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「メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略(川上祐司)」という本はとてもオススメ!

2017年06月09日 01時00分00秒 | 
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 「メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略」という本は、サンフランシスコ・ジャイアンツのスプリングトレーニングキャンプに帯同した経験を基に、メジャーリーグのマネジメントシステムやマーケティング、スコッツデール市におけるスポーツ・ツーリズム施策とその効果等について紹介したものです。

 またアメリカのスポーツビジネスモデルの実態について具体的に書かれていて、また日本との比較もあり、今後のより良い日本のスポーツビジネスのためのヒントがたくさんあり素晴らしいと思います。

 特に以下については興味深かったですね♪

・スポーツビジネスにおける主な収入源は、①チケット収入、②テレビ放映権収入、③スポンサーシップ、④マーチャンダイジング

・スポンサーシップの中でも命名権(ネーミングライツ)はスタジアム関連収入で金額的に最も大きい

・日本はアメリカのスポーツビジネス環境における商流とは根本的に異なる

・スポンサーがスポーツ番組を好む離湯うっは以下の3つ
①安定した視聴率が期待できる
②消費行動が活発な若者層に人気のコンテンツである
③ライブ放送が基本のスポーツコンテンツの場合、ドラマ・映画とは違って確実にコマーシャルを見てもらえる

・アメリカのプロスポーツリーグの最大の特長はクローズドリーグである。下部リーグチームとの昇降格システムがなくチームの入れ替えは起こらないので、降格リスクがないことからスポンサーを容易に募りやすい。逆に入れ替えがないので常に質の高いゲームが求められる。

・過去には球団の株式上場は多くあったが今は止めている。ネーミングライツなどの資金調達手段が多様化したためと、敵対的買収等のリスクを負いたくないため。

・アメリカでは日本のように広告代理店に委託しておらず、自社内にマーケティング部門を設けて中期的なマーケティング戦略を模索し、そこでは将来的にお客様となる11歳ぐらいの若年層をターゲットにしている。

・アメリカでは日本と違って基本的に代理店や放送局を介さないビジネスモデルのため、各チームはお客様とのWin-Win関係が直接構築される。

・スポーツファンは、オペラやロックのファンに似ていて絶対的な質に惹かれる。パフォーマンスの高くないチーム同士の対戦よりも、トップレベルの選手が活躍するゲーム観戦の需要の方がはるかに大きい。

「メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略」という本は、アメリカでのスポーツビジネスの実態が分かるだけでなく、今後のより良い日本のスポーツビジネスを考えることができ、とてもオススメです!


以下はこの本のポイント等です。

・筆者はこれまで国内大手ICT企業の広報IR室と宣伝部に勤務していた。宣伝部ではスポーツを通じた同社のブランディングの確立と事業への貢献を目的に、マーケッターとしてスポーツスポンサーシップ業務全般に携わってきた。しかし、これらのスポーツスポンサーシップははたして成果を収めているのかt自問自答の日々が続く。日本のスポーツスポンサーシップの構造には決定的な問題があるのではないだろうかと筆者は思いあぐねていた。またスポーツビジネスが発展しない日本の現状を如実に感じたとともに最終的な犠牲者が実はアスリートなのでhないだろうかと考えるようになった。筆者もそのアスリートの一人であッたと自負する。アメリカンフットボールの企業スポーツ選手として幸いにも幾度か歓喜を味わわせて頂いた。マーケッターとアスリート。この両者を実際に経験した人材はそれほどいないのではないだろうか。今思えば貴重な経験だったお思う。ここで経験し日本のスポーツに関わる現状とその課題を、次代を担う若者たちに理解させる必要がある。そして日本のアスリートたちはもっと勉強しなければならないのではないか。この二つが筆者が教員となった大きな理由である。

・2016年9月時点で、アメリカ4大プロスポーツチームが持つ120施設中、ネーミングライツを導入する施設は97施設ある。その中でも特に金融系企業の動きが活発だ。金融系企業がネーミングライツを取得する施設は33施設にのぼる。2018年にスーパーボウル開催が決定したUSバンク・スタジアムはバイキング・スタジアムと25年間2億2000万ドルのネーミングライツ契約を交わしている。金融業の業界特性として、サービスでの差別化が困難であることや商品やサービス内容自体がわかりにくいという点がある。しかし競争が熾烈化する金融業界においても、お客様のマインドシェアの確保やブランド向上などが求められる。昨今の金融系企業のこの動きは、スポーツ組織との長期的なスポンサーシップ契約によってこれらの経営課題の解決を目指すものである。その効果的な手段がネーミングライツであるというわけだ。そのクライアントは保険業界にも広がっている。またネーミングの対象も単にスタジアムに止まらず、入場ゲート、ラウンジ、コンコース、スイートルーム、クラブシートなど各箇所に広がっており、クライアント企業の目的に応じた契約内容でのスポンサーシップが展開されている。特に昨今の新スタジアムの建設ラッシュに合わせてスポンサーシップビジネスも年々進化を遂げており、企業の経営課題解決に向けた手段として有効に活用されている。

・日本のスポーツビジネスにおけるスポンサーシップはどうか。日本のスタジアムや球場では依然として視認性の悪い企業看板広告が立ち並んでいるように思う。その効果ははたしてどうか。スポンサー企業は自社の経営課題解決に向けてスポーツスポンサーシップを有効に活用できているのだろうか。それは筆者にとって、旧組織時代からの疑問であり、日本のスポーツスポンサーシップビジネスの課題でもあると考える。現在、日本では、
①メディアがスポーツイベントを主催するケースが一般的
②メディアと資本関係を持つプロスポーツチームが存在する
③広告代理店を仲介してのビジネスである
などが一般的でい、アメリカのスポーツビジネス環境における商流とは根本的に異なる。日本の広告宣伝の場合、一般的に広告代理店を経由するビジネスモデルである。また著名なスポーツイベントはメディアが主催側に位置する。いわゆるメディアによるスポーツの事業化である。自社の媒体によって自社が主催するスポーツイベントのメディアバリューをも高め、疑似的に商品価値をも高める。決して高いとは言い難いパフォーマンスをあたかも高いように見せかけ、結果的に価値のないような看板や冠呼称権を売り込むメディアと広告代理店。そのビジネスはスポンサーシップではなくメディア・バイイングの意味合いが強いのである。主催メディアの自社媒体の広告スペースなどを中心に広告代理店を通じてクライアントへ提案・販売する。結局のところこれら主催メディアと広告代理店の最終目的は自社の経営(=利益)であり、クライアントの経営課題解決など範疇外なのかもしれない。また一方でクライアント企業は前年実績を基にした年間宣伝予算の消化を目的に、あまり価値のない投資を行っている側面もみられる。それはスポンサーシップではなく寄付と言わざるを得ない。2020東京オリンピックが開催される日本ではスポーツスポンサーシップの変革が求められるのである。

・アメリカでは一般的にまずは地域住民が中心となって、専用スタジアムやアリーナの必要性のムーブメントが沸き上がり、建設を行政に委ねる場合が多い。しかし建設にあたっては地方自治体による住民投票により住民の賛意が必要となる。当然のことながらすべての住民が賛成しているわけではない。税金投入を正当化する理由付けが必要というわけだ。次にスタジアムの維持管理・修理・修繕経費などは、スポーツチームまたはその他が吸収する手だてが必要となる。自治体からスタジアム営業権を譲渡されることによりスタジアム内での物品販売をチームが運営・管理する。その際、自治体に払う球場使用料を極端に抑えてもらうような企てもみられる。住民投票での賛意の後、公的資金の調達として地方債が発行される。スタジアムが立地される州や郡、市、あるいはその関係機関などの公的部門が、スタジアムプロジェクトを目的とした地方債を発行する。地方債の償還期限は、スタジアムの耐用年数に相当する20~30年程度の期間と言われている。その地方債の返済原資としては、スタジアムが立地する地域における税収入、すなわちスタジアムプロジェクトという特定目的のために法令化された税金等が返済原資となることが一般的である。具体的には、
①観光客等に対して課される売上税、ホテル税、レンタカー税、コンベンション施設利用税
②スタジアム立地地域における一般税、売上税、消費税、入場税、宝くじ収入(州運営)、事業税などがこれにあたる。
スタジアム関連収入もさることながら、特定税収入の将来キャッシュフロー予測に重点が置かれる。返済原資のポイントとして、将来の特定税収入が負債金額と比較して十分な水準があるか、また債券の償還スケジュールとのバランスについて問われることになる。

・新設されたスタジアムやアリーナでは、座席シートの間隔やコンコースの広さなどがこれまでよりもかなりゆとりのある設計になっている。2009年にオープンした新ヤンキースタジアムのキャパシティは4万9638人と旧ヤンキースタジアムの5万6936人を大きく下回る。外野スタンドの前列でも皮シートの座席が設けられており座り心地はとても良い。日本では、狭い敷地内に詰め込んだ席で身動きが取れない状態でスポーツ観戦した読者も多いのではないだろうか。アメリカのスタジアムでは充実したさまざまなショップやアクティビティなど野球以外にも楽しむことができる空間があり、まさにボールパークと呼ばれるゆえんである。また新設ではないがアリゾナ・ダイヤモンドバックスのホームスタジアムであるチェース・フィールドは外野スタンドにプールがあることは日本でも有名な話だ。35名のグループチケットが3000ドルから3500ドルで販売されているがシーズン中はほぼ完売するという。プールサイドでビールを飲みながらベースボールも楽しむ。最高の時間をここで楽しむことができる。

・しかしスタジアムやアリーナ建設にあたり住民投票で否決される場合もありうる。またリーバイス・スタジアムの建設の際には決定後も行政側の出資金額を巡り裁判沙汰にもなっている。その影響も鑑みて、公的資金を充当しないでプライベートファイナンス(私的資金)によって建設されるケースもある。ファンディング・パートナーによるスタジアム建設プロジェクトである。ファンディング・パートナー各社は共同創設パートナーとしてプロジェクト設立時からスポンサーシップ契約の最上位スポンサーとして参画し、両者が互いにWin-Winの関係を築く。ネーミングライツは単に施設に名前を付けられる権利という位置づけではないのである。2014年(第48回)スーパーボウルが開催されたニューヨーク・ジェッツとニューヨーク・ジャイアンツのホームスタジアムであるメットライフ・スタジアムは公的資金ゼロで建設されたスタジアムである。その建設費は16億ドル(日本の東京オリンピックのための国立競技場の当初計画費よりはるかに安い)。ファンディング・パートナー企業としてスタジアムネーミングライツ契約をメットライフ社が、そしてバド・ライト、SAP社、ベライゾン社、ペプシがコーナーストーンパートナーとして続く。この4社の大きなブランドロゴがスタジアムの各コーナーで一際目立つ。そして単なる看板だけではなく4コーナーにある入場ゲートと連動している。つまり、ゲートへのネーミングライツと連動したスポンサーシップである。メットライフ・スタジアムの収容人数は8万2566人。少なくともその4分の1の観客が各ゲートから入場するわけで嫌でもスポンサーのロゴを認識することになる。ほかにもスイートルームやクラブシートなどもネーミングライツが販売されており、トヨタやレクサス、またパナソニックなどの日本企業も契約している。これえあの日本企業はアメリカのスポーツ施設ではよく目につく。自社のマーケティング戦略に有効に活用しているものと察する。あくまでもスポンサー各社の目的と想定効果に応じた権利アイテムの購買であり、ファンディング・パートナーであるが故のなせる業であろう。フィールド内での高い競技パフォーマンスとリンクしながらもスポンサーシップビジネスは年々進化を遂げておりWin-Winの関係がライツホルダーとクライアント企業との間で直接構築されているのである。

・スーパーボウルとは、NFLのシーズン王者決定戦で現在毎年2月1週目の日曜日に開催される。名実ともに世界最大のスポーツイベントである。スーパーボウル当日はスーパーボウルサンデーと呼ばれ全米が注目する。もちろん全米で生中継され、毎年50%近い視聴率を記録し、1億6000万人以上がテレビを視聴する。これまでの視聴率を見てもその視聴者数含めて驚異的な数字である。毎年50%近い高い視聴率を獲得するスーパーボウルのテレビ中継は、コマーシャルの放映権料が世界一高額であることも有名な話である。第50回(2016年)スーパーボウルでは、その全米テレビ中継での30秒コマーシャルの1回の放映権料500万ドルを突破したという。第49回でもこれまで最高の450万ドルであったがさらにこれを上回った。高額ながらもテレビコマーシャルの販売状況は毎年順調で11月頃には完売するという。大手企業各社はスーパーボウルの放映に向けて新たなコマーシャルを数本制作するが、そのメディアバリューは広告主への刺激もさることながら、それを視聴する消費者の購買意欲の向上も容易に察することができる。もちろんトヨタ、ブリヂストンなど日本企業のコマーシャルも放映されている。スーパーボウルを注目するのは一般のファン層だけではない。主要企業にとっても最も重要なプロモーションの場である。

・2015年(第49回)スーパーボウルはアリゾナ・カージナルスのホームスタジアムであるユニバーシティ・オブ・フェニックス・スタジアムで開催された。全米、世界各地から多くの人々がアリゾナ州フェニックスを訪れた。NFL公式サイトによれば、州外からの訪問者数が10万人に上ったと発表している。またフェニックス市のダウンタウンを一部閉鎖して5日間に渡って行われる大イベント、スーパーボウル・セントラルには延べ100万人の参加者が期待されていた。当然、訪問者が飲食、宿泊などで落とすお金やイベントなどでの雇用の創出など開催地への経済的なインパクトは大きい。1試合のみにも関わらず、ホスト・コミッティーは今回の経済効果を5億ドルと試算している。また400社を超える中小企業がスーパーボウル関連のビジネスに参加し、経済的恩恵を受けているという。

・スーパーボウル試合当日は、家族や仲間が集まり大人数でテレビ中継を見ながらわいわいとパーティー形式で楽しむ。アメリカではスーパーボウルパーティーと呼ばれる。その恩恵を受けているのが食品業界、なかでも宅配ピザである。スーパーボウル当日のピザハットの売上げは普段の日曜の2倍以上となる200万枚で宅配ピザのオーダー数が1年で1番多い日となるという。もちろん食べられるのはピザだけではない。10億本ものチキン・ウィングが消費され、1万3000トンのポテトチップスが販売される。また最も欠かせないアイテムがテレビだ。スーパーボウル直前になると恒例の大型テレビのセールが行われる。

・NFLの場合レギュラーシーズンの試合数は16試合となりホームゲームはたったの8試合に止まる。1試合あたり放映権が10億円以上になる計算だ。MLBの放映権も高騰傾向にあるが、年間162試合開催されるため1試合あたりではNFLを大きく下回ることになる。

・人口が増加を続けるアメリカでは視聴率に対する価値は高まっている。多チャンネル化、多民族化が進む中で、確実に数字が取れるスポーツコンテンツの価値はますます高くなっているのである。またESPNをはじめとした視聴契約料に放映権料を上乗せすることが可能なケーブル放送局やスポーツ専門放送局の参入が既存の地上波局を含めた放映権の争奪戦を加速させており高騰につながっているものと考えられる。さらにインターネットによるスポーツコンテンツの視聴は、本来なら放映権料を引き下げる要素になりうるものが、リーグ側の権益保持の意向もあり、さらなる価格高騰の一助となっている。たとえばNFLでは放映権契約するテレビ局にネットでの配信権をテレビ放映権に上乗せで販売している。キー局が支配する日本のテレビ局事情とは異なり、アメリカではスポーツコンテンツが系列自体を変化させる可能性もあり、放映権の獲得がスポーツ放送ばかりでなくテレビビジネス自体に大きな影響を及ぼすことも、放映権獲得競争にさらなる拍車をかける要因となっているようだ。1994年にCBSがNFLの放送権を失った。代わりにFOXが獲得した際には70局以上の系列ローカル局が競合のFOXに移籍し、有力系列局を失ったCBSの経営は悪化したという。

・アメリカのプロスポーツでは下部リーグとの入れ替えがないことで、常に質の高いゲームが求められる。ゲームの質こそがクローズドリーグを掲げるアメリカプロスポーツリーグの生命線なのである。この質の高いゲームの追求に向けて最も重要な考え方が戦力均衡である。アメリカプロスポーツリーグにおける哲学といっても過言ではない。ゲームの質の向上を実現すべくリーグが掲げる戦力均衡に向けた大きな施策として、①レベニューシェア、②サラリーキャップ、③ウェーバー制ドラフトの3つがある。これらは、スポーツビジネスにおける大きく4つのステークホルダーであるリーグ・チーム・スポンサーそしてそれらの中心に位置づくファンとの間で有機的なバリューチェーンを形成し、アメリカにおけるスポーツビジネスを年々進化させているのである。

・アメリカプロスポーツリーグにおけるレベニューシェアは、各チームがリーグによって定められた項目の収益をリーグに収め、それをリーグ全体一旦プールし、改めて全チームに定められた割合で配分するシステムである。基本的な考え方として、テレビ放映権収入、チケット収入、ライセンスグッズ収入、スポンサーシップ収入などのチーム側での収益のうちの規定額をリーグに納め、リーグはリーグ収益分と合わせて改めて所属する全チームに均等分配し、チームの収入源となる。特にテレビ放映権料はリーグおよびチームの最も大きな収入源とん。メディアもクライアントの一つであるのだ。スポーツイベントをメディアが主催する日本のシステムとは根本的に異なる。チームはレベニューシェアによる収入によって財源を安定させ、ニューヨークのような大都市にあるチームも、アメリカ4大プロスポーツリーグのフランチャイズとしては最も小さなマーケットにあるグリーンベイ(ウィスコンシン州)であっても、同じ条件の下、フィールド上で競うことができるのである。

・サラリーキャップとは、チームが選手に支払う額に直接制限を設ける制度で、選手人件費総額の最低保証としての機能を併せ持つ。チームが選手に支払う年俸総額に上限額を設けることで①選手年俸の抑制、②チーム戦力の均衡維持を目指す。各チームが選手に費やす人件費を均一化することで、選手獲得競争の公平性を確保しているのである。サラリーキャップは通常、上限(キャップ)と下限(フロア)が設定されている。下限は、極端に戦力を削ってまでもチーム総年俸を圧縮し分配金への依存度を過度に高めるような経営努力を放棄するチームが現れることを防止するためである。

・ウェーバー制ドラフトとは、チームが前のシーズンの最終順位と逆の順番でドラフトにおける選手指名を行うことができる制度である。下位チームはこのドラフト制度で有望な選手の補強が確実に行われ翌シーズンの戦力強化が図られる。日本では全く考えられない制度ではあるが、戦力均衡の実現に向けては最も重要な制度である。アメリカプロスポーツでは全面的に採用されている。そもそもウェーバーとは権利放棄を意味する。

・ウェーバー制ドラフトにより下位チームにおいても優秀な新人選手を確保することができる。またその資金について各チームはレベニューシェアによるリーグからの配分金を選手の補強資金にもあてることができる。さらには選手年俸についてはサラリーキャップ制度が機能し、戦力均衡が図られる。これら3つの施策が有機的に機能し、アメリカプロスポーツリーグは今もなお進化を遂げているのである。

・アメリカプロフェッショナルベースボールのシステムは、メジャーリーグを頂点に配下のマイナーリーグにAAA、AA、HighA・LowAに分かれるAが連なる完全実力社会のピラミッド構造である。どんなに優秀なドラフト上位指名の選手でも必ずルーキーリーグの位置づけとなるLowAからスタートすることとなる。各メジャーリーグチームはいくつかのマイナーチームを配下に有しながら選手の育成を図るのである。メジャーに上がるまでには数年間を要することになる。そのマイナーチームも独自経営を委ねられる。その主な収入源は、①チケット収入、②スポンサーシップ収入、③マーチャンダイジング収入であり、メジャーリーグチームやリーグからの資金支援はほぼ無いに等しい。したがってメジャーリーグに比べパフォーマンスに劣るマイナーリーグのチームはあの手この手で観客を呼び込み地元フランチャイズチームとしてさまざまなマーケティング戦略を企てながらチーム経営に励むのである。

・MLBチームの各ホームスタジアムでの消費状況はどうか。AZSTAの調査以来、観戦試合数は若干減少しているもののスタジアム内での消費金額は年々増加しているのが分かる。2015年では1試合あたりの1世帯あたり消費金額は135.36ドル(中間値)であった。その内訳はゲームチケット代、スタジアム飲食費、ガソリン代、お土産代、チームアイテム購入費である。スタジアム内の飲食物に関しては決して安価とは言えない。どれも量はかなり多いものの日本よりもはるかに高額である。例えばおそらく500mlであろうビールは1杯11ドル前後であり、カクタス・リーグおよびチームロゴ入りのカップになると15ドル前後と跳ね上がる。確かに記念にもなるこのカップはファンたちには好評であり、恥ずかしながら筆者の研究室にも数多く並んでいる。温暖なアリゾナの気候も影響していると思われるがビールは飛ぶように売れており、ビール片手に観戦するファンもいれば、外野スタンド脇には屋外スポーツバーのようなスペースで盛り上がるグループもいる。またそれに合わせたフード関係もほとんどが10ドル以上であるがこれらも飛ぶように売れている。そのメニューのバリエーションも多く、屋台のようなお店は所狭しとスタジアム内コンコースに立ち並んでいる。平均135ドルという算出金額にも納得である。

・スタジアム内消費金額については、各リーグおよびチームの経営評価としても注目を集めており、シカゴに本社を置くチームマーケティングレポート社はファン・コスト・インデックスとして毎年発表している。この指標は大人2人と子ども2人という平均的家族がアメリカプロスポーツリーグの試合をスタジアムやアリーナで観戦した場合の平均観戦コストを算出したものである。その内訳は平均価格のチケット4枚、スタジアム内で販売されているビール2杯、ソフトドリンク4杯、ホットドッグ4つ、駐車場代1台分、ゲームプログラム2冊、帽子2つの合計金額である。直近のデータではNFLの501.84ドルを筆頭に、NHLの363.58ドル、NBAの339.02ドル、そしてMLBの219.53ドルと続く。これらと比較してもスプリングトレーニングキャンプではあるがカクタス・リーグでののこの各チームの金額は決して低いわけではない。

・スコッツデール市が誇るスポーツファシリティの一つであるスコッツデル・スタジアム。ジャイアンツは、1982年よりこのスタジアムでスプリングトレーニングキャンプを行っている。そのスコッツデール・スタジアム及びマイナーチームの拠点となるインディアン・スクールパーク・プラクティス・。ファシリティを使用するにあたり、ジャイアンツとスコッツデール市は2005年3月11日にベースボールファシリティ契約を締結している。その主な内容は次の通りです。
 ・契約期間:2025年12月31日まで
 ・契約金額:非公開(契約金額の20%をスタジアムメンテナンス費に充当)
 ・スコッツデール・スタジアムでのホームゲーム14試合以上開催
 ・改修費を計上し、トレーニングキャンプ施設の増改築を実施
 ・スタジアム内売上(チケット代、ショップ売上、放映権料、スポンサーシップなど)はジャイアンツの収入となる
正直、契約内容には驚く。ジャイアンツはそれほど高額でない契約金をスコッツデール市に支払い、しかもその内20%がグランドメンテナンス費に充当される。スコッツデール市の人件費を鑑みればこの契約条件では市にはほとんど収益は見込まれない。さらにはスタジアム内の売上げはほとんどジャイアンツのものになる。

・2015年スプリングトレーニングキャンプ中のカクタス・リーグでのスコッツデール・スタジアムの総入場者数は16万8924人。その観客たちの年収は11万5551ドル(中央値)と15チームの中で最も高い。その多くの富裕層たちがスコッツデール市内の高級ホテルに平均で5.5日滞在し、その間に3.1試合を観戦し、1試合あたり159ドル、1日433ドルのお金をスタジアムと街で費やす。滞在期間中はおおむね2107ドルのお金をスコッツデールに落としていくことになる。この落ちたお金は15チームの中でも上位に入る。そこにはジャイアンツ側のさまざまなマーケティング戦略が企てられている。それらは決して受け身の姿勢ではない。ジャイアンツ側の魅力的なさまざまはアクティビティによって、多くのファンをサンフランシスコから招き入れているのです。年間を通してマーケティング戦略を推し進めるサンフランシスコ・ジャイアンツ。そのターゲットは子どもからシニア世代、また個人から法人まで全てのステークホルダーをカバーするかのように多岐にわたる。その商品の一部は以下である。
・ジャイアンツ・バケーションズ:週末を中心にした3泊4日の3~4試合観戦ツアー。メリットは以下。
 ①開門1時間前の入場
 ②試合後のバーベキューディナー
・バッティング・プラクティス:試合終了後のメインフィールドでバッティング練習が行える
・スコッツデール・ジャイアント・レース:ランニングイベント
・シーズンチケットホルダー・イベント:
 ①ビール等5杯
 ②ジャイアンツ・ダッグアウト・ストアでのディスカウント(20~30%オフ)
 ③選手との交流
・ジャイアンツ・ダッグアウト・ストア
・セーフティ・ウォーク:試合開催日の開場1時間前にはスタジアムの安全性を確認するためのセーフティ・ウォーク等への参加

・AZSTAのさまざまなデータの中から、地域経済効果に関与する「スタジアム観客数」「スタジアム内消費金額」「総滞在日数」「滞在期間消費金額」より因果関係を分析してみた。その結果「スタジアム観客数」の増加により「スタジアム内消費金額」および「滞在期間消費金額」に影響を及ぼすことがわかる。これによりジャイアンツのビジネス拡大とともにスコッツデール市における地域経済の促進と雇用促進につながることが推測できる。「スタジャム内消費金額」および「滞在期間消費金額」は州税および地方税として行政に”お金が落ちる”ことになる。スコッツデール市のスポーツファシリティ及び商業施設の整備とジャイアンツ側のさまざまなマーケティング戦略とがリンクしながら現在のカクタス・リーグにおけるビジネス効果を創出しているのである。スポーツチームとしてのジャイアンツと行政側のスコッツデール市との共同マーケティング効果であり、日本においても取り入れるべきケーススタである。

・この様相をみてスタジアムとは一体なにか?とつくづく考える。社会学的にいえば共同体の基盤と考えられるだろうか。メジャーリーガーの素晴らしいプレー(内野手は本当に上手い!)を追う人々。またビールを飲みながら談笑するグループ。芝生で団らんする家族。プレーランドで遊ぶ子どもたち。日本の球場の雰囲気とは全く違う。各々がこのスポーツイベントを心から楽しんでいるのである。イベントとは「俗からの脱出」と大学院時代によくたたき込まれた。その脱出先は「聖」なのか「遊」なのか。どちらにしても自らの意思と地域に委ねながら一つの共同体を形成する。スポーツにおけるスタジアムはそのインフラの一つを司るのではないだろうか。そしてそのインフラを支えるメジャーリーガーやスタッフたち。そのインフラを強化することで、社会的課題の解決にまで結びつくのではないか。それがまさにスポーツマネジメントの本質ではないだろうか。今、そのインフラの中にいると思うと興奮が止まらなくなる。

・開幕前からメディアルームを陣取ってきたメディア関係者も、カクタス・リーグ開幕となればその雰囲気も違ってくる。記者はチーム側が指定する席に座る。チーム側は最高のおもてなしでメディアを迎え、いい記事の執筆を促している。メディアルームの飲食は基本的にフリー。かなりのボリュームである。食事をとりながら記者同士また記者とジャイアンツ広報たちの会話が弾む。記事ネタとなる内容の濃い豊富な情報が掲載されているメディアガイドも用意されている。市販されてもおかしくないほどの内容である。またコンパクトに加工されたロスターカードは、カメラマンも大絶賛だった。スプリングトレーニングキャンプ入りしてるジャイアンツの広報担当は4名。試合中はメディアルームの上座に陣取り、交代選手、個人成績など絶妙なタイミングでアナウンスを入れる。記者にとっては有り難い対応だ。本日ジャイアンツは7ー8でd残念ながら黒星。でも関係者にいわれると”It's OK!”らしい。試合終了後グランドではいつものラン・ザ・ベースが始まっている。子どもからおじいちゃん・おばあちゃんまでが参加する。いつも通りグランド整備も終了し、試合終了後約2時間が経過するも、メディアルームにはまだ多くの記者が居残っていた。

・新ロゴもようやく決定し、企業の東京2020国内オフィシャルスポンサーへの参画発表が相次いだ。東京2020オリンピックゴールドパートナーはすでに15社。またオフィシャルパートナーは27社となった。その最高位である「TOP」には、これまでもスポンサーを続けるパナソニック社に加え、ブリヂストン社、トヨタ社が加わって日本企業からは3社となり、合計12社となった。この3社とも北米において積極的なスポーツマーケットへのスポンサーシップを展開している。この12社は1業種1社の排他的独占権が遵守されているのがわかる。IOCではオリンピック開催国の地場自動車企業への配慮であろうか、これまで自動車系企業は国内パートナーに止まっていた。トヨタ社はTOPスポンサー初の自動車企業である。一方、国内パートナーはどうか。国内最高位となるJOCゴールドパートナーは現在15社。今後もその数はまだまだ増えそうな空気も漂っている。ITベンダーでは富士通が就いた。しかし同日にNECもゴールドパートナーに就く。この2社はご承知の通り同業のライバル企業である。他にも、みずほ銀行と三井住友銀行、東京海上日動生命と日本生命。俗に言う「東京方式」である。すでに同業一社の排他的独占権の様相を伺うことはできず、もはや「お金集め」と感じざるをえない。ビジネスを細分化したカテゴリの拡張は排他的独占権によるクライアントメリットを希薄にしているように筆者は感じる。これは果たしてJOCの戦略なのか。それとも仲介する大手広告代理店の販売戦略なのか。ビジネス領域の細分化によってその排他性を保持する戦略ととらえることもできるが、金融関係や保険関係などはどうか。ビジネス領域細分化によるカテゴリの限定は、企業のマーケティング活動を特定し、幅広くビジネス展開をする大企業各社にとってネガティブなものになるのではないだろうか。その領域のみだけで今後4年間にわたりマーケティング活動するわけである。その間にマーケットが変貌することも考えられる。はたしてその費用対効果は如何なものであろうか。各企業は、このタイミングでこのムーブメントに乗り遅れないよう何らかの形で東京2020に参画したい。それは事実である。しかしそれが単なる「お金集め」に利用されていないだろうか。そのお金を集めるには国内大手広告代理店一社のみ。あの手この手でスポンサー企業を募れば募るだけ同社の売上げになるわけだ。そのプロモーション活動もアンブッシュ・マーケティングのリスクを鑑み同社経由の商いとなる。そのマージンだけでも相当な売上を計上することになる。同社ははたして本当にスポーツを通じて我が国を豊かにしたいのだろうか。企業理論が先行する日本のこのオリンピックの商流はスポーツ先進国が掲げるスポーツマーケティングとは若干違うように感じる。

・現在、アメリカプロスポーツリーグ及び各チームは自社内にマーケティングセクションを設けて中長期的なマーケティング戦略を模索している。そのビジネスターゲットは将来的にお客様となる10代前半の子どもたちであるという。もちろん、直近の売上に繋がるチケット販売はチケットセールス部門が担当しており365日セールスを強化している。両部門とも明確なミッションのもとで業務が遂行されている。基本的に広告代理店やテレビ局を介さないビジネスモデルは日本のスポーツビジネスモデルと根本的に違い、お客様とのWin-Winの関係が直接構築されている。アメリカスポーツビジネスは高い協議パフォーマンスとリンクしながらも年々進化を遂げているのである。

・日本のスポーツビジネスにおけるスポンサーシップはどうか。依然としてメディアバイイングの意識が強く感じられる。国内スポーツイベントにおいてもスポンサーシップは脚光を浴びるものの、その構造には大きな問題がある。それは①メディアがスポーツイベントの主催するケースが一般的であること、②メディアと資本関係に持つプロスポーツチームが存在すること、③広告代理店を仲介してのビジネスが一般的であることである。

・メディアではなく企業が主催するスポーツイベントもある。日本のプロゴルフトーナメントである。特に女子プロゴルフトーナメントは、近年の若手ゴルファーの活躍もあり、活況を呈していると言われている。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)によると2016年シーズンは1試合増えて計38試合が開催されて賞金総額は35億2000万円で、4年連続で過去最高額を更新した。しかしLPGAが主催するトーナメントはメジャーと称される3トーナメントに留まる。その他のトーナメントはメディアを含めた企業が主催する。企業が主催する場合、メディアは「共催」「協力」または「後援」として位置づく。実はゴルフトーナメント開催の場合、トーナメント期間中のゴルフ場使用料、賞金総額、観戦用ギャラリースタンドの設置などすべての費用を主催企業が負担する。またLPGAにもツアー公認料として250万円を支払う。さらに共催するテレビメディアに放映権を売るのではなく、逆にCM提供料を払うのである。収入は僅かに売れるチケット収入のみで、全体運営費用の数%にしか過ぎない。実際に利益を生むことは不可能である。各主催企業ともゴルフトーナメントにかかる費用は主に広告宣伝費から充当する。一般的なイベント運営ならば巨額赤字を計上することになり翌年の開催など到底あり得ない話である。はたして企業はゴルフトーナメントを主催する意味があるのか。近年の低迷する視聴率、高額化する賞金総額など主催企業にかかる負担は大きい。しかし毎週のように開催されるゴールフトーナメント。2016年シーズンの賞金ランキング上位10位以内には韓国選手を筆頭に海外勢が6名連なる。2016年の賞金女王はイ・ボミ選手。2年連続で賞金女王だ。国内ゴルフトーナメントの開催の真価について、主幹すべき組織である日本女子プロゴルフ協会のマネジメントが問われているのではないだろうか。

良かった本まとめ(2016年下半期)

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