ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

フライ・ダディ、フライ(成島出監督)

2008-01-05 | Weblog
ストーリー;通勤電車の中で居眠りをしている鈴木はどこにでもいる平凡なサラリーマンでしかもバス停には妻と娘が車で迎えに来る暖かい家庭の持ち主だ。ローンはまだ23年分残ってはいるが、一軒家も保有している。そんな中、会社に娘がカラオケルームで顔が変形するほど殴打されて入院したという電話がかかってくる…。
出演 ;堤真一、岡田准一、須藤元気
コメント;最初の画面は天井からの俯瞰図。ゆっくり左へ流れてそして通勤電車の中にすいこまれていく。こうした設定はうまいと思う。だって推定40代前半の鈴木は、中年男性のある意味「ヒーロー」でもあるわけだから。こうしたサラリーマンはだいたい哺乳類動物のように自分自身の世界をもっているし、他人に余計な干渉をしないのが大前提。保守的といわれるかもしれないが、いや実際会社勤めをしている人にはわかるはず。世間話であれなんであれ会社で他人のプライバシーにふみこむようなことはあまり少なくとも表面的にはしない。これ、映画館にはいろいろな年代の人が集まっていたのだけれど、20代の観客ってどう受け止めるのかしら。というのはこれから人生の機軸を固める時期だろうし高校時代はすでに終了しているだろうし。映画の中の高校生はちょっと80年代風でついていけないのだが、これもまた10代が支持する高校生とは違うと思う。在日朝鮮人という設定のスンシンにしてもリアリティがあまりない。「戦う方法は教えるが勝つ方法は教えない」というある意味10代にしては不敵なセリフをはくわけだが…。もっとも岡田准一がそうしたなぞめいた美少年を演じること自体がこの映画の眼目かもしれない。
 堤真一主演の「弾丸ランナー」はおそらく日本映画史に残るランナーズハイのシーンを映画館に展開したが、この映画で家庭を保有した後の弾丸ランナーぶりを堤真一が好演。40代前半でしかも新プロジェクトの担当待ちという「微妙な時期」のサラリーマンが「飛ぶ」姿を演じる。堤がどこまで走り続けるかは不明だがこのまま50歳になっても60歳になっても弾丸ランナーでいてほしいものだ。「灰とダイヤモンド」へのオマージュもでてくるが、これ、ポーランドの歴史と堤を重ねるとまた面白い見方もできる。アンジェイ・ワイダは「地下水道」で走ろうとして走れない。飛ぼうとして飛べない青年を描いたが、この映画ではとことん外へ、上へ、と舞い上がっていく。しかも現実に足をつけているあたりで「ロッキー」とはまた異なるリアリティをもたせて。ラストではモンゴル風、朝鮮風、そしてスペイン風であり80年代的ともいえるカーニバルが画面に展開するのだが、いや、面白い。

 モロ師岡、田口浩正、塩見省三なども脇を固め、鴻上尚司もゲスト出演。「しこふんじゃった」「12人の優しい日本人たち」「キッズ・リターン」など90年代の映画好きな人にはたまらない脇役。
(主役の名前が鈴木さんの理由…)
 日本人の名字で一番多いのが、鈴木だからではなかろうか。中世に発生した名字で、刈り取った稲を積み上げてその上に棒をさして神を呼ぶという儀式に用いられたのがススキ。その後、熊野神社の神官が鈴木と名乗り始めて、拡大し、豊作を願う農耕民族の願望とか神を招聘しようとする意志とかがあるとされている。ただ映画の中で用いられたのはどこにでもいる「普通の人」という意味だったのかもしれない。ただこれだけアットホームな家庭というのは実は探してもありそうにもないが、満員電車で疲れたサラリーマンというのは自分も含めて確かにたくさんはいる。変わったヒーローではない、という演出の一つなのかもしれない。

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