安倍晋三や菅義偉、松野博一達は「ウソを100回言えば事実となる」のゲッベルス戦術に全面的に縋っている

2017-06-09 11:59:43 | 政治

 〈「ウソを100回言えば事実となる」はヒトラーによって国民啓蒙・宣伝相に起用された、あの悪名高いパウル・ヨーゼフ・ゲッベルスが言った言葉を要約したバリエーションの一つである。

 実際に言った言葉は「もしあなたが十分に大きなウソを頻繁に繰返せば、人々は最後にはそのウソを信じるだろう」だと、インターネット上に紹介されている。

 「ウソを信じる」と言うことは、そのウソを事実と看做したということを意味する。

 ゲッペルスは自身が言った言葉の原理を用いて、ドイツ国民や占領地の国民、ユダヤ人をどれ程に騙し、ナチス政策の推進にどれ程に役立てたのだろうか。ヒトラーによって国民啓蒙・宣伝相に起用された理由が理解できる。〉

 2014年7月29日の当ブログに「クリミアの併合は検討していない」と言っていたプーチンが最終的にロシアに併合したプーチンの嘘を取り上げて書いた。

 現在、今治市国家戦略特区を手続きとした加計学園獣医学部新設決定に安倍晋三の政治的関与の疑惑が持ち上がっている。安倍晋三が加計学園理事長加計孝太郎と30年来の腹心の友人であった関係から、安倍晋三の意向が働いたゴリ押しの決定ではないかという容疑が深まっている。

 勿論、この疑惑や容疑が根拠のない邪推に過ぎないなら、安倍晋三や菅義偉、松野博一達はウソを百回繰返すことでさも事実らしく見せかけようとするような、いわば“ウソ100回事実化”の策略を用いる必要は生じない。

 用いるのは、疑惑が疑惑にとどまらずに言われていることが事実そのものだからだろう。 

 先ず安倍晋三の“ウソ100回事実化”を見てみる。何日前かのブログに書いたが、2017年6月5日の参院決算委員会で、「(獣医学部新設決定に)関与できないという仕組みになっているということもこう申し上げておきたい。国家戦略特区諮問会議に於いてしっかり議論がなされ、そこで決まるわけでございます。私がどこにするということの指示を出したことも勿論ありませんし、出せない仕組みになっているわけであります」と答弁している。

 第2次安倍政権下の2013年12月23日施行の「国家戦略特別区域法」第5章「国家戦略特別区域諮問会議」第32条は「議長は、内閣総理大臣をもって充てる」と規定、第33条「議員は、次に掲げる者をもって充てる」には有識者として、「経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者」と決めている。

 諮問会議のメンバーは議長安倍晋三以外に政府側から内閣官房長官、国家戦略特区担当大臣、そして「国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者」の政府側計4人、外部からの有識者6人、計10人と「国家戦略特別区域法」は明記している。

 政府側が4人、あと政府側につく有識者2人を安倍晋三が任命してメンバーの中に潜り込ませれば、好きなように賛成多数派を形成できて、そうである以上、安倍晋三の「ご意向」を如何ようにも関与できる仕組みとすることができる。

 要するに「関与できないという仕組みになっている」は6月5日の参院決算委員会以外の他の場面でも国会答弁でも使っているが、事実に反する主張を疑惑の否定根拠に用いなければならないこと自体が疑惑が事実であることの証明としかならない。

 否定根拠とならない事実に反することを何度も口にすること自体、“ウソ100回事実化”に当たる。

 諮問会議の意見集約後、閣議決定をしなければならないが、閣議には案件に関係のない大臣も出席することになるから、諮問会議の意見が大きくモノを言い、最終的には首相の意向で意見一致となるはずだ。

 但し最終決定を司る諮問会議で望み通りの結論を最初から既成事実として用意していたとしても、結論に至る各途中過程での各決定が結論に収束していく中で結論に著しく反する状況を呈したのでは、いくら賛成多数だと言い張っても、結論自体が怪しまれることになる。

 そこで文科省作成とされている加計学園獣医学部新設決定に関わる文書に描かれているように内閣府職員や義家文科副大臣、官房副長官の萩生田光一、その他がそれぞれの役目を担って、獣医学部新設決定に向けた「総理のご意向」の実現に添った動きを見せることになったのだろう。

 全ては国家戦略特区諮問会議の結論に齟齬なく収束させるための反対意見の食い止めと賛成意見での取り纏めであり、「総理のご意向」は疑惑などというものではなく、獣医学部新設決定に深く関わった事実と見なければならない。

 前川喜平文科省前事務次官が「文書は間違いなく本物」だとする証言を載せた2017年5月25日発売の週刊文春に掲載されることが5月24日にマスコミによって報道され、前事務次官自身も5月25日に東京都内で記者会見を開いて文書の存在は事実であり、「総理のご意向」によって「行政が歪められた」と証言した。

 当然、この証言は疑惑は事実だと裏付ける発言ということになる。

 対して官房長官の菅義偉の5月25日午前の記者会見。

 菅義偉「文書について、文部科学省が行った調査では存在が確認できなかった。また内閣府が、文書に書かれているような『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向だ』と言った事実はないし、安倍総理大臣からも、そうした指示は一切なかった。

 記者「前川前事務次官は『行政がゆがめられた』と証言しているが」

 菅義偉「「全く、そういう事実はない。今回の獣医学部新設は国家戦略特区法に基づく手続きを経ており、行政が歪められたという指摘は当たらない。前川氏は、自身が責任者のときにそういう事実があったのなら、堂々と言うべきではなかったか」(NHK NEWS WEB

 これ以降、今日まで同様の趣旨の発言を繰返して、疑惑を否定している。

 このような執拗なまでの繰返しの発言もウソを並べ立てて事実に見せかけようとする“ウソ100回事実化”に他ならない。

 菅義偉は「前川氏は、自身が責任者のときにそういう事実があったのなら、堂々と言うべきではなかったか」と言っているが、安倍晋三も国会答弁で同じ趣旨の発言をしてそのことを以って前川証言を事実ではない根拠としていたが、強制的な方法を用いない包囲網をじわじわと狭めていって下手には反対できない状況をつくり出し、反対派の口を封じるといったことは世の中にはいくらでも例を見ることができる。

 こういった状況に追い込まれた者が使う「物言えば唇寒し」という言葉が存在すること自体が菅義偉や安倍晋三の主張に根拠がないことになる。

 包囲網をじわじわと狭めていって下手には反対できない状況をつくり出すといった解釈の正当性を示す一例として獣医学部新設に関係した文科省作成の7通か8通ある文書の中から財務相の麻生太郎が当初の獣医学部新設反対から物言わぬ人となった事例を挙げてみる。引用は関係個所のみ。太字は文書題名。

 〈大臣ご指示事項

 ○麻生副総理、森英介議員など獣医学部新設に強く反対している議員がいる中で、党の手続きをこなすためには、文科・農水・内閣府の部会の合同部会もしくはPT を設置して検討を行うべきではないか。少なくとも、衆院福岡6区補選(10月23日投開票予定)を終えた後に動くべきではないか。

 ※鳩山二郎氏(鳩山邦夫元総務相次男、全福岡県大川市長)、蔵内謙氏(日本樹医師会長長男、林芳正前農相秘書が候補者)〉――

 2016年10月11日告示、23日投開票の衆院福岡6区補選では安倍晋三は表に出なかったが、鳩山二郎を菅義偉が代表格で応援し、蔵内謙を麻生太郎や閣僚の一部が応援する分裂選挙となり、鳩山二郎が当選した。

 要するに獣医学部新設に反対している麻生太郎の機嫌を損ねてこじらせてしまったら、早期に決めなければならない獣医学部新設が早期に決まらない恐れが出てくるから、「衆院福岡6区補選を終えた後に動くべきではないか」と提案したということであろう。

 〈義家副大臣レク概要(獣医学部新設)

 ○官邸はどうなっているのか。萩生田副長官に聞いてみる。

 やれと言うならやるが、閣内不一致(麻生財務大臣反対)をどうにかしてくれないと文科省が悪者になってしまう。〉――

 麻生太郎を懐柔して反対の矛を収めさせ、閣内一致の持っていってくれなければ、困るとの謂であろう。と言うことは、この時点では麻生太郎は以前と獣医学部新設には反対だったことになる。

 〈10月19日(水) 北村直人元議員(石破元大臣同期)→専門教育課牧野

 ○麻生大臣は野田秘書に以下のように話していたとのこと。

 ・自分は総理から本件関係で何も言われていない。この話を持ち出されたこともない。だからもう(やらない方向で)決着したのだと思ったくらいだ。

 ・(野田秘書から最近の状況を話し、)そうか・・・。〉――

 獣医学部新設に当初は反対だった麻生太郎は安倍晋三から何も話はないから、その話は取りやめになったのかと思っていたが、麻生太郎事務所の野田秘書が事情を話したところ、麻生太郎は「そうか」と納得、反対に関して物言わぬ人となった経緯は、まさしく包囲網をじわじわと狭めていって下手には反対できない状況をつくり出し、反対派の口を封じる例に当てはまる。

 安倍晋三の「ご意向」だと言うことになれば安倍晋三のシンパたちにとっては水戸黄門の葵の御紋程ではないが、それなりのご威光となって、ハハァと喜んで「ご意向」に従い
、周囲を固めていく力となって、それなりに下手には逆らうことのできない包囲網をつくることになるはずだ。

 要するに安倍晋三にしても、菅義偉にしても前川前事務官に対する批判はゲッベルス同様の「ウソを100回言えば事実となる」の“ウソ100回事実化”に過ぎないということである。

 疑惑が事実だから、“ウソ100回事実化”を用いらざるを得ない。


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