Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 若者物語 太郎の青春日記 第39回

2011-02-07 03:57:04 | 日記
 昭和五十年四月太郎は東洋大学の4年生になった。単位をすでにほとんど取っていたので、月曜日と火曜日に学校へ行けばよかったのだ。
「大学生、それも東洋大学生は気楽な稼業ときたもんだ」
 と大先輩の植木等の真似をして仲間や後輩に歌って聞かせて笑いを取った。
だが、そんな太郎の安易な気持をふっとばすような世の中になったのである。
「オイルショックの後の不景気が世の中を襲ったのである」
 今平成二十三年は戦後の中でもっとも大学生の就職が難しい時期であるが、昭和五十年太郎の時代も戦後でもっとも就職の難しい時代と言われたのだった。
「時はあっという間に過ぎてゆく、気がついたら夏が間近に迫っていた」
 太郎は東京都内、大阪、故郷の広島と飛び回る日々が続いた。
そんな日々を送っていた太郎だったが、ある日太郎の元に三年生が訪ねてきた。
「先輩、今の一年生はまるで子供ですよ。小学生のようだ。何とかしてくれませんか」
 三年生は涙を浮かべていた。
「分かった、何とかしよう」
 太郎は東洋大学白山キャンパスに出向いて一年生に接した。
「本当に小学生のようだなあ、こりゃだめだ」
 太郎は一年生に手取り足取り大学生活のイロハを教えた。
一年生は昭和三十一年生まれの年代なので、上級生とは考え方がまるで違うのである。
「イッヒッッヒ、小学校の児童会の役員だった頃を思い出すぜ」
 太郎は自虐的な笑いを浮かべた。