ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

珈琲時光(ホオ・シャオシェン監督)

2008-01-05 | Weblog
ストーリー ;フリーライターの陽子は、ある日夢にうなされる。古書店の友人にその夢の問いかけをするが‥
出演;一青窈 、浅野忠信、余貴美子
コメント;「21世紀の東京物語」とコピーがうたれたこの作品は発生は小津安二郎へのオマージュだが、明らかに台湾の天才ホオ・シャオシェンの独特の映画作品であり、力をぬいているようにみえる実力派の俳優が画面全体にそのオーラを発している。台湾のピアニスト江文拗の歴史を追う陽子には、歌手の一青窈。正直歌はあまり好きではないが、演技は最高。そして古本屋の主人には「座頭市」で心に傷をもつ武士を演じた浅野忠信。そして小津作品へのオマージュということもあり元東京大学総長の蓮實重彦氏は誠文堂書店の客としてちらっと出演する撮影もしたそうだ。ただし実際にはカットされているようだが、エンディングにはその名前が流れる。
 この映画ではとにかく俳優が画面に背中をむけて背中で演技するという困難なワザをもとめられ、おそらくはリハーサルなどほとんどしないでその撮影に成功している。神田界隈の店や御茶ノ水駅での電車が交錯する場面など21世紀の東京の風景をいかんなくとらえ、日本人がなんたるかをホオ・シャオシェンが画面で、無言に伝えてくれている。「いもや」や「都丸書店」など個人的にもなじみが深い飲食店や古本屋が画面に姿をみせ、その歴史をまた伝えてくれる。猥雑なのだが美しい。そして画面ではまたストーリーがほとんど展開せず、おそらくはエキストラなども使っていないであろう電車の中の撮影が淡々と進行する。すごすぎる。
 もし画面から個人的に物語をつむぎだすのであれば、陽子にかける言葉がないように、陽子と古本屋の主人にもかける言葉はなく、家族愛がもし背中を並べて座っていることであれば、この二人の恋愛は片方が駅の音を録音している周囲を陽子がただ黙ってたってみているということでしか表現しきれない。しかしこの二人が愛し合っていることは画面では明らかであり、タイにいる恋人は言葉では伝わるが画面にはでてこない。京浜東北線と山手線ですれちがう二人のシーンは観客にはわかるが、このシーンこそお互いが探しているもの‥をラストで明らかにしてくれているように思えてならない。言葉には限界があるが映画の中では映像がすべてなのだ。そうするとヤボではあるが、この映画の「物語」のラストはもう決まっている。明らかにハッピーエンドだ。
 信じられないシーンがとてつもなく長く続き、しかもワンショットだったりする。スタッフとキャストの根気強い撮影と偶然すら演技にとりこむ気迫の演技。そしてエキストラではない実在の東京都民の日常が織り込まれた世界史に残る名作品であろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿