8月21日(2017年)の民進党代表選前原・枝野両立候補者の共同記者会見。「ログミー」
前原誠司「今自民党しか選ぶ選択肢がないというそういう環境に置かれている国民は不幸だと思いますし、これは我々野党第一党の責任である、歴史的な責任であるとそう思っております」
国民はその不幸に気づいていない。いや、大多数の国民が不幸だとは思っていない。それは政党支持率に現れている。NHK世論調査の画像を載せ、リンクをつけておいたが、内閣支持率が下がっても、自民党支持率はさして下がらず、内閣支持率下落に対応して野党第一党の民進党の支持率は相対的に上昇することはなく、逆に下がっている。
対自民党支持率が7月から8月にかけて逆に4%程度上昇し、民進党支持率がジリ貧状態の6%以下の下落状況にあるということは以前は大多数の国民の「やっぱり民主党には政権は任せることはできないな」の思いが現在もそのまま引き継がれて、「やっぱり民進党には政権を任せることはできないな」で何も変わっていないことの表れと見なければならない。
要するに安倍晋三が信用できなくなれば、自民党からそれに代わる首相を見つければいいと思っている。だから、安倍内閣の支持率が下がっても、それに連動することなく、自民党の支持率はさして下がらないという状況が生じることになる。
この状況は今度は首相は民進党からと考える国民が極くごく少数派に過ぎないことを示していることにもなる。
となると、前原誠司が最初にやることは、政党選択肢のない国民は不幸だと気づかせなければならない。だが、鳩山由紀夫、菅無能、野田佳彦民主党歴代首相によって「やっぱり民主党には政権を任せることはできないな」を国民の固定観念とさせ、民進党に政党名を変えてからも、歴代代表がその固定観念を氷解させることができないままに「やっぱり民進党には政権を任せることはできないな」と思い直させているとすると、不幸だと気づかせることは至難の技ということになる。
だが、前原誠司の決意は高い。9月1日民主党代表選投開票日の前原誠司の決意表明。「産経ニュース」
前原誠司「多くの国民が民進党に政権交代などでできっこないと考えている。決意を示せば、失笑、冷笑で迎えられる。私はそれを変えていく。
他の勢力との連携や協力の可能性は排除しない。しかし、私たちの理念、政策に賛同してくれることが第一だ。私たちの政策理念を高く掲げて、皆さんに強力をお願いする」
新代表当選後のスピーチ。「産経ニュース」
前原誠司「今この場で政権交代を言っても、国民の皆さま方は『何を言っているんだ』、こういう状況になろうかと思います。しかし、自民党しか選ぶものがない、あるいはまだ形の分からない何かに対する期待が集まっている。こんな危うい政治状況は、我々の力で変えていかなくてはなりません」
一歩ずつ前に進まなければならない。最初の試金石は10月投開票の衆議院青森4区、新潟5区、愛媛3区の補欠選挙であろう。自民党政党支持率が下がらなくても、安倍内閣自体にダメージを与えなければならない。
安倍自民党に3戦全勝を与えて、安倍晋三に下手に自信を回復させたのでは、自民一強がなお強まることになる。となると民進党3戦全勝が最善ということになるが、民進党+共産党抜き野党共闘でそれが可能なのか、例え3戦全勝でなくても、いわば安倍晋三の自信を決定的に打ち砕くことにならなくても、共産党の力を借りずに戦うつもりなのか、早い段階で決めなければならない。
確かに世論は民進党と共産党の選挙協力に否定的だが、3選挙区共、共産党が候補を立てた場合、他の野党の協力を得たとしても、民進党が自民党+公明党の票を上回ることは難しくなる。
土壇場になって形勢不利だからと共産党の力を借りるようでは余りにも現金過ぎることになって、逆に前原誠司の評価を下げることになるだろう。
NHKの2017年8月4日から3日間の世論調査は新代表の民進党に対する期待度を尋ねている。
「代表が代わることになった民進党に期待するか」
「大いに期待する」3%+「ある程度期待する」20%=23%
「あまり期待しない」41%+「全く期待しない」29%=70%
「大いに期待する」3%:「全く期待しない」29%≒1:9
「ある程度期待する」20%:「あまり期待しない」41%≒1:2
「大いに期待する」のパーセントを上げて、「全く期待しない」のパーセントを下げることができれば、「ある程度期待する」のパーセントが相対的に上がり、「あまり期待しない」のパーセントが下がることになるのだが、そうなるには程遠い状況にある。
政策はさして問題とはならない。安倍晋三のアベノミクスは明らかに失敗だが、少なくとも満足に機能していないはずで、その結果、景気が実感できていないという声も多くあるのだが、安倍内閣の支持率が下がった原因は森友問題と加計学園問題であって、もしこの両問題がなかったなら、これ程には内閣支持率を下げることはなかったろう。
このことも政策はさして問題にならない証拠となる。
政権を担当していな民進党新代表の政策は成果の具体性は見えにくい不利な状況にあるから、余程の宣伝性を持ち得ない限り、国民の期待を煽ることにはならない。
となると、新代表の民進党に対する期待度が低く、政党支持率がジリ貧状態にある以上、やはり10月の衆議院補選を重要なターニングポイントとしなければならない。
補選は政権選択肢がない環境は国民にとって不幸だと気づかせる以上に難しい選択に迫られるだろうが、新代表にとっての力量を見せることができるか、できないかの重要な試金石となることは間違いない。
次に重要なのは今年の暮になるのか、来年になるのか分からないが、次期総選挙であろう。結果次第では国民の政権交代への期待度を占うことができる。
民進党新代表の力量はその期待度を高めるところに持っていけるかどうかにかかっていることになる。
「Wikipedia」から2017年年8月23日現在の衆議院自民党と民進党の議席数を見てみる。
自由民主党 285
民進党92
与党のうち公明党と新党大地と無所属は議席を維持すると仮定して、自民党から民進党が50議席奪うとすると、285-50=235+公明党35+新党大地1+無所属2=273議席の与党となる。
民進党92+50=142
過半数は238議席だから、与党を過半数に85議席から35議席にまで追い詰めることができて、民進党は過半数までに146議席から96議席に迫ることになる。
これが完全な捕らぬ狸の皮算用であったなら、前原誠司は政権交代の選択肢がない環境は国民にとって不幸であることを国民自身に気づかせるだけの力量がなかった証明を自ら示すことになる。
逆にこれぐらいの議席奪還の勝利でなければ、国民に対して政権交代への期待度を高めたと言うことはできない。
前原誠司は新代表に選ばれたことでこの程度のハードルを背負った。このハードルを民進党+共産党抜き野党共闘で跳び超えるのか、共産党も入れて飛び越えるのか、やはり本人の力量が答を出すことになる。
総選挙に今以上に議席を減らして、代表辞任、再度代表選挙とならないことだけを祈る。そうなった場合は、民進党は分裂しているかもしれない。