安倍晋三の日中韓首脳会談後の共同記者会見で「3カ国の協力プロセスが正常化させることができた」の独善性

2015-11-04 09:06:07 | 政治


 安倍晋三は韓国を訪れて、11月1日は午後2時過ぎから約3年半振り開催の日中韓首脳会談、その後に共同記者発表、日中首脳会談、日中韓首脳晩餐会と予定をこなし、翌11月2日は午前中に日韓首脳会談に臨み、帰国している。

 《日中韓首脳共同記者会見》の冒頭、次のように切り出している。 

 安倍晋三「アンニョンハシムニカ。皆さんこんにちは。

日本と韓国と中国は、お互いに隣国であります。隣国であるがゆえに、難しい問題もありますが、だからこそ私は、かねてから首脳レベルの会談を行い、話し合いを進めていくべきであると繰り返し述べてまいりました」

 自分だけいい子になっていることに気づかない。この独善性も問題だが、隣国であることだけが理由の難しい関係ではない。安倍晋三の独善的な歴史認識が関係をこじらせている側面もあることに目を向けることができない。

 安倍晋三「日本、韓国、中国の3カ国は、地域の平和と繁栄、さらには国際社会の安定に大きな責任を共有しています。世界が直面する様々な課題について、協力してその責任を果たしていくことが期待されます。

 3年半ぶりに開かれた本日のサミットを通じ、日韓中の3カ国による協力プロセスを正常化させることができたことは大変大きな成果であります」――

 日中韓首脳会談後、共同宣言の発表が行われている。首相官邸HPにアクセスして検索してみたが、辿り着くことができなかった。

 「3か国協力は、3年半ぶりに開催された今次サミットで完全に回復した。歴史を直視し、未来に向かうとの精神の下、関連する諸課題に適切に対処すること、また2国間関係を改善し、3か国協力を強化するために協力することで一致した」(NHK NEWS WEB)といった内容らしい。

 共同宣言には当事国に権利・義務の関係が生じ、条約と同じ法的効力を持つものと当事国がその行為について説明するにとどまり、国際的な約束にならないものがあるということだが、今回の共同宣言はNHKが伝えている内容自体からして取り決めに関するものではないし、日中韓首脳会談開催が予定された時点で今年3月の日中韓3カ国外相会議後の共同記者発表を踏まえた内容とすることで3カ国で調整していたとNHKが伝えていたから、当事国に権利・義務の関係が生じる前者の共同宣言ではなく、どちらかと言うと、その行為について説明する後者に当たるものであると同時に友好的な雰囲気で首脳会談を行うことができたことと、その友好的雰囲気が今後の友好関係の持続性を演出する体裁を取った共同宣言であろう。

 共同宣言がそういった形式を取ったのは日韓間に関しては従軍慰安婦や靖国神社参拝等の歴史認識問題と竹島の領有権問題を抱えているし、日中間には、日本は存在しないとしているが、現実的には存在している尖閣諸島の領有権問題や中国の人工島の構築による国際法に基づく航行の自由を妨げる問題を抱えていて、どちら共に簡単には解きほぐすことのできない、友好関係に横槍を入れる重大な障害となっているからであるはずだ。

 にも関わらず、安倍晋三は共同宣言の趣旨のままに「日韓中の3カ国による協力プロセスを正常化させることができた」と事は簡単であったかのように完了形で言うことができる。

 この楽天的と言うか、単細胞と言うか、このような発想に於ける独善性は見事である。

 独善的発想であることは翌11月2日の日韓首脳会談後にパク大統領の安倍晋三に対する扱いが証明することになる。

 中国の李克強首相に対しては個別の夕食会を設定していながら、日韓首脳会談後の共同記者会見はなし、さらに合意事項等を明記した共同文書の発表もなく、首脳同士の食事会も開かれなかったと「YOMIURI ONLINE」が伝えている。 

 日中韓首脳会談を受けた3カ国共同宣言が「歴史を直視し」と歴史認識問題に触れている以上、日中韓首脳会談で歴史認識問題でも議論されている。だが、次の日の日韓首脳会談で日韓間に横たわる歴史認識問題に限ってより突っ込んだ議論がされ、安倍晋三の歴史認識に失望して、そのことへの怒りから共同記者会見や共同文書の発表もなく、首脳同士の食事会も設定されなかったとしても、あるいは日中韓首脳会談後のこれらの決定であったとしても、安倍晋三は中国に対しても同じだが、韓国に対しても特に歴史認識に関わる諸問題で自らの歴史認識を省みて事は簡単には解決できないことを感覚的にも判断していなければならなかったはずだ。

 判断できなければ、相手国の歴史認識に対してのどのような配慮も生まれない。自身の歴史認識を押し通せば全てが片付く問題なら構わないが、決してそうではないからだ。

 当然、日中韓3カ国がそういった関係性に現在のところある以上、首脳会談をどう開こうと、共同宣言で何を言おうと、それらで見せることになる友好関係は表面上の演出として装う部分が少なくないことを認識して、それなりの言葉を選ばなければならないはずだが、李克強中国首相とパク・クネ韓国大統領が共に控えている日中韓首脳共同記者会見の場で「日韓中の3カ国による協力プロセスを正常化させることができた」と、さも関係正常化を完了させることができたかのように言うことができた。

 これを以て如何に安倍晋三なる政治家が独りよがりであるか、その独善性を指摘しないわけにはいかない。


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