードライブの回路に耐低温特性を持たせたりしました。
添付の写真は零下25度の冷凍庫で、試作したMark-Xの耐寒試験をしている27歳当時の私の写真です。五藤光学本社の系列会社の大東京綜合卸売センターにあった大型の冷凍室があります。暑い夏のに日にここで耐寒テストをしたのは懐かしい思い出です。(suzu)
画像:耐寒テスト中のマークX