昇交点

五藤テレスコープ的天文夜話

70年前の双眼鏡技術に思いを馳せる

2012-12-25 12:52:32 | 望遠鏡・双眼鏡

Nikon12cm_bino

suzuは「昭和19年日本光學工業株式會社製12糎(センチ)双眼望遠鏡」なるものを所持しています。八ヶ岳のふもとの農場に設置してあるのですが、さすがに68年も前に製造されたものなので、光学系はかなり曇りが見られました。このほど諏訪市在住の光学技術者、金井十八氏のご厚意で解体・修理がなされました。その技術報告会が日本望遠鏡工業会、コスモスサロン、五藤テレスコープの共催で、長野県富士見町にて11月17日に開催されました。コスモスサロンは元東京天文台・乗鞍コロナ観測所に勤務し、三鷹市議も務められた鈴木利和氏が八ヶ岳のふもとで実施している文化サロンで、天文の話題も多く取りあげられています。実はこの双眼鏡は鈴木氏の農場に設営されているのです。

報告会では内部の光学系の精度が大きな話題となりました。特にプリズムはダハ面をもつものと菱形の2種類から成っており、ダハ面の角度や面精度の測定結果が報告されました。70年近く前なので当然コートなどはしてありませんが、近年の双眼鏡に繋がる技術が戦前に殆ど完成していたことが、強く印象に残りました。アイピースは見かけ視界が60度もあるエルフレ型で、左右のある部品が片方は真鍮、もう片方は鉄でできており、物資のひっ迫していた戦争末期の様子を示しており、感慨深いものがありました。(suzu)

画像:夕暮れを待つ12センチ対空双眼鏡。残念ながらフォークは現存しておらず、後から製作した。後方は南アルプスの主峰・甲斐駒ケ岳。