日本政府のフィリピン台風支援遅れはフィリピン政府の要請にアメリカとの差があるのか

2013-11-14 09:22:14 | 政治



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      《畑総合政策会議議長 「国会審議活性化のための国会改革のあり方」資料発表》

 超大型台風30号(国際名:ハイヤン、現地名:ヨランダ)はフィリピン中部に11月8日(2013年)にも上陸の恐れがあると予報され、大きな被害が想定される地域の住民は台風前夜の11月7日昼の政府の避難警告に始まり、同日18時頃に切り替わった避難命令に従って避難を開始し、そして予報通りに11月8日午前にフィリピン中部へ上陸し、大きな被害をもたらした。

 〈事前予測は最大風速87m、最大瞬間風速98m。2005年にアメリカで発生したハリケーン・カトリーナに匹敵する「観測史上最大規模の台風となるのではないか」と想定されていた。〉と書いている記事もある。(《「観測史上最大規模」の台風30号、フィリピン・セブから現地レポート》ハフィントンポスト/土橋克寿・投稿日: 2013年11月09日 16時07分)) 

 そして被害は大惨事とも言うことができる程の甚大且つ広域的なもので、国連の担当者は上陸3日後の日本時間の11月12日未明、フィリピン全土で犠牲者が1万人に上るおそれがあり、66万人が家を失って食料や水、医薬品を必要としていると発表した。(NHK NEWS WEB

 要するに各国の気象台がフィリピン中部に上陸を予測した時点で、上陸した場合の台風の超大型の勢力と比較した被害の大きさを想定し、状況に応じた支援の必要性に備えていなければならなかったはずだ。

 アメリカの現地支援行動開始は11月8日午前台風上陸から3日後の11月11日だから、早かったのかどうか分からないが、少なくとも他国に先駆けた早い行動であったのは確かなようである。

 台風30号の被害が拡大しているフィリピン中部レイテ島に11月11日、米海兵隊部隊が入り、90人態勢で救援活動を開始している。(時事ドットコム

 この11月11日が午前か午後か分からないが、午後には島の中心都市タクロバンの空港に救援物資を載せた米軍のC130輸送機2機が到着したと上記記事は伝えている。

 90人は沖縄駐留米軍からの派遣で、後から約180人が追加派遣予定だとのこと。

 更に同11月11日、米国防省は香港に停泊中の空母「ジョージ・ワシントン」に派遣命令を出し、巡洋艦2隻、駆逐艦2隻、補給艦1隻もフィリピンに向かっていて、2~3日中に現地に到着、活動を開始すると「時事ドットコム」が伝えている。

 日本の行動も素早かった。11月11日米海兵隊90人態勢現地支援活動開始1日前の11月10日、フィリピンに国際緊急援助隊・医療チームを派遣する方向で検討に入り、同日の11月10日、支援ニーズを把握するため、外務省(1名)と国際協力機構(JICA)(1名)の合計2名による調査チームを現地に送った。

 日本時間で2010年1月13日の早朝発生の、現地時間で1月12日夕方発生の、諸外国と比較して支援の遅れたハイチ巨大地震でも調査チームを現地に派遣している。

 このことは2010年1月18日の当ブログ記事――《ハイチ地震、緊急調査チームを送ったのは日本だけではないのか-『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に、その必要性の可否を書いた。

 中国の国際救助隊は地震発生から約14時間前後の地震発生当日の北京空港からの迅速な出発を行っている。緊急調査チームといった組織は送っていなかったということである。

 国際緊急援助隊・医療チームの中には〈既に訓練を受け、災害現場を踏んでいる者も含めているだろうから、各種情報・知識を身体に叩き込んでいるはずである。先ず災害現場に飛び込んで、直面した現場の状況に応じてどうしたらいいか、どうすべきか自身の知識情報と経験と技術を駆使・応用させながら事に当たると同時に仲間とも議論して、その現場にふさわしい行動のルールを自らも学び、相互に助け合って組み立てていく臨機応変の応用力さえあれば、災害現場が異なっても、格好はついていくものではないだろうか。〉と書いて、調査チームの不必要性を主張した。

 但し国際緊急援助隊・医療チーム派遣はハイチ地震の時も相手政府の要請に応じた派遣であったのと同じく、今回もフィリピン政府からの要請を要件としている。

 〈菅官房長官は(11月)11日午前の記者会見で、猛烈な台風30号で多数の死傷者が出たフィリピンの要請を踏まえ、国際緊急援助隊・医療チーム25人を派遣すると発表した〉(YOMIURI ONLINE

 11月11日午後3時過ぎ、国際緊急援助隊・医療チーム25人は成田空港から出発。

 11月11日午後の記者会見。

 菅義偉官房長官「フィリピン政府の要請があれば、医療などの支援のために自衛隊を迅速に派遣できるよう政府内で調整している」(時事ドットコム

 国際緊急援助隊・医療チーム25人派遣もフィリピン政府の要請を経た支援行動だから、自衛隊派遣も「フィリピン政府の要請」を要件とするのは当然のことであろう。

 フィリピン政府の要請が出たのだろう、11月12日、小野寺防衛相が自衛隊に派遣命令を出した。パンパカパーン、パンパカパーン、バカ、バカ、パンパカパーンとファンファーレが頭の中で鳴る。

 〈本日(11月12日)、フィリピン共和国から、フィリピン中部における台風被害に関し、自衛隊の救援活動について要請があり、本日、外務大臣から国際緊急援助活動の実施について協議がありました。

 これを受けて、防衛省としては、国際緊急援助活動を行うため、防衛大臣から「国際緊急援助活動の実施に関する自衛隊行動命令」を発出しました。本命令の概要は、以下のとおりです。

・フィリピン国際緊急援助隊を編成し、医療活動等を実施。 〉(防衛省

 11月13日とは地震発生から5日後である。しかもあくまでもフィリピン政府の要請を原則とした行動開始だとしている。50人態勢だという。

 〈統合幕僚監部から派遣する自衛官2人が同日(11月12日)中にマニラに入り、(11月)13日には自衛隊の医官ら48人も現地入りして医療活動にあたる。〉(asahi.com

 国際緊急援助隊・医療チーム25人の方は11月12日午前、フィリピンのセブ島に到着、このあと3隊に分かれてレイテ島のタクロバンに向かい、その日に医療活動を開始。

 11月13日午前の記者会見

 菅官房長官「(国際緊急援助隊・)医療チームは、きのう(11月12日)夕方から順次レイテ島に入り活動を開始している」(NHK NEWS WEB

 アメリカ海兵隊部隊90人態勢の11月11日現地救援活動開始に対して日本の国際緊急援助隊・医療チームの11月12日夕方からの医療活動開始と、11月13日からの自衛隊医官48人態勢の医療活動開始。

 自然大災害の巨大被害に対する支援は国内外を問わず、1時間を争う人命救援の切迫した危機管理であるはずだ。当然、1日の差は大きい。2日の差はなお大きくなる。

 日米、この差は何が原因なのだろうか。

 アメリカ海兵隊にしてもフィリピン政府の支援要請を受けた同じ条件下の活動開始であるはずである。ということは、日本政府はフィリピン政府の要請を待っていたのだから、その要請に日米の差があったことになる。

 だとしたら、なぜ日米にこのような差があるのか、その理由が問題となってくる。

 もし日本だけがフィリピン政府の要請を原則とした海外支援としていて、アメリカは要請を要件としていないための迅速な現地活動開始だとしたら、今度は日米の人命救援の危機管理の対応に違いが生じることになって、人命に対する姿勢の問題が出てくる。

 支援活動開始の遅れだけではない。超大型台風30号の11月8日午前フィリピン中部上陸に対して日本政府が国際緊急援助隊・医療チーム派遣の方向で検討に入ったのは上陸から2日後の11月10日であって、そしてフィリピン政府の要請を待った。

 いわば日米比較した支援活動開始の遅れはフィリピン政府の支援要請に対応していたことだけが原因ではなく、台風の進路とその勢力の大きさ、上陸した場合の被害の大きさを想定した支援の必要性に備えて前以ての支援態勢の構築を、例えムダになることがあっても、人命には変えられないのだから、進めていなかったことも原因していたはずだ。

 あるいは最近の自然災害とその被害の世界的な大規模化を計算に入れて、各国の気象台が台風30号の勢力と進路を予測した時点で、フィリピン政府に対して上陸した場合の被害の大きさに対応した支援チームを直ちに派遣してもいいだろうかと、フィリピン政府の要請の前倒し行うのも危機管理であるはずだ。

 だが、大型台風26号が直撃すると気象庁の台風情報が前以て出ていながら、台風上陸の前日出張に出かけた伊豆大島町の町長のように何も想定せず、何も備えていなかった。

 大型台風30号フィリピン上陸から5日後の11月13日、政府は最大1000人規模の自衛隊員派遣に向けた準備に入った。自然災害の世界的な大規模化に備えて上陸の予想が入った時点で事の重大性の発生可能性を想定していなければならないはずだだったが、この期に及んで初めて事の重大さにやっと気づいたようだ。

 《比支援へ千人規模の自衛隊員派遣を準備…防衛相》YOMIURI ONLINE/2013年11月13日 21:01)

 記事解説。〈925人を派遣したインドネシア・スマトラ島沖地震(2005年)を上回り、自衛隊の国際緊急援助活動としては過去最大規模になる可能性があるという。〉――

 だが、この派遣も、〈フィリピン政府との協議を踏まえ、具体的な作業内容を確定する。〉と、フィリピン政府の支援要請を前提としている。

 派遣対象は海上自衛隊最大の護衛艦「いせ」、輸送艦「おおすみ」等艦艇3隻、「C130」輸送機で、艦艇に輸送ヘリを載せ、被災地への物資輸送を担うとのこと。

 同じ内容の記事を「NHK NEWS WEB」も扱っていて、小野寺防衛相の発言を伝えている。

 小野寺防衛相「フィリピン政府と協議しながら準備している。先方から要請があることが前提だが、現地の状況を見ると、物資の輸送支援が今後、大規模に必要になると考えられる。

 東日本大震災でフィリピン政府や国民から多大な支援を受けた。日本でできる支援の一環として、自衛隊の支援態勢を準備している」――

 この記事を読むと、残る艦船は補給艦「とわだ」であり、艦載大型ヘリコプターは3機であることが分かる。確かに大型支援になることは間違いないが、フィリッピン政府の要請を条件とした派遣であることに変わりはなく、要請という条件を取り外したとしても、派遣の遅れは事実として残る。

 果たして右翼の軍国主義者安倍政権のフィリピンに対する危機管理対応は十分に機能していたと言えるのだろうか。

 実はこの災害当時国の要請を原則とした支援チームの派遣について、2010年1月22日の衆議院予算委員会で自民党の小池百合子自民党議員がハイチ地震当時の民主党無能菅政権に対して否定する立場から追及している。

 小池百合子「こちらをごらんください。ハイチの救援活動について伺わせていただきます。

 日本時間の日本時間の(2010年)1月13日の早朝、現地では12日の16時53分に発生したわけでございますけれども、それぞれ各国の対応を時系列に並べてみました。近いアメリカがすぐに駆けつけた、また、かつての宗主国であるフランスなど、ここには書いてはいませんけれども、対応が早かったと言われております。一方で、この表をごらんいただきますように、地震国日本の対応は、私は一言で言うと遅いと言わざるを得ないと思うわけでございます。また、昨日の岡田外務大臣も御答弁の中に、そんなニュアンスもしくはそういう声があったということを御紹介されていたわけでございます。

 なぜおくれたのかということでございますが、現地の治安状態がどうなっていたか情報が足りない、空港の受け入れなどの情報が足りないといったことが外務省からの報告にもあったわけでございますが、しかしながら、それはどの国でも同じことでございます。混乱する中でどうやって情報をとるのかという最初の部分では、情報の確保ということでは各国は苦労するわけでございます。

 そして、残念ながら、日本の対応はツーリトル・ツーレートと言わざるを得ないと思うわけでございまして、これは阪神大震災の折に、兵庫で、選挙区としておりました私とすれば、その真っただ中にいた。あのときは、スイスの救助犬よりも遅いじゃないかということが批判をされたわけでございまして、そのことについても皆様方の記憶に新しいところではないだろうかと思うわけでございます。

 ――中略――

 (派遣が遅れた理由の一つとして調査チームを送ってから国際援助隊・医療チームを送ったことを挙げ、そしてハイチ政府の要請を条件とした派遣も原因していると追及している。)

 そこで、ネックになってくるのが要請主義ということでございます。私は、阪神大震災のときにつくづく思いました。本当に被害を受けているところは、要請を出す人でさえ、その声も出せない状態になるということなんですね。

 であるならば、この要請主義、特に自然災害に対しての対応についての要請主義を見直したらどうだろうか、そしてまた、これらの自然災害の救援活動を容易にするような法的整備を進めたらどうだろうか、私は建設的にこのことを申し上げたいと思うんですが、総理の御感想はいかがでしょうか」――

 この質問に対して当時の岡田外相はハイチの治安悪化を理由に挙げて支援の遅れを正当化しつつ、小池百合子が言う日本政府が取っている「要請主義」には何ら触れずに緊急調査チームと国際緊急援助隊・医療チームを同時に派遣できなかったか、「政府の中で検証したい」と答えるにとどめている。

 だとしても、自民党議員の実力者でもある小池百合子が「要請主義を見直したらどうだろうか」と国会で追及し、自民党が政権を取ったのである。

 まさか民主党政権を困らせることを目的に支援の遅れを追及したわけではあるまい。あくまでも人命救助優先の熱い思いから追及したはずだ。当然、いつ起こるかも知れない外国の次の自然災害発生に備えて、支援派遣の遅れの原因となっていると見ている「要請主義」について自民党内で議論していてもいいはずである。

 だが、議論していたのかどうか、今回の災害でも「要請主義」に則って派遣を決めていて、結果として支援の遅れにつながっている。

 アメリカにしても「要請主義」に則って行動しているとするなら、それぞれの行動の速さ・遅さの違いから見て、フィリピン政府の日米に対する要請に差別があるのか、検証しなければならないことになる。

 アメリカが要請に則らずに行動しているとしたら、日本政府の危機管理はなおさらに問題となる。

 いずれにしても、上陸前に被害を想定して事前にフィリピン政府の要請を前倒しできないようでは、国家安全保障会議(日本版NSC)をどう組織しようが、特に安倍晋三みたいに合理的判断能力を欠いた人間がトップを務めるようでは、大したことはできまい。


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1 コメント

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Unknown (もれぞう)
2014-05-28 13:33:57
うんこもれそう
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