(2002年)06月19日の朝日新聞は大学トップ30への動きをこう報
じています。
「世界最高水準の研究をめざして、国公私立の大学を選び国の予
算を重点的につける『21世紀COEプログラム(トップ30)』の公
募が始まった。国によるランクづけへの是非が問われたこの事業は
9月末に結果が出る。」
この記事の横にこれについての加藤寛氏(千葉商科大学学長)の
批判文(多分談話)が載っています。私はこれに賛成ですので、こ
れを紹介し、少し補い、私見を述べます。
「第1に、国際競争力を高めるねらいならば、池の中で鯉(こい
)を飼ってはいけない。日本という池ですでに太っている旧帝大や
私大の鯉をみて、『つやがいい』『これは大きい』と言って国費と
いう餌でさらに太らせる。これでは意味がない。
海外の大学や教員を日本に入れて大海で競争をさせなければ本当
に強い魚は育たない。
第2に、差をつけることに国費を出してはいけない。評価に国費
を入れたら評価がゆがむ。研究は五輪じゃない。順位をつけて賞金
を上げても、国全体の学問水準を上げないと、国際的な研究は育た
ない。
第3に、生産者本位で消費者本位じゃない。学生や社会の評価を
観点に入れるのは当然だが〔当然なのに〕、そうした基準がない。
第4に、対象となる分野が古い。これ〔トップ30の対象とされて
いる分野〕は18世紀の分野。あてはまらない学問もたくさんある。
人文社会系は2つしかなく、学問全般の競争には使えない。
第5に、結果の公表がない。反論の機会も認めるべきだ。
〔要するに〕これは規制緩和に逆行する保護政策にすぎない。
〔ではどうしたらいいかというと〕大学はすべて私立にすればい
い。学生と教員が一緒になって大学祭のように研究〔と教育〕をす
べて公開する。
民間の人が見て、『面白い。会員になろう』と資金を出す仕組み
にする。国はどんな研究や教育をしているかの情報を流すだけでい
い。
国費はむしろ、市場に直結しない基礎研究をしている人や哲学者
にこそ出すべきだ。
後は、学生に国費を配分し、どの大学でも同じ授業料で入学でき
るようにする。その方が国費も生きる。」
私は、国公立の大学と研究機関はいったん民営化し、どうしても
国公立にする必要のあると分かったものだけ、公営化し直すといい
と思います。
その時でも職員は5年以下の任期制にするべきだと思います。終
身雇用が甘えを生んでいるからです(そもそも公務員はすべて任期
制にするべきです)。
「市場に直結しない基礎研究や哲学者に国費を」出すというのは
、私のような「市場に直結していない哲学者」にはありがたいです
が、誰がどのように選ぶのか、いくら出すのかといった問題があり
、それを扱う役人のポストが必要になりますから、止めた方がいい
と思います。
要するに、文部科学省の「改革」とか「改訂」とかはみな、役人
の保身のための仕事作りなのだということを見抜く必要があると思
います。そうすれば、本当の改革は役人を出来るだけ減らすような
事をしなければならないということになります。
情報の公開を国の仕事としていますが、これも賛成できません。
そういう事は経営主体に法律で義務づけるのが筋だと思います。そ
して、民間人に対して、「大学と教員を自由に評価しましょう」と
首相が呼びかければそれで十分だと思います。
学費補助に国費を使うのは大賛成です。しかし、大学によって授
業料が違うので、例えば医学部などは授業料がとても高いので、す
べての学生が同じ授業料を払うようにするとなると、奨学金の金額
を授業料との関係で変えるのでしょうか。
ともかくこれはいい事です。6月22日の朝日新聞の「土曜自説」
で民主党の小沢鋭仁氏は「公共事業より学費貸与を」という主張を
展開しています。これも同じ考えだと思います。
4月12日付けの朝日新聞は東京薬科大学の多賀谷光男教授の調査
結果を伝えています。それによると、東大への国費投入は学生1人
当たり 515万円で断然トップなのに、教員の研究業績はそれに比例
しておらず、平均レベルだ、ということです。
つまり、今でさえ文部科学省は東大を依怙贔屓(えこひいき)し
ているのです。この差別を更に強めるのが今回のトップ30なのだと
思います。そして、こういう「仕事」を作ることで文部科学省の組
織も太りつづける、というのがこれの狙いなのだと思います。
トップ30構想は中止するべきです。国公立大学は民営化するべき
です。そして、第57号で述べましたように、大学の規模について法
律でその上限を定めるべきです(例えば学生数の総合計を1万人以
下にする、とか)。
文部科学省の大学部門を出来るだけ縮小して残った部門は文化庁
に移すべきです。高校以下を担当する部門は都道府県に委譲するべ
きです。つまり、文部科学省をなくすべきです。これが当面の改革
であるべきだと思います。
(2002年08月04日発行)
じています。
「世界最高水準の研究をめざして、国公私立の大学を選び国の予
算を重点的につける『21世紀COEプログラム(トップ30)』の公
募が始まった。国によるランクづけへの是非が問われたこの事業は
9月末に結果が出る。」
この記事の横にこれについての加藤寛氏(千葉商科大学学長)の
批判文(多分談話)が載っています。私はこれに賛成ですので、こ
れを紹介し、少し補い、私見を述べます。
「第1に、国際競争力を高めるねらいならば、池の中で鯉(こい
)を飼ってはいけない。日本という池ですでに太っている旧帝大や
私大の鯉をみて、『つやがいい』『これは大きい』と言って国費と
いう餌でさらに太らせる。これでは意味がない。
海外の大学や教員を日本に入れて大海で競争をさせなければ本当
に強い魚は育たない。
第2に、差をつけることに国費を出してはいけない。評価に国費
を入れたら評価がゆがむ。研究は五輪じゃない。順位をつけて賞金
を上げても、国全体の学問水準を上げないと、国際的な研究は育た
ない。
第3に、生産者本位で消費者本位じゃない。学生や社会の評価を
観点に入れるのは当然だが〔当然なのに〕、そうした基準がない。
第4に、対象となる分野が古い。これ〔トップ30の対象とされて
いる分野〕は18世紀の分野。あてはまらない学問もたくさんある。
人文社会系は2つしかなく、学問全般の競争には使えない。
第5に、結果の公表がない。反論の機会も認めるべきだ。
〔要するに〕これは規制緩和に逆行する保護政策にすぎない。
〔ではどうしたらいいかというと〕大学はすべて私立にすればい
い。学生と教員が一緒になって大学祭のように研究〔と教育〕をす
べて公開する。
民間の人が見て、『面白い。会員になろう』と資金を出す仕組み
にする。国はどんな研究や教育をしているかの情報を流すだけでい
い。
国費はむしろ、市場に直結しない基礎研究をしている人や哲学者
にこそ出すべきだ。
後は、学生に国費を配分し、どの大学でも同じ授業料で入学でき
るようにする。その方が国費も生きる。」
私は、国公立の大学と研究機関はいったん民営化し、どうしても
国公立にする必要のあると分かったものだけ、公営化し直すといい
と思います。
その時でも職員は5年以下の任期制にするべきだと思います。終
身雇用が甘えを生んでいるからです(そもそも公務員はすべて任期
制にするべきです)。
「市場に直結しない基礎研究や哲学者に国費を」出すというのは
、私のような「市場に直結していない哲学者」にはありがたいです
が、誰がどのように選ぶのか、いくら出すのかといった問題があり
、それを扱う役人のポストが必要になりますから、止めた方がいい
と思います。
要するに、文部科学省の「改革」とか「改訂」とかはみな、役人
の保身のための仕事作りなのだということを見抜く必要があると思
います。そうすれば、本当の改革は役人を出来るだけ減らすような
事をしなければならないということになります。
情報の公開を国の仕事としていますが、これも賛成できません。
そういう事は経営主体に法律で義務づけるのが筋だと思います。そ
して、民間人に対して、「大学と教員を自由に評価しましょう」と
首相が呼びかければそれで十分だと思います。
学費補助に国費を使うのは大賛成です。しかし、大学によって授
業料が違うので、例えば医学部などは授業料がとても高いので、す
べての学生が同じ授業料を払うようにするとなると、奨学金の金額
を授業料との関係で変えるのでしょうか。
ともかくこれはいい事です。6月22日の朝日新聞の「土曜自説」
で民主党の小沢鋭仁氏は「公共事業より学費貸与を」という主張を
展開しています。これも同じ考えだと思います。
4月12日付けの朝日新聞は東京薬科大学の多賀谷光男教授の調査
結果を伝えています。それによると、東大への国費投入は学生1人
当たり 515万円で断然トップなのに、教員の研究業績はそれに比例
しておらず、平均レベルだ、ということです。
つまり、今でさえ文部科学省は東大を依怙贔屓(えこひいき)し
ているのです。この差別を更に強めるのが今回のトップ30なのだと
思います。そして、こういう「仕事」を作ることで文部科学省の組
織も太りつづける、というのがこれの狙いなのだと思います。
トップ30構想は中止するべきです。国公立大学は民営化するべき
です。そして、第57号で述べましたように、大学の規模について法
律でその上限を定めるべきです(例えば学生数の総合計を1万人以
下にする、とか)。
文部科学省の大学部門を出来るだけ縮小して残った部門は文化庁
に移すべきです。高校以下を担当する部門は都道府県に委譲するべ
きです。つまり、文部科学省をなくすべきです。これが当面の改革
であるべきだと思います。
(2002年08月04日発行)