Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 神楽はぼくの恋人 第4回

2011-02-24 04:37:19 | 日記
 神楽の事で頭が一杯だった雄一は新幹線で広島までの時間がやけに長く感じられた。
「早く広島に着かないかなあ」
 この思いが頭を支配してイライラしっぱなしだったのである。
やっとの思いで広島に着くと、
「そうだせっかく広島に来たのだからお好み焼きを食べよう」
 と思いつき、広島の街の中心部へと足を運んだ。
牡蠣(かき)入りのお好み焼きを食べながらビールを飲んでいると、
「あんたあ、ロックの大スターのユウイチさんじゃあないかい」
 と回りの人が声をかけてきた。
「人違いです」
 雄一がこう言うと、
「まあ、そういう事にしといてあげよう。お忍びで広島に来たんじゃろうけえ」
 と言葉を返した。
別の人が、
「広島は矢沢永吉やらいろんなミュージシャンをようけ(たくさん)出しとるけえ、ロックを好きなやつがウヨウヨおるよ。気をつけんさいよ」
 とこう忠告してくれた。
雄一が、
「広島の人は神楽が好き」
 と聞くと、
「もちろん祭りになったら絶対に神楽をやるけえねえ」
 と言葉が返ってきた。
「面白くなってきた」
 雄一は自分のこれからに希望が沸いて来るのだった。

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