Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 神楽はぼくの恋人 第8回

2011-02-28 01:25:16 | 日記
 雄一はネット検索で、
「安芸太田町 観光地情報 イベント情報」
 を見た。
頭の中は八岐の大蛇の事で一杯だった。
「はやく神楽団に入りたいなあ」
 はやる気持ちを抑えるのに一苦労するのだった。
やがて夜が明けて美しい安芸太田町の朝が来た。
「本当の素晴らしい自然だ。日本の夜明けはここから始まるような気がする」
 雄一の偽らざる気持ちである。
「すばらしい土地に出会えた」
 雄一は体の底から喜びが湧き上がってきた。
ネット検索をした後、
「今日は温井(ぬくい)スプリングス」
「自然生態公園」
「龍姫湖(りゅうきこ)」
 を見る事に決めたのである。

*ネット検索をしてみてください。写真で見るだけでも美しい風景がよく分かります。

二宮正治の短編小説 神楽はぼくの恋人 第7回

2011-02-27 02:23:57 | 日記
 三段峡を見た夜、雄一は夢を見た。
「三段峡に八岐大蛇が出てきて雄一がそれを退治する」
 こんな夢だ。
目が覚めた時汗をびっしょりと掻いていた。
「八岐大蛇は日本人の心を掻き立てる。すばらしい」
 雄一はため息をついた。
「早く神楽を習いたい」
 こう思ったら寝れなくなった。
夜車を運転してまた山県郡安芸太田町に向かったのである。
 夜の風景は神秘的だった。
「今にも八岐の大蛇が出てきそうだ」
 雄一は遙か古代に思いをめぐらせていた。
「古代の人々と一体になったような気がする」
 夜の神秘を感じながら雄一は車を走らせていた。
山に向かって呟いた。
「八岐の大蛇よ出て来い」
 

二宮正治の短編小説 神楽はぼくの恋人 第6回

2011-02-26 08:27:28 | 日記
 雄一は広島市での生活にも慣れたある週末に、広島県安芸太田町の三段峡に出かけた。
(大自然が作り出した絶景である。ネット検索で広島県山県郡安芸太田町三段峡の写真を見ていただきたい。写真で見るだけでその美しさがよく分かる)
 雄一はあまりの美しさに声も出なかった。しばらくして、
「すごい、広島に来た甲斐があった。なんという絶景だ」
 こう呟くと、
「そうです、この三段峡は四季折々の美しさがあるのです。無限ですよ」
 地元の人が誇らしそうにこう言った。
「本当だ。この風景を見ると心を洗われる。この世に生きていてよかったと思う」
 雄一は自分の人生を振り返っていた。
そして、ロックギタリストとしての地位を捨てた事より、今から神楽を自分の恋人として生きる決意を固めたのだった。
「神は私に素晴らしい場所を紹介してくれた。本当に有難い」
 雄一は生きている喜びをかみ締めていたのである。
「山県郡安芸太田町は神楽の本場だ。更なる素敵な出会いがあるだろう。まず今日はこの三段峡の美しい風景を楽しもう」
 雄一の足取りは軽かった。

二宮正治の短編小説 神楽はぼくの恋人 第5回

2011-02-25 04:18:43 | 日記
 雄一は広島に住み着いて、神楽との出会いを待った。
「人生に光が差した」
 心の底で雄一はこう思った。
「今までも表面上はスポットライトを浴びて華やかな人生を歩んで来たが、
「俺の人生はこれでいいのだろうか」
 と自問自答しながら生きてきたのだ。
「今からは自分の人生に納得して生きてゆける」
 こう思うのだった。
雄一は毎日お好み焼きの店に通って地元の人達と交流するのが日課となっていた。
 やがて広島の人々は、
「ロックギターの大スター、ユウイチは広島の女と恋に落ちて広島に住み着いたらしい」
 と噂するようになったが、雄一を見てどうこう言う事はなかった。
「みんな見て見ぬふりをしてくれていた」
 お好み焼きを食べさせる店で、
「神楽好き」
「大好き」
「どこで見るの」
「お祭りの時」
 こんな会話をする時、雄一は無常の幸せを感じるのだった。

二宮正治の短編小説 神楽はぼくの恋人 第4回

2011-02-24 04:37:19 | 日記
 神楽の事で頭が一杯だった雄一は新幹線で広島までの時間がやけに長く感じられた。
「早く広島に着かないかなあ」
 この思いが頭を支配してイライラしっぱなしだったのである。
やっとの思いで広島に着くと、
「そうだせっかく広島に来たのだからお好み焼きを食べよう」
 と思いつき、広島の街の中心部へと足を運んだ。
牡蠣(かき)入りのお好み焼きを食べながらビールを飲んでいると、
「あんたあ、ロックの大スターのユウイチさんじゃあないかい」
 と回りの人が声をかけてきた。
「人違いです」
 雄一がこう言うと、
「まあ、そういう事にしといてあげよう。お忍びで広島に来たんじゃろうけえ」
 と言葉を返した。
別の人が、
「広島は矢沢永吉やらいろんなミュージシャンをようけ(たくさん)出しとるけえ、ロックを好きなやつがウヨウヨおるよ。気をつけんさいよ」
 とこう忠告してくれた。
雄一が、
「広島の人は神楽が好き」
 と聞くと、
「もちろん祭りになったら絶対に神楽をやるけえねえ」
 と言葉が返ってきた。
「面白くなってきた」
 雄一は自分のこれからに希望が沸いて来るのだった。