「朝日」WG議事要旨改竄報道への八田達夫の正当化のインチキは安倍晋三の加計学園への政治的便宜が始まり

2017-08-08 12:23:01 | 政治

 昨日のブログに書いたが、8月6日付「朝日デジタル」が2015年6月開催の政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG・座長八田達夫)で獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、加計学園幹部が出席していたにも関わらず、名前も発言も議事録に記載されていない、無料記事だけでは全体の趣旨は分からないが、多分、改竄による意思決定プロセスの不透明化、あるいはその隠蔽化を批判しているのだろう、そのような記事を配信した。   

 この配信にWG座長の八田達夫(大阪大学名誉教授)がその日のうちに早速反応して、議事録に載せていないことを正当づける“事実関係”なるものを国家戦略特区サイトにPDF記事で説明している。文飾は当方。

 「国家戦略特区WG(平成27年6月5日)の議事要旨について」(国家戦略特区WG座長 八田達夫 2017年8月6日) 

8月6日付朝日新聞で、「特区会議に加計幹部 議事要旨に出席・発言の記載なし」との記事が掲載されていますが、事実関係は以下のとおりです。

1、国家戦略特区WGで自治体等から提案を受けるヒアリングを行う際、提案者の要望により「非公開」と扱うことは、通常の取り扱いとして行っています。

すべて公開を前提とすれば、提案者が十分に情報を示せなくなり、国家戦略特区における提案制度の趣旨にかなわなくなることがあるためです。

平成27年6月5日の特区WGは、提案主体の愛媛県・今治市から、「議会対策、反対派・競合相手との関係上、非公開の希望」があり、非公開の前提で議事進行しました。

しかし、その後、今治市が国家戦略特区に指定され、提案が実現したことから、議論経過をできる限りオープンにすべきと私が考え、提案主体とも再度協議し、本年3月6日に議事要旨を公開しました。その際、当初は非公開を前提としていた経緯も踏まえ、公開する内容を調整しました。

2、6月5日のヒアリングでは、今治市が、独自の判断で、説明補助のために加計学園関係者(3名)を同席させていました。特区WGの提案ヒアリングでは、通常、こうした説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはありません。

6月5日のヒアリングでは、非公開との前提で、提案者以外の者(加計学園関係者)の非公式な補足発言も認めていましたが、議事要旨の公開に際しては、通常どおり、提案者以外の発言は掲載しませんでした。

なお、提案者から、説明補助者の参加・発言について議事要旨に記載してほしい等の特段の要望があった場合は、議事要旨に記載している場合がありますが、今回はこうしたケースにあたりません。

3、以上のとおり、特区WGの議事要旨の公開については、国家戦略特区の制度趣旨にかなうよう運営しているところであり、今回のケースは通常の取扱いどおり行ったものです。

問合せ先 内閣府地方創生推進事務局 TEL 03-5510-2151

 要するに意思決定プロセスは自分たちの思惑次第で如何ようにも操作できるということになる。

 〈平成27年6月5日の特区WGは、提案主体の愛媛県・今治市から、「議会対策、反対派・競合相手との関係上、非公開の希望」があり、非公開の前提で議事進行しました。〉と書いているが、「議会対策、反対派・競合相手との関係上、非公開の希望」は諮問会議委員側についても言うことができる。

 〈6月5日のヒアリングでは、今治市が、独自の判断で、説明補助のために加計学園関係者(3名)を同席させていました。特区WGの提案ヒアリングでは、通常、こうした説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはありません。〉

 いずれにしてもWGに3名の加計学園関係者が出席していたこと、加計学園関係者を「説明補助者」と説明している以上、公式な発言と認めなくても、何らかの発言があったこと、さらに3名を出席者として議事録に載せなかったこと、その発言も議事録に載せなかったことを認めたことになる。

 「朝日デジタル」の無料記事内では加計学園側と政府側委員の遣り取りについて短く触れている。加計学園新学部設置準備室長で加計学園系列千葉科学大教授の吉川泰弘が既存の大学の獣医学教育では、獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べ、政府側の委員からの教員確保の見通しなどの質問に答えていたと書いている。

 非公開のWGで議論されたことで議事録に記載されていない発言はそのときの出席者しか知り得ないことで、外部の人間である朝日新聞は知り得ることはできない。いずれかの出席者か、出席者から聞いたという形のその関係者からのリークがなければ、知り得ることはできないはずだ。

 要するに直接的にか、間接的にか知り得た事実がリークという形で表に出たと見るべきで、百歩譲って議事録に載せない事実があることに正当性を与えるとしても、「朝日デジタル」が伝えている、いわゆるリークされた加計学園関係者と政府側委員の遣り取りについても、内閣府特区担当の山本幸三と共に民間有識者議員として諮問会議の議論をリードしてきた八田達夫は認めたことになる。

 さらに加計学園の立場を今治市が独自の判断で同席させた「説明補助者」に位置づけていようといなかろうと、両者の関係をも八田達夫は認めたことになる。

 だが、今治市と加計学園の関係は単なる一地方自治体と一学校法人との関係ではない。今治市と愛媛県は2007年から2014年にかけて計15回も構造改革特区を使った獣医師養成系大学の設置を目的に獣医師の定員増規制の地域解除を提案している。

 2008年6月には内閣府に対して「構造改革特区提案申請説明資料」を提出して、「別紙」で事業主体を学校法人加計学園とする獣医師養成系大学設置を願い出ている。     

 2015年12月15日の「第18回国家戦略特別区域諮問会議」で愛媛県今治市が広島県と共に国家戦略特区の第3次指定を受けると、国家戦略特区を方法とした獣医学部の新設を正式に目指している。

 今治市と加計学園は長年、このような密接な関係にあった。八田達夫が2015年6月のWGに於ける加計学園関係者を今治市に対する単なる「説明補助者」に位置づけようとも、今治市から見た加計学園は獣医学部の事業主体としての立場から、あるいはそのことを想定して詳しい説明をさせるために同道したはずだ。

 もし八田達夫が今治市と加計学園の過去からの関係を知識としていなくても、WGに出席した際、加計学園について今治市側から紹介があるだろうし、WGの委員側からも質問することがあったはずで、実際にはもっと前に両者の関係を認識していたかもしれないが、少なくともその時点で加計学園が今治市が計画している獣医学部の事業主体、あるいはそれを想定している関係にあると認識したはずだ。

 つまり最低限、2015年6月5日を含めて、それ以降は国家戦略特区でもWGでも、事業主体が加計学園である可能性を暗黙の前提として加計学園の名前も、事業主体がどこであるかも言葉には出さずに今治市への獣医学部新設という文脈でのみ議論していたことになる。

 実際には言葉に出していたが、議事録の作成の際に「公開する内容を調整」したのかもしれない。

 事業主体がどこであるかも頭に置かずに今治市への獣医学部新設を議論したということの余りの不自然さは少しも変わらない。

 官房長官の菅義偉は議事録は全て公開するわけではないとする八田達夫の主張は通用させることができると判断したものの、今治市が加計学園関係者を出席させたことで今治市が計画している獣医学部新設の事業主体が加計学園だと委員たちが認識していたと解釈された場合、安倍晋三の加計学園が事業主体と知ったのは2017年1月20日だとする発言との矛盾が生じると恐れたのだろう、八田達夫のPDF記事で議事録の正当性を述べたことに対して8月7日(2017年)の記者会見で次のように先手を打っている。

 菅義偉「獣医学部の制度検討は、特定の地域や事業所を念頭に置いていないが、加計学園が参加したのは提案者である今治市が説明の補助のために連れてきたと報告を受けている」

 記者「『すべてを公開している』という安倍総理大臣や菅官房長官の国会答弁の前提が崩れるのではないか」

 菅義偉「崩れるとは思っていない」(NHK NEWS WEB/2017年8月7日 14時41分)
    
 「獣医学部の制度検討は、特定の地域や事業所を念頭に置いていない」との発言には今治市が新設を計画している獣医学部の申請と加計学園の関係を断ち切ろうとする意図がここにはある。

 だが、諮問会議での獣医学教育の空白地域である四国に国際水準の大学獣医学部の新設の必要性の議論も、同じく諮問会議で今治市への獣医学部新設で議論をしてきたことも、「特定の地域」を念頭に置いた取扱いであるはずであり、2016年11月9日の「第25回国家戦略特区諮問会議」で「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とするとした地域条件の改正を2017年1月4日の文科省の告示で決めたことも、「特定の地域」を念頭に置いた議論であったはずだ。

 今治市への獣医学部新設の議論に関しては確かに議事録では「事業所を念頭に置いていない」体裁を取っているが、このこと自体が不自然なのだが、同じく国家戦略特区指定を受けた京都府は獣医学部新設を希望、その事業主体を京都産業大学と決めて、2016年10月17日開催のWGに向けて、同日付けの「京都産業大学獣医学部設置構想について」なる資料を提出しているのは明らかに前以って「事業所を念頭に置い」た措置である。    

 こういった手続きこそが常識的な進め方であるはずだ。

 京都府が様々に協力することはあっても、京都府が構想する獣医学部設置ではなくて、題名どおりに京都産業大学が事業主体として構想する獣医学部設置となっているが、今治市の場合は事業主体を問題とした議論が見当たらないために、異様なことだが、まるで今治市が構想した獣医学部に見える。

 菅義偉が言っていることは八田達夫のWGでの議論は行われたとおりに議事要旨として公開するわけではないとしていることの正当化のためと、今治市への新設で議論を進めている獣医学部の事業主体が加計学園と決まっていたわけではないとすることの正当化のための主張であって、正当化すること自体に誤魔化しがあるから、はっきりと言うと、インチキがあることから、「獣医学部の制度検討は、特定の地域や事業所を念頭に置いていない」といった事実と離れた発言となって現れたのだろう。

 このインチキは八田達夫の朝日新聞の報道に対する正当化自体にインチキがあり、その相互反映としての菅義偉のインチキであるはずだ。

 もし前者に何もインチキがなければ、菅義偉もインチキを働く必要は生じない。同じ仲間として同調作用を起こさざるを得なかった。

 そしてこれらのインチキは加計学園が獣医学部を新設できるように安倍晋三が政治的便宜を図ったインチキから始まっていて、最初のインチキが次のインチキを強いる止むことのない反復性に則っているはずだ。


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