安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
前愛媛県知事加戸守行が2018年5月23日、自民党本部での議員らの勉強会に講師として出席後、記者団の取材に応じて、愛媛県の中村知事が参議院に提出した加計学園に関わる新文書を「伝聞の伝聞で信憑性に乏しい」といった趣旨の発言をしたという。
果たして「伝聞の伝聞」と言えるのか、その発言の詳報を伝えている2018年5月23日付「産経ニュース」記事から、どのようなことを言っているのか、その箇所だけ取り上げてみる。
記者「愛媛県側から新たな県の文書が国会に提出された。首相の『いいね』発言を、どう思うか」
加戸守行「愛媛県庁の職員は真面目だ。聞いた話をおよその流れをつかみながらメモしたんだろう。ただ、このケースは伝聞のまた伝聞だから、発信者である加計学園の事務局、おそらく事務局長ではないかと思うが、その方はどのようなかたちで発言をしたのかという信憑性は、これは加計学園の方しか分からない。
多分それらしきことを今治市が聞き、県に伝え、県がメモにしたんだろうと思う。ただ、そのことをもって、メモがあるから絶対正しいということにはならない。発信をした方が本当に正確なことを言ったのか、そこは確かめるすべもない。
私個人の感想だが、あの話があった平成27年2月25日の時点では、すでに構造改革特区で14回もはねられて、しかも首相のもとで4回はねられている案件だから、(加計孝太郎理事長から)『首相の手で4回もはねられましてね』ぐらいの話が出ないのは不思議だ。あの会話を見ていると、この中身がどうなのかなというのはちょっと違和感は覚える。ただ、県庁の職員はまじめにメモするということは(今日の会合で)申し上げた」(以上)
愛媛県新文書のうち、安倍晋三と加計孝太郎との15分程度の面談を触れている2015年(平成27年)3月付の「報告」を見てみる。文飾は当方。
「報告」 「獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者 等との打ち合わせ会について」 27.3 地域政策課 1 加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告 したいとの申し出があり、3月3日、同学園関係者と県との間で打 ち合わせ会を行った。 2 加計学園からの報告等は、次のとおり。 ① 2/25に 理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師 養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、 国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そ ういう新しい獣医学大学の考えはいいね。」とのこコメントあり。 また、柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示が あったので、早急に資料を調整し、提出する予定。 ② 下村文科大臣が一歩引いたスタンスになっており、県において も、官邸への働きかけを非公式で実施いただけないかとの要望 があったが、政治的な動きが難しい旨回答。 ③ 検討中の大学付属施設(高度総合検査センター等)の設置には、 多額の費用が必要であるが、施設設置に伴う国からの補助がな い中、一私学では困難であるので、国 の支援が可能となる方策 の検討を含め、県・市の財政支援をお願いしたい。 なお、3月4日には、同学園と今治市長が面会し、ほぼ同内容 の説明があった。 3 おって、3/3に開催された国家戦略特区諮問会議では、特区法 改正案に盛り込む追加規制緩和案が決定されたが、新潟市の国家 戦略特区(獣医学部設置に係る規制緩和)は、含まれていない。 今後、26年度までに出される構造改革特区提案(愛媛県・今治 市)に対する回答と合わせて、国家戦略特区の結論も出される模 様。 4 ついては、加計学園の具体的な大学校構想が示されたことから、 特区提案の動向を踏まえ、今後の対応方針について、今治市とし っかりと協議を進めていきたい。 |
最初に言っておくが、断るまでもなくこれは愛媛県の文書である。今治市の文書ではない。上記文書作成当事者が「地域政策課」名となっているのは愛媛県が国会提出の際の宛名を「参議院予算委員会御中」としていて、差出人として「愛媛県企画振興部 地域振興局 地域政策」となっている「地域政策課」であることからも、愛媛県の地域政策課を指す。
そして愛媛県文書に〈加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいとの申し出があり、3月3日、同学園関係者と県との間で打ち合わせ会を行った。〉とあるように、加計学園の方から愛媛県に対して報告の申し出があって、「同学園関係者と県との間で打ち合わせ会を行った」のである。
この3月3日の加計学園関係者と愛媛県の「打ち合わせ会」に今治市職員が加わっていなかったことは、少し下の文言、翌日の〈3月4日には、同学園と今治市長が面会し、ほぼ同内容の説明があった。〉としていることから理解できる。
3月3日の「打ち合わせ会」に今治市職員が加わっていたなら、職員から今治市長に報告は上がるだろうから、今治市長への説明は二度手間となる。
具体的には3月3日の「打ち合わせ会」で愛媛県地域政策課の職員が加計学園関係者から直接報告を受け、その愛媛県職員自身がその報告を直接「メモにした」という段階を踏んだことになる。
となると、加戸守行が加計学園関係者から「多分それらしきことを今治市が聞き、県に伝え、県がメモにしたんだろうと思う」と言っていることは、いわば「伝聞のまた伝聞」と解釈していることは基本的読解の点でそもそもからして間違っていたことになる。
要するに加戸守行の基本的読解力不足が「伝聞のまた伝聞」と思わせた。但し加戸守行は東京大学法学部を卒業、愛媛県知事を3期11年10カ月も務めている。この程度の文書で読解力不足があっていいはずはないが、人間は何らかの強い思い込み(先入観)があると、それが当たり前の読解を妨げる場合がある。
加戸守行のこれまでの言動からすると、今治市国家戦略特区活用の加計学園獣医学部認可が一部が疑っているように決して安倍晋三の行政府への不当介入、不正な政治関与によって実現したものではないという反発を一方で持ち、自身もその実現を強く押した側の一人として関係省庁や関係機関が公平・公正な議論を経て決定したものであるとの強い思い込み(先入観)を持つに至り、このことが自身の強い思い込み(先入観)に反する文書を正しく読むことを拒否して後者の心理のみで解釈したい読解力不足を引き起こすことになっているのだろう。
言ってみれば、自分で自分の目を曇らせているのと同じようなもので、素直に読めば、〈平成27年3月3日、加計学園から報告の申し出があって愛媛県との間で打ち合わせ会を開くことになりそこで2月25日の加計理事長と安倍晋三との面談内容の説明を受けた。〉といった趣旨の報告を記していることは容易に理解できるはずだ。
この平成27年2月25日の安倍晋三と獣医学部新設を希望する加計孝太郎との面談に首相秘書官の柳瀬唯夫が同席、〈柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があったので、早急に資料を調整し、提出する予定。〉へと話が進むことになり、このことが約1カ月後の平成27年4月2日の愛媛県と今治市の職員に加計学園関係者を含めて首相官邸面会へと繋がったということであろう。
上記文言の中に、〈改めて〉なる言葉が挿入されていて、前にも提出したようにも読み取れるが、、柳瀬唯夫に一度提出してあるなら、同じ人間に二度も提出する必要はない。加戸守行は上記記者団の取材に、「私個人の感想だが、あの話があった平成27年2月25日の時点では、すでに構造改革特区で14回もはねられて、しかも首相のもとで4回はねられている案件だから、(加計孝太郎理事長から)『首相の手で4回もはねられましてね』ぐらいの話が出ないのは不思議だ。あの会話を見ていると、この中身がどうなのかなというのはちょっと違和感は覚える」と発言している。
〈改めて資料を提出するよう指示があった〉の〈改めて〉を構造改革特区の担当省庁である内閣府に資料を提出しているが、柳瀬唯夫のところに〈改めて資料を提出するよう指示があった〉と解釈すると、辻褄が合う。
面談の約15分を〈理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そういう新しい獣医学大学の考えはいいね。」とのこコメントあり。〉の会話だけで埋めることはできない。様々に伏せてある会話があって当然と見なければならない。
愛媛県文書は加戸守行が言うように決して「伝聞のまた伝聞」の形式を取っていない。安倍晋三と加計孝太郎のこの平成27年2月25日の面談以後の推移を見ると、柳瀬唯夫の平成27年4月2日の首相官邸面会を含めてだが、30年来の腹心の友人同士でありながら、獣医学部新設認可を巡る安倍晋三と加計孝太郎との関係を一貫して隠そうとする意図が窺えるのみとなっている。
このような両者の関係の隠蔽はその関係が便宜供与の関係を築いていなければ、そうする必要性は生じない。便宜を与え、便宜を受ける関係がそこに働いていたからこそ、隠蔽しなければならないことになる。
「伝聞のまた伝聞」でもないのに無理にそうだとこじつけて愛媛県文書の信憑性を貶めることで翻って加計学園獣医学認可を「一点も曇りもない」と印象づけようとすること自体、極めて如何わしく、こじつける人物自体が信用できないことになる。
安倍晋三の加計孝太郎との獣医学部認可に関わる関係の一貫した隠蔽、加戸守行という人物の信用性のなさは却って安倍晋三が行政府に不当に介入、自らの不正な政治関与によって認可を実現させた証明となり得る。
公明党代表山口那津男も5月22日午前の記者会見で加戸守行と同じようなことを言っている。「産経ニュース」
山口那津男「当事者である首相も、加計氏も面談を否定している。一方、出された文書はまた聞きのまた聞きというような伝聞を重ねている要素もある。
(野党側が愛媛県の中村時広知事の国会招致を求めていることに関して)自分の直接経験したことに基づいて表現するのが真実に近づく大事な要素だ。中村氏はまったく自身の経験ではない。それで事実の解明が大きく進むとはあまり期待できない」
愛媛県文書が「また聞きのまた聞きというような伝聞を重ねている要素もある」ことを以って安倍晋三と加計孝太郎の面談否定の正当性の根拠にしている。
決して「また聞きのまた聞き」ではないし、愛媛県文書の内容だけではなく、文科省公表の多くの文書からも窺うことのできる獣医学部認可に向けた策動とも言うべき動きから判断しても、両者の否定に直ちに正当性を与えることはできない。
山口那津男は中村愛媛県知事の国会招致について「自身の経験ではない」ことを聞いたとしても、事実解明の前進は期待できないと言っているが、「自分の直接経験した」首相官邸面会を正直に話さなかった柳瀬唯夫の例もある。
問題は「自身の経験」であるかないかではなく、隠す意図を持って国会に立つか立たないかであって、中村知事が隠す意図を持たずに職員から聞いた話を正直に国会で発言したなら、事実解明に何も役に立たないとすることはできない。にも関わらず、「自身の経験」であるかないかに証言の信用性の基準を置く。
このようなこじつけも、山口那津男が与党の一味という利害関係を同じくした立場にあることの限界から発した、決して間違ってはいないとしたい強い思い込み(先入観)がそうさせているのだろう。
安倍晋三の一派・一味は何らかの利害関係に絡められて、獣医学部は正当に認可されたものだとしたい衝動を至るところで見せている。正当なのか正当でないか、ハッキリとは自信が持てないということもあるのだろう。