安倍晋三の移民政策:リーマンショック級不況到来時の人余り現象対応の危機管理なしなら、外国人との共生はウソ

2018-11-27 11:41:16 | 政治
                                     
 安倍政権は201811月14日、新たな在留資格創設の出入国管理法改正に基づいて人手不足が顕著な14業種での来年度からの5年間で最大34万5150人の外国人労働者受入れを発表した。以下に2018年11月14日付「毎日新聞」記事から、「見込み人数」の一覧を参考引用しておいた。

 人手不足感の多寡に対応した5年目までの「業種別受入れ見込み人数」の累計で最も多いのは介護職の5万人~6万人。次が外食の4万1千人から、5万三千人。次が建設の3万人~4万人。その次が農業の1万8千人から3万6500人。

 一般的には給与・労働時間・労働環境等の従業員満足度と人手不足数は反比例する。最も人手不足数の大きい介護職に関して、「介護サービス業従業員満足度調査」(リクルートキャリア/2017.01.23)に次のような記述が載っている。

〈介護職従事者の従業員満足度(勤めている施設に「満足している」)は45.6%。現在介護職従事者の従業員満足度が「満足・計」であれば、約8割が勤続意向あり(勤めている施設で「働き続けたいと思う」)と回答。満足度が「どちらともいえない」では3割弱、「不満・計」では1割強に低下。〉――

 そして、〈【従業員満足度の高い職場では、人材流出率が低い】〉との小見出しの文章は満足度と人材流出率が反比例していることを示している。多分、中以下の小・零細規模の介護事業所程、従業員満足度の低さからより人材流出率が高く、人手不足感がより大きい傾向にあると思われる。その人手不足がさらに人間関係の悪化や労働意欲の低下を招いて、従業員満足度を阻害していく悪循環が見えてくる。

 2017年8月5日付「日経電子版」には、〈厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」は5日までに、2015年10月からの1年間に全国の介護職員の16.7%が退職したとの調査結果を公表した。前年に比べ離職率は0.2ポイント悪化、全産業平均の15%(15年)も上回り、人手不足が常態化している状況が裏付けられた。〉との記述がある。

 あくまでも平均だから、一般的には規模が小さくなるに連れて離職率は高い傾向にあるはずだ。

 「介護人材確保対策 (参考資料)」(厚生政策情報センター)から次の図を載せておいた。

 断るまでもないことだが、有効求人倍率とは有効求職者数に対する有効求人数の比率であることを確認しておく。分かりやすく言うと、企業からの求人1人に対して仕事を求めている者(求職者)が何人いるかの割合を表す。有効求人倍率1が求人数と求職者数の調和が取れた状態で、人余りでもなく、人手不足でもない状況となる。有効求人倍率1以上は人手不足状況、1以下は人余り状況ということになる。

 2008年9月のリーマンショック当座、失業率が一気に高い数字を示しながら、介護分野の有効求人倍率は1を超える人手不足の状況を示している。このことは不人気業種であることの証明でもあろう。

 2009年と2010年の失業率は5.1と変わらないにも関わらず、介護分野の有効求人倍率はリーマンショック前の2.31から一気に1.48に下がっているのに対して全産業は0.44から0.48へと逆に上がっている。この状況は全産業のいずれかから介護分野への少なくない人の移動を見ることができる。この移動を読み解くと、リーマンショックによる不況で仕事を失い、生活の維持のために止むを得ない選択が見えてくる。そのために全産業の有効求人倍率が僅かに上昇して人余り状況が少し改善した。

 ところが、リーマンショックから立ち直って景気を回復していく過程で介護分野と全産業共に有効求人倍率は上昇していく。全産業の有効求人倍率は2015年に1を超えて1.20の人手不足となるが、対して介護分野は一貫して有効求人倍率が上昇、2013年に2を超えて、2.22となり、2016年には3.02まで上がって、更に人手不足の様相を強めていく。

 全産業が景気回復に連動して有効求人倍率の上昇傾向を見せるのは当然だが(但し家庭レベルの景気回復とは必ずしも連動するとは限らない)、介護分野の有効求人倍率が全産業のそれに対して一貫して2倍以上という人手不足状況は不人気業種であることを表している。
 
 待遇等に対する従業員満足度が低くて、それゆえに離職率も高く、有効求人倍率が高止まりの不人気業種である介護職の外国人材受入れ拡大策(安倍晋三の移民政策)で、5年目までの「業種別受入れ見込み人数」の累計で最も多い5万人~6万人となっている。但し今後何らかの不況に見舞われて、2008年9月のリーマンショックの不況時に極度の人余り現象から、やれ「派遣切りだ」、「雇い止めだ」、「コストカットだ」といった人減らしの情け容赦もない混乱が見られたのと同じ状況に陥った場合、日本人が優先的に人員整理の対象になるのか、あるいは外国人材が優先的なのかといった問題が起きてくる。

 優先順位によって、外国人が日本人の仕事を奪っている、あるいはその逆に日本人がだけが大事にされて、外国人は不公扱いを受けているといった非難や混乱が予想されることになる。

 リーマンショック時のように他産業から介護分野への人の移動も起きる。そのとき人手不足が解消していないことが十分に予想される介護分野にとって日本人を優先的に採用するのだろうか、あるいは外国人材を優先的に採用するのだろうか。

 外国人材優先採用の場合は日本人と同等の報酬の支払いを改正法律で義務付けていたとしても、同じ義務付けのある外国人技能実習制度で実習実施者の多くが守らなかったように人件費カットで少しでも利益を上げようとする業者の存在はなくならない実態を考えると、外国人優先採用といった事態が必然化し、外国人が日本人の仕事を奪っているといった状況に陥らない保証はない。

 あるいは日本人と同等の報酬を守っていたとしても、外国人採用を優先させて、全体の賃上げをストップさせることで人件費を抑制させる手もある。世の中全体が人余り状況となるから、賃上げストップに対して声を上げることが難しくなるしし、日本人と同等の報酬を守ることもできる。

 外国人材を受入れる以上、リーマンショックのような不況に見舞われた場合の日本人・外国人双方に対する雇用に関わる危機管理をも外国人材受入れ拡大制度(安倍晋三の移民政策)を含めた入国管理法改正案に規定すべきだろう。安倍晋三は消費税増税の条件に「リーマン・ショックのようなことが起こらない限り」との危機管理を付したが、入国管理法改正案では何も手を打たないでは不公平が生じる。謳っているところの外国人との共生をウソにする。


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