橋下徹も松井一郎も従軍慰安婦に関わる誤った歴史認識を植え付けるべく、高校生に触手を伸ばそうとしている

2015-10-29 11:58:55 | 政治


 大阪府教育委員会が「『慰安婦』に関する補助教材」と題したA4判8ページの教材を高校の日本史で用いると、10月28日付「産経ニュース」が伝えている。 

 この補助教材は松井一郎大阪府知事が「朝日が誤報だと認めたことで強制連行の証拠がないと分かった」ことを根拠に補助教材配布を明言、このことを受けて大阪府教委が戦後70年談話等を踏まえて作成したものだと記事は解説している。

 記事の解説通りだとすると、松井一郎の発言そのものから補助教材の内容・趣旨を窺うことができる。

 「朝日誤報」=「日本軍従軍慰安婦強制連行否定証拠」の発言構造を取っていることになる。

 この歴史認識は松井一郎の親分、松井一郎からすると腰巾着の対象としている大阪市長の橋下徹自体の従軍慰安婦に関わる従来からの歴史認識と軌を一にしている。腰巾着らしく、橋下徹の歴史認識をそのまま受け売りしているのかどうかは分からないが、双子の顔形や性格のようにそっくり似ている。

 橋下徹の日本軍の従軍慰安婦に関する最近の言説を見てみる。

 2015年7月、サンフランシスコ市議会が慰安婦の碑または像の設置を支持する決議案の審議を開始した。

 サンフランシスコ市が大阪市と姉妹都市を結んでいる関係からか、市長の橋下徹は早速反応した。

 2015年7月23日の定例記者会見。

 橋下徹「先の戦争で女性の人権が蹂躙されたのは事実。今も紛争地帯で苦しんでいる女性がおり、二度とやってはいけないと表明するのは当然。先の大戦時に世界各国がどうしていたのか。日本だけ特別に非難することはあってはならない。

 (決議案が旧日本軍だけを取り上げているのが事実なら)アンフェアだ。おかしい。(碑か像に)刻み込む文言によっては姉妹都市や日米関係に影響する」(産経ニュース

 そして決議案の内容を確認し、見解をただす文書を送る方針を明らかにしたと伝えている。

 その方針通りに橋下徹は2015年8月27日の日付でサンフランシスコ市宛に公開書簡(公開質問状のこと)を送付し、その内容を2015年9月3日付の「産経ニュース」 記事が伝えている。 

 この公開書簡の中で橋下徹は「戦時という環境において、日本を含む世界各国の兵士が女性の尊厳を蹂躙する行為を行ってきた、という許容できない『普遍的』構造自体をこそ、私達は問題にすべきなのです」と、過去の戦争、過去の戦場でどの国の軍隊でも女性の人権を蹂躙する性の問題は起こっていたことだとして、日本の従軍慰安婦問題を他の国の兵士が犯した人権蹂躙と同レベルで扱って普遍化し、さらにその普遍化を「残念なことに今日に於いてもなお、戦場における女性、子供への性暴力が行われているとの報道が多くなされています」との表現で今日の世界にまで広げた上で、〈ただし日本の事例のみをとりあげることによる矮小化は、世界各国の問題解決につながらない〉との小見出し付きで、さらに普遍化を深化させている。

 橋下徹「一方で、戦場の性の問題は、旧日本軍だけが抱えた問題ではありません。第二次世界大戦中のアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、ドイツ軍、旧ソ連軍その他の軍においても、そして朝鮮戦争やベトナム戦争における韓国軍においても、この問題は存在しました」――

 いわば日本軍だけではなく、どの国の軍隊も犯してきた女性に対する人権蹂躙だとすることで、日本軍の従軍慰安婦問題と他国軍隊の対女性人権蹂躙問題と質を同じくさせる普遍化を試みている。

 だが、何よりも問題なのは他国軍兵士が行ったことが日本軍がしたように慰安婦を中には募集して集めた場合があるものの、元従軍慰安婦の証言にあるように少なくない未成年を含む若い現地人女性を日本軍兵士が力尽くで拉致し、連行して監禁同様に慰安所に閉じ込め、従軍慰安婦に仕立てるといった日本の軍隊そのものが直接関わった歴史的出来事であったのか、兵士個人が売春婦を利用したり、あるいは現地人女性を襲って強姦したりした人権蹂躙だったのかどうかである。

 他国軍隊が日本軍のように直接関わっていなければ、決して普遍化はできない。韓国軍はベトナム戦争で従軍慰安所を経営したとされているが、日本軍の従軍慰安婦と同レベルで扱うためには韓国軍が慰安所で働く女性を強制連行したとの証拠を挙げなければならない。

 だが、知る限りでは強制連行の情報に接していない。

 もし韓国軍も日本軍同様の強制連行を行っていたなら、同罪となるが、日本と韓国以外の他の国迄含めた普遍化はやはり不可能となる。

 橋下徹は公開書簡で朝日新聞の誤報も取り上げている。
 
 橋下徹「従前から慰安婦問題を報道してきた朝日新聞も、2014年8月5日に、吉田清治氏の告白を虚偽と判断し、多くの朝鮮の女性を慰安婦として『暴行加え無理やり』『狩り出した』とする一連の記事を取り消し、日本国内でも衝撃的な大問題となったのは記憶に新しいところです」

 橋下徹が言っている「衝撃的な大問題」とは、自身も右へ倣えし、多くの日本人が次のように即座に解釈した「朝日誤報」=「日本軍従軍慰安婦強制連行否定証拠」の歴史認識に他ならない。

 記者会見等で見せる橋下徹の饒舌通りの長文の公開書簡となっていて、さらに長々と続くが、途中で従軍慰安強制連行否定の一つの結論を出している。

 橋下徹「慰安婦問題に関しては、現在までのところ、国家が組織をあげて人さらいのような強制連行を行なっていたというような確たる証拠は何も出てきておらず、そうである以上、日本の立場としては、法的責任はやはり認められないという結論にならざるを得ません」

 橋下徹が「確たる証拠」とは第1次安倍内閣が2007年3月16日に閣議決定した答弁書で「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と言っている、その「資料」のことである。

 当時まで生存していた、あるいは現在も生存している元従軍慰安婦たちの証言は含まれていない。いわば彼女たちの証言を検証の対象とすることもなく、無視している。
 
 かくこのような橋下徹の従軍慰安婦に関わる歴史認識に追従した、あるいは軌を一にする松井一郎の歴史認識を受けた大阪府教育委員会の高校生歴史教科書に対する「『慰安婦』に関する補助教材」ということなのだろう。

 「産経新聞」も、「朝日新聞が大誤報を認めたことで、日本の慰安婦問題の核心(強制連行)は崩壊している」と、「朝日誤報」=「日本軍従軍慰安婦強制連行否定証拠」の同じ歴史認識に立っている。

 このような産経新聞の歴史認識に対して当「ブログ」に、〈「吉田証言」が「証言」とは名ばかりで、架空の元従軍慰安婦を登場させて架空の証言をデッチ上げた日本軍による強制連行・強制売春の“架空話”(=フィクション)に過ぎず、その“架空話”(=フィクション)に基づいて書いた朝日記事が結果的に誤報となったことを以って、今後共、現実に存在した、あるいは今なお現実に存在する元従軍慰安婦の証言を無視して、〈朝日新聞が大誤報を認めたことで、日本の慰安婦問題の核心(強制連行)は崩壊している。〉とする、従軍慰安婦に関わる歴史修正主義が罷り通るに違いない。

 罷り通らせるためには現実に存在した、あるいは今なお現実に存在する元従軍慰安婦の証言までをも“架空話”(=フィクション)であるとする検証・証明が必要だが、それすら行わずに強制連行否定説を高々と掲げる。〉と書いた。 

 いわば松井一郎も橋下徹も、「朝日誤報」=「日本軍従軍慰安婦強制連行否定証拠」とする決して正当とは言えない、過去の歴史の事実を抹消する偏った歴史認識を大阪府の高校生に植え付けるべく触手を伸ばそうとしている。

 安倍晋三の登場で日本の社会が右傾化に進んでいる。他の自治体からも大阪府に倣った歴史認識を高校生に植え付ける動きが出てこない保証はない。

 触手は合理的な思考能力を奪う大きな一歩となるに違いない。


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