現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

「大河内淳矢」君、故郷に錦を飾る

2014-05-25 21:23:08 | 虚無僧日記
先日、「大河内淳矢」君が 名古屋にみえました。
19歳で わが一路会に入会し、尺八を習い始めて
わずか半年後には『春の海』を大舞台で吹いた
という伝説の人。

それが 彼の人生にとって 良かったのか 悪かったのか。
就職を棒に振って、桐朋音大の邦楽科に進み、「NHK
邦楽技能者育成会」にも入って、尺八のプロとして
修行すること7年。

その彼が、来月6月29日、故郷の西尾市文化会館で
リサイタルを開きます。大ホール、1200席です。
尺八で 1,200人も集められるのか。一路会全員を
動員してもせいぜい10名。申し訳ないと思っていたところ、
ところがところが、もうチケットは完売とのこと。
唖然。彼の小中学校の同級生たちや、両親をはじめ
親戚中が応援してくれているとのこと。まさに彼の
人柄です。

1,200人も集めたら、西尾市では一躍 有名人です。
尺八をやっていて良かったと思える瞬間でしょう。



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尺八のパワーアップ

2014-05-25 21:15:35 | 虚無僧日記
来月6月29日、西尾市文化会館大ホールでリサイタルを
開く「大河内淳矢」君。

「プログラムには載せませんが、サプライズで、師匠
(私一路)に登場していただき、一緒に『鹿の遠音』を
吹いてください」とのこと。うれしいやら、気恥ずかしいやら。

それで、下合わせにみえたというわけですが、7年ぶりに聴く、
彼の尺八の音と、パワーには圧倒されました。さすがプロ。

彼の尺八は「泉州」銘。三塚氏の尺八。三塚氏の尺八も
随分進化している。音色、ボリュームともにすばらしい。

私の尺八は ネプチューンの「スーパー尺八」。手孔が大きい。
名古屋では一番と自負していたが、全く井の中の蛙。
あれから毎日 尺八の中を削ったり塗ったり。修理しては
虚無僧に出て、人混みの喧騒の中で試し吹きをしています。


尺八は吹くものに非ず

2014-05-25 20:27:46 | 尺八・一節切
「尺八は、吹くものに非ず」。以前に書いた再掲です。

尺八は、強く吹けば吹くほど、息の風音がシャーシャー
いって、音にはなりません。その意味で、お弟子さんには
「尺八は 吹いたら 鳴らない。もっと、そっとそっと」と
教えています。

『邦楽ジャーナル』、「三塚幸彦」氏の「目から鱗の
尺八上達術」は、毎回、私の思うところと同じで、
お弟子さんに「ホラ 見なさい。ここにもそう書いて
あるでしょう」と、利用させていただいています。

「抵抗感と息の向き」では、
「尺八は、素人が吹くと、フウーと息が抜けていく
ような感じですが、プロは 音に力があります。
吹く時、唇に「抵抗感」を感じます」と。

私も同じですが、このことをお弟子さんに話しても、
なかなかその「抵抗感」がつかめないようです。

三塚氏は「吐き出した息が歌口で引き裂かれることで
音が出る とか、管の中に空気が流れることで 音が
出る と勘違いしている人がいます」と。

まさに そうなのです。尺八の管内に、プロは息を
吹き込んではいないのです。

管尻の穴に ティッシュを充てて、手孔を全部ふさいだ
筒音を出します。プロはティッシユが揺れません。

以前、CMで、民謡歌手の金沢明子が、大音声を
張り上げて歌っても、“口の前に立てたロウソクの
炎が揺れない”というシーンがありました。あの
CMは意外にも みなさん見知っているようです。

尺八も同じです。プロの息は管の中を吹き抜けては
いないのです。

最近の研究で、尺八の発音のメカニズムは、吹き口を
下唇で充分にふさぎ、息を歌口に当てることで、歌口の
裏側に真空状態ができ、中の空気が激しく渦巻くことで
振幅が起こるとのこと。歌口が振動して鳴るというのも
勘違いです。

では、どうしたら「管内の空気を振動させれるのか」。
要は、腹筋を使って、喉の奥から強く吐き出そうと
する息を唇で止めているのです。これが“抵抗感”です。

ですから、腹筋と唇の周りの頬の筋肉を強くする
ことです。


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千日回峰行の「酒井雄哉」師、修行も利他行

2014-05-25 13:15:16 | 虚無僧日記
天台宗・比叡山延暦寺の荒修行「千日回峰行」を二度
貫徹したことで知られる「酒井雄哉(ゆうさい)」師。

1926年(大正15年) 生。 2013年(平成25年)昨年 87歳で
他界された。

1回目の千日回峰行は、1973年(昭和48年)に開始し、
1980年(昭和55年)10月に満行した。この行の様子は
1979年(昭和54年)1月5日、NHK特集『行~比叡山・
千日回峰~』で放送され、私も見て知ってはいた。

その酒井氏。ネットで調べると、なんと、昭和16年
(1941年)慶應義塾に入学。落第生で卒業が危ぶまれため、
予科練に入隊。特攻撃隊員として終戦を迎えた。

戦後はラーメン屋を開業するが火事で焼けてしまい、
菓子屋、証券会社代理店など職を転々とするが、
いずれもうまくいかず、妻は結婚2ヶ月目で自殺
という暗い過去を負っている。

NHK特集でも「“何をやってもダメ、何の能力もない
自分だから、こうして生きる他は無い」というような
ことを話されていた。

「千日回峰行」を終えて「大阿闍梨」となって、人々の
尊崇を受けるようになっても、驕らず、誇らず、温和な
人柄だった。

また、酒井師の言葉に「こうしてお参りしてくださる方々に
支えられて生かされている。私には、この方たちの幸せを
祈ることしかできない。だから ひたすら祈るのです」と。

「寺は、世間からの脱落者が、逃げ込む場所。修行は、
自分のためだけにするもの」と思っていたが、修行も
「人の為にする利他行」なのだと教えられた。


さて、虚無僧の私。昨日、名古屋駅前で立っていると、
「天台宗の○○阿闍梨です」と名乗られ、手を合わせて
「ナムナムナムナム・・・」とお経を唱えられた。

(げっ、本物!?)。ここで言葉を発するとボロが出る。
ひたすら尺八を吹く。そして ご喜捨いただいた。
布施をいただいた時に唱える経文もあるようだが、
虚無僧はひたすら尺八を吹くのみ。それでいいのだ。。

つづいて、品の良いご年配のご婦人が「お願いします」と
布施を出された。「皆様の平和と幸せを祈らせていただきます」
と呟くと、「ありがとうございます」と言われて立ち去られた。

虚無僧最後の人「谷狂竹」も「自分は尺八を吹くしか能が無いから、
人々の心を安寧を願って尺八を吹く」というようなことを
言っていた。私も今 同じ気持ちに なってきた。



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