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 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

シリアナ(スティーブ・ギャガン監督)

2009-06-12 | Weblog
評価:

キャスト:ジョージ・クルーニー 、マット・デイモン 、ジェフリー・ライト、クリス・クーパー、ウィリアム・ハート、 アマンダ・ピート、 クリストファー・プラマー

コメント:実在するイランやレバノンをおりまぜつつ、実際のドラマは架空のイスラム国家を舞台にしているのでリアル・ポリティカル・ムービーの雰囲気を漂わせつつも実際にはSF映画と考えるべきだろう。ただしSF映画をみるような楽しさもドキドキ感もなく、ただひたすら陰惨な画面だけが連続し、やたらに俳優全員がシリアスなので途中で興ざめしてしまう。
 「アル・スパ一族」が支配する架空のイスラム国家と架空のアメリカ諜報部がどこでなにをしようと面白くなければやはり面白くないと言い切るべきなのではなかろうか。
 なぜかこの映画でジョージ・クルーニーはアカデミー助演男優賞とゴールデングローブ助演男優賞を受賞。ジョージ・クルーニーはこの映画では役者のほかに製作総指揮もつとめている。「シン・レッド・ライン」で最後のワンシーンにちらっと登場したのが一番印象的な役者で、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」でクエンティン・タランティーノと組んでバンパイアを闘うシーンも好きだったが、政治がらみの映画になるとなんだかなあという感じ。好きな人には好きなジャンルだとは思うが…。  

 まず架空のイスラム国家の化石燃料の採掘権を中国系企業が獲得したことが問題視されるのだが、この架空のイスラム国家は産油国のようなので経済発展が続く中国とその架空国家が直接取引をしてもさほど不可思議な結びつきではない。実際にイランと中国の結びつきは強いはずと認識している。主人公のCIA諜報部員はイスラム国家、特にシーア派の動きに強い専門家のようだ。イランでこうした特殊工作員がいろいろな活動をするのはこれまでの歴史を見ても当然だし、イランのシーア派から派生したヒズポラが活動するレバノンに出入りするのも当然だろう。ただし物語の中心となる架空国家とこのCIA諜報部員との関りはいまひとつよくわからない。  
 パキスタンから来た移民が描写されているが、パキスタンのイスラム教徒はスンニ派に近くイランを敵視している。映画の中でこのパキスタン青年が「突然の行為」にうってでるのだが、これは単に「洗脳された」というだけではない背後事情があのだろう。いわば中東では異端のイランで、スンニ派に近いであろうパキスタンの青年が「テロ行為」に出る…という背後事情だ。レバノンのシーア派→ヒズポラ→イランのシーア派VSサウジアラビアのワッハーブ派といった図式である。そうした図式でとらえられにくい「切迫感」がパキスタンの青年をシーア派に近づけていった…という見方はできると思う。ただこれでも唐突ではあるが。

 かろうじて理解できるのは反米主義と近代合理主義の両方をみすえるナシール王子と石油アナリスト・ブライアンの立場と行動。まだ現実としてそうしたイスラム国家は存在しないが、中国との結びつきをより強める一方でデリバティブ取引などにも積極的に手を伸ばすとともに、パイプラインをヨーロッパに伸ばして経済規模の拡大をめざし、石油中央取引所の設立や基本的人権の確立などを目指そうとする。イスラムでも王侯貴族の氏族が欧米の大学に留学することが多いため、こうした近代合理主義に立脚していくリーダーや貴族も増えてはくるだろう。王位継承権が確定していない段階で、そうした兄に対して民族主義やイスラム原理主義を掲げる王位継承権が次となる弟が存在する…という「仮定」もそれほどリアリティのない話ではない。そして兄が中国との関係を重視するのであれば弟は米軍基地の設立も含めた親米派へ…という流れも理解できなくはない。さらにそうしたナシーム王子の親中国主義・反米主義に対してCIAの一部がどう反応するか…というシナリオを一つ考えると確かに一定のリアリティはある。またその片腕となる石油アナリストもこれまで歴史上存在しなかった近代イスラム国家とヨーロッパの結合という世界観には強く共鳴することは想像できなくはない。基本的人権を重視するナシーム王子がベドウィンに対しても一定の配慮を見せるシーンがあるがこれも一つの見せ場ではあるだろう。  

 こうしてみるとこの映画で一番不可解なのはやはりジョージ・クルーニーが演じるCIAの一匹狼の工作員の行動だろう。中東からバージニア州ラングレーのCIA本部に戻るもののデスクとなかなか話が合わずにまた中東に降り立つ。そしてなぜかその後「アル・スパ一族」とCIAの「いろいろなこと」に巻き込まれていくがそのプロセスはまったく理解不可能…。現地に理解のあるCIA工作員はまた人情にも厚かったとでもいうのだろうか…。  
 ウィリアム・ハートが事情通の元CIA工作員として登場するのだが、どうしてウィリアム・ハートが事情通なのかはまったく不明。

(「ロックフェラーはシカゴ大学も作った」)  
 1890年に実際にロックフェラーはシカゴ大学を設立している。この映画では新古典派のノーベル経済学者フリードマンの名前も別のシーンで引用されるが、そのフリードマンもシカゴ学派の泰斗。フリードマンは市場競争こそがベストというアダム・スミスの考えを継承しているのでこの映画で引用されるシーンはまさしくそれに相応しい。

 (「もうすぐモサデクになる」)
 1950年代にイランで石油の国有化を進め、石油資源が英米に搾取されるのを防ごうとした人物。ただし当然こうした動きに英米が反応し、CIAが民衆を扇動してモサデクを追放したとされている。その後、シャーが就任してアメリカの指示を受けつつイランを統制するが、その後、シャーの政治も民衆に抵抗されホメイニによるイラン・イスラム革命が勃発することになる…。この映画ではモサデクはナシーム王子のことをさしているのだろう。

 (中国政府の法輪巧への拷問)
 中国で弾圧されている一種の「気功」を重視した宗教(団体)。儒教と道教の影響を受けているとされるが、いずれも宗教というよりも哲学に近いので宗教団体というのには抵抗があるかもしれない。ただ少なくとも共産主義とは相容れない部分が多いため、反共路線のスタンスをとらざるをえない。そのため「信者」(?)の増加とともに中国共産党政府が警戒を強め、信者というか活動家というべきかを一説には数十万人拷問したとされている。

ストーリー:ペルシャ湾岸の天然ガス採掘権を中国系企業のキリーンという会社が獲得した経済事件が発生。どうやってアメリカ系の石油会社を押しのけて中国系の企業が採掘権を入手したのか。  
 テキサス州ヒューストンではコネックス社でテンギス油田の採掘権をキリーンに奪われた影に海外汚職行為防止法違反の収賄があったのではないかとの疑惑が浮上。そしてキリーンとコネックスの合併話が持ち上がる。ワシントンDCのジョージタウンでは弁護士ベネット・ホリデイはその合併調査を依頼される。キリーンの影にはカザフスタンの高官との間に汚職の噂がただよい司法省も捜査に乗り出す。コネックス・キリーン社となると37,000人の従業員を抱え、年間の当期純利益はパキスタンのGDPを上回る。  
 そしてスイス・ジュネーブでは石油王の単独会見にのぞむ石油アナリスト・ブライアン。家族をなくし悲嘆にくれるが、そうした中ナシーム王子と面識を得る。一方、架空のそのイスラム国家ではコネックス社が導入した近代設備(液化天然ガス施設)により外国人労働者の調整解雇が行われていた。パキスタンから父親とやってきたワシームとその友人もまた解雇される。その一方でアメリカではCCI(イラン自由化委員会)が活動を進めている…。  

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